「もう治りませんといって見放された『がん難民』が日本列島をさまよっている。救える命がいっぱいあるのに、次々と失われている」
昨年5月22日の参院本会議。自らがん患者であることを告白して、がん対策の重要性を訴えた。ハンカチで涙を抑える姿に議場は静まりかえった。国のがん対策が大きく動き出した瞬間でもあった。その翌月、がん対策基本法が成立した。
勉強熱心で学者肌。抗がん剤治療を続けながら、患者や家族が参加するがん対策情報センターの運営評議会や基本計画を審議するがん対策推進協議会に足しげく通った。マスクをかけ、傍聴席で必死にメモを取る姿には鬼気迫るものがあった。
「これでは、根治が不可能な患者が切り捨てられてしまう」こう言って、役人に厳しい注文を付ける姿もよく見かけた。「命の限界があるかもしれないけどね、せっかく法律ができたんだから一生懸命やりたい」
最後に取材したのは半年前。東京都千代田区の議員宿舎の応接室だった。「国民の3人に1人はがんで死ぬ。国民が声を上げなければ日本の医療全体が良くならないんです」。せきがひどくなり、妻のゆきさん(56)が止めに入るまで熱心に記者に訴えた。一人でも多くの人に地域格差の大きい日本の医療の現状を分かってほしかったにちがいない。
しかし、病魔は山本さんの体力を限界まで奪い、今年5月末には主治医に「もう抗がん剤治療ができない」と宣告された。一度は出馬辞退を決めたが、ゆきさんと悩み抜いて出した結論は、「がんイコール、リタイアではない」。
今夏の参院選は、治療で身動きが取れない山本さんに代わり、山本さんが学生時代から続けてきた交通遺児支援活動や自殺対策でかかわった遺児らが、ボランティアとして支えた。
街頭演説は4回しかできなかったが、患者としての実体験から、国の医療費抑制施策のため新薬や新療法が使われない現状の改善などを訴えた。
「声を上げられない人に代わって、やれる仕事をしたい」比例代表候補として最後の議席に滑り込み、酸素吸入しながら臨んだ会見でも、同じ言葉を口にした。常に背中に、弱い立場の人の存在を感じながら行動するまれな政治家だった。
(死去の山本孝史氏 がん告白、医療充実に尽力)
山本さんは、2006年5月22日の参議院本会議で、自らががんに侵されていることを告白、がん対策基本法案の早期成立を訴えました。がん対策基本法とは、日本人の死因で最も多い、がん対策のための国、地方公共団体等の責務を明確にし、基本的施策、対策の推進に関する計画と厚生労働省にがん対策推進協議会を置くことを定めた法律です。がんの予防及び早期発見の推進やがん医療の充実など、がん対策を国家的なプロジェクトであると明確化している点で、非常に重要な法律であると思われます。
胸腺とは、縦隔(胸郭の左右肺に囲まれた胸部脊柱上の器官の集まり)と呼ばれる部位にあり、実際には身体のほぼ中央で胸骨の後ろ、心臓の前面にある小さな臓器です。胎児から幼児にかけては身体の免疫をつかさどる重要な働きをもっていますが、成人になるとその機能を終えて退化(脂肪化)します。機能としては、リンパ球と呼ばれる白血球をつくっています。
胸腺癌とは、以下のようなものを指します。
昨年5月22日の参院本会議。自らがん患者であることを告白して、がん対策の重要性を訴えた。ハンカチで涙を抑える姿に議場は静まりかえった。国のがん対策が大きく動き出した瞬間でもあった。その翌月、がん対策基本法が成立した。
勉強熱心で学者肌。抗がん剤治療を続けながら、患者や家族が参加するがん対策情報センターの運営評議会や基本計画を審議するがん対策推進協議会に足しげく通った。マスクをかけ、傍聴席で必死にメモを取る姿には鬼気迫るものがあった。
「これでは、根治が不可能な患者が切り捨てられてしまう」こう言って、役人に厳しい注文を付ける姿もよく見かけた。「命の限界があるかもしれないけどね、せっかく法律ができたんだから一生懸命やりたい」
最後に取材したのは半年前。東京都千代田区の議員宿舎の応接室だった。「国民の3人に1人はがんで死ぬ。国民が声を上げなければ日本の医療全体が良くならないんです」。せきがひどくなり、妻のゆきさん(56)が止めに入るまで熱心に記者に訴えた。一人でも多くの人に地域格差の大きい日本の医療の現状を分かってほしかったにちがいない。
しかし、病魔は山本さんの体力を限界まで奪い、今年5月末には主治医に「もう抗がん剤治療ができない」と宣告された。一度は出馬辞退を決めたが、ゆきさんと悩み抜いて出した結論は、「がんイコール、リタイアではない」。
今夏の参院選は、治療で身動きが取れない山本さんに代わり、山本さんが学生時代から続けてきた交通遺児支援活動や自殺対策でかかわった遺児らが、ボランティアとして支えた。
街頭演説は4回しかできなかったが、患者としての実体験から、国の医療費抑制施策のため新薬や新療法が使われない現状の改善などを訴えた。
「声を上げられない人に代わって、やれる仕事をしたい」比例代表候補として最後の議席に滑り込み、酸素吸入しながら臨んだ会見でも、同じ言葉を口にした。常に背中に、弱い立場の人の存在を感じながら行動するまれな政治家だった。
(死去の山本孝史氏 がん告白、医療充実に尽力)
山本さんは、2006年5月22日の参議院本会議で、自らががんに侵されていることを告白、がん対策基本法案の早期成立を訴えました。がん対策基本法とは、日本人の死因で最も多い、がん対策のための国、地方公共団体等の責務を明確にし、基本的施策、対策の推進に関する計画と厚生労働省にがん対策推進協議会を置くことを定めた法律です。がんの予防及び早期発見の推進やがん医療の充実など、がん対策を国家的なプロジェクトであると明確化している点で、非常に重要な法律であると思われます。
胸腺とは、縦隔(胸郭の左右肺に囲まれた胸部脊柱上の器官の集まり)と呼ばれる部位にあり、実際には身体のほぼ中央で胸骨の後ろ、心臓の前面にある小さな臓器です。胎児から幼児にかけては身体の免疫をつかさどる重要な働きをもっていますが、成人になるとその機能を終えて退化(脂肪化)します。機能としては、リンパ球と呼ばれる白血球をつくっています。
胸腺癌とは、以下のようなものを指します。
腫瘍細胞は、胸腺の正常細胞と異なり、急速に増殖してしまします。そのため、癌が発見されるときには通常、体の他の部位にまで移転していまっていることが多いと言われています。胸腺癌の場合、通常診断時には体の他の部位にまで転移しています。また、再発することも多いといわれています。
無症状のこともあり、発見が遅れることもあります。症状としては、持続する咳や胸痛、癌が大きくなった場合、呼吸困難などがあります。診断としては、胸部CT、MRIや
針生検または細針吸引生検によって病状を調べるために病理診断が行われます。これにより、腫瘍の部分的除去または全面除去などを決定します。
治療法としては、手術療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法(コルチコステロイド投与)などが行われます。出来る限り手術療法によって腫瘍を取り除くことが望ましいと思われますが、できない場合は放射線治療、化学療法(特に遠隔転移を起こしている場合)などを考慮します。
国会議員でありながら、自身の癌を告白し、さらに闘病中でありながら医療の充実を訴えていたということは、想像できないほどの苦しみであったと思われます。山本さんが亡くなった後も、彼の意志を継ぎ、医療分野充実を是非、今後も続けてもらいたいと思います。
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有名人の症例集
石野見幸さん「テレビを通して伝えたかったもの」
無症状のこともあり、発見が遅れることもあります。症状としては、持続する咳や胸痛、癌が大きくなった場合、呼吸困難などがあります。診断としては、胸部CT、MRIや
針生検または細針吸引生検によって病状を調べるために病理診断が行われます。これにより、腫瘍の部分的除去または全面除去などを決定します。
治療法としては、手術療法、化学療法、放射線療法、ホルモン療法(コルチコステロイド投与)などが行われます。出来る限り手術療法によって腫瘍を取り除くことが望ましいと思われますが、できない場合は放射線治療、化学療法(特に遠隔転移を起こしている場合)などを考慮します。
国会議員でありながら、自身の癌を告白し、さらに闘病中でありながら医療の充実を訴えていたということは、想像できないほどの苦しみであったと思われます。山本さんが亡くなった後も、彼の意志を継ぎ、医療分野充実を是非、今後も続けてもらいたいと思います。
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