飛び降りなどの異常行動の報告が相次いだインフルエンザ治療薬「タミフル」について、厚生労働省の疫学研究班(分担研究者・広田良夫大阪市立大教授)は18歳未満の1万人を対象にした調査の結果、「タミフル使用者のほうが非服用者に比べて異常行動は少ない」とする調査結果をまとめた。調査結果は、25日開かれた薬事・食品衛生審議会安全対策調査会に報告された。調査会は、他の調査や実験結果がそろってから最終結論を出すが、「服用の有無にかかわらず異常行動への注意」を呼びかける方針。
厚労省は「原則禁止」としている10代への処方に関しては「調査会の最終的な結論がでるまで現在の措置は続ける」(安全対策課)としている。調査は昨冬に全国約700の医療機関でインフルエンザと診断された18歳未満の1万316人分が対象。過去に行われた調査では最も大規模で、罹患者や医師らから症状や異常行動の有無などのデータを集めた。
調査結果によると、7870人がタミフルを服用。服用後に幻覚、幻聴などの異常行動がみられたのは700人で、そのうち、飛び降りなどの事故につながる危険行動が出たのは22人だった。
一方、タミフル投与前に異常行動が出た人は285人、危険行動は9人。タミフルを全く投与しない患者にも異常行動が546人、危険行動が16人で報告された。使用の有無で異常行動のリスクをみると、「タミフル投与者のほうが低い」という結果が出た。また、危険行動の例に絞って分析すると、使用の有無で差はなかった。
(タミフル異常行動「服用者の方が少ない」)
インフルエンザ治療薬タミフルと異常行動の関係を科学的に検証してきた厚生労働省の調査会は25日、因果関係の有無の明確な結論を出せず、先送りしています。調査会座長の松本和則・国際医療福祉大教授は、現状維持の結論について「現時点ではタミフルと因果関係を示す結果は得られていない。解析が終わっていない調査があり、使用解禁の根拠がない」としており、調査の困難さが伺えます。
タミフルは、ノイラミニダーゼ阻害薬の一種です。ノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルスの増殖過程において、感染細胞からのインフルエンザウイルスの脱殻に必要な酵素)を阻害することにより、インフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制します。ノイラミニダーゼ阻害薬は、吸入剤としてリレンザが他にありましたが、シェアは3%にまで落ち込み、タミフルがシェアのほとんどを占めている現状になっています。
タミフルと異常行動の関係性については、未だに決着がついていません。厚生労働省の作業部会によって「異常行動と関連づけられるデータは今のところない」とする中間結果が発表されて以降、さまざまな意見があります(現在も結果は先送りしていますが)。
飛び降りなど重度の異常行動を起こしたインフルエンザ患者は、2006年〜2007年にかけての流行シーズンに137人いたが、治療薬タミフルを服用していたのは60%で、38%は服用していなかったと調査結果は発表されています。
このことを受けて、作業部会メンバーの内山真日本大教授は記者会見で「インフルエンザで異常行動が起こりうることが分かった。薬が直接何かを起こしているという可能性は小さいことを示唆するデータ」と述べています。
さらに、タミフルの10代への処方中止をした後も異常行動は減ったとは言えない、と分析しています。この結果を考えると、インフルエンザ脳炎・脳症のリスクの方が考えられるのではないか、と推定しているようです。
一方、タミフルとの関連性を支持する意見の一つとしては、未熟な子供は血液脳関門におけるP糖蛋白の発現が乏しく、タミフルが通過してしまうのではないか、という説もあります(実験的に証明したわけではないようですが)。
また、最近のデータから以下のようなことが言えると思われます。
厚労省は「原則禁止」としている10代への処方に関しては「調査会の最終的な結論がでるまで現在の措置は続ける」(安全対策課)としている。調査は昨冬に全国約700の医療機関でインフルエンザと診断された18歳未満の1万316人分が対象。過去に行われた調査では最も大規模で、罹患者や医師らから症状や異常行動の有無などのデータを集めた。
調査結果によると、7870人がタミフルを服用。服用後に幻覚、幻聴などの異常行動がみられたのは700人で、そのうち、飛び降りなどの事故につながる危険行動が出たのは22人だった。
一方、タミフル投与前に異常行動が出た人は285人、危険行動は9人。タミフルを全く投与しない患者にも異常行動が546人、危険行動が16人で報告された。使用の有無で異常行動のリスクをみると、「タミフル投与者のほうが低い」という結果が出た。また、危険行動の例に絞って分析すると、使用の有無で差はなかった。
(タミフル異常行動「服用者の方が少ない」)
インフルエンザ治療薬タミフルと異常行動の関係を科学的に検証してきた厚生労働省の調査会は25日、因果関係の有無の明確な結論を出せず、先送りしています。調査会座長の松本和則・国際医療福祉大教授は、現状維持の結論について「現時点ではタミフルと因果関係を示す結果は得られていない。解析が終わっていない調査があり、使用解禁の根拠がない」としており、調査の困難さが伺えます。
タミフルは、ノイラミニダーゼ阻害薬の一種です。ノイラミニダーゼ(インフルエンザウイルスの増殖過程において、感染細胞からのインフルエンザウイルスの脱殻に必要な酵素)を阻害することにより、インフルエンザウイルスが感染細胞表面から遊離することを阻害し、他の細胞への感染・増殖を抑制します。ノイラミニダーゼ阻害薬は、吸入剤としてリレンザが他にありましたが、シェアは3%にまで落ち込み、タミフルがシェアのほとんどを占めている現状になっています。
タミフルと異常行動の関係性については、未だに決着がついていません。厚生労働省の作業部会によって「異常行動と関連づけられるデータは今のところない」とする中間結果が発表されて以降、さまざまな意見があります(現在も結果は先送りしていますが)。
飛び降りなど重度の異常行動を起こしたインフルエンザ患者は、2006年〜2007年にかけての流行シーズンに137人いたが、治療薬タミフルを服用していたのは60%で、38%は服用していなかったと調査結果は発表されています。
このことを受けて、作業部会メンバーの内山真日本大教授は記者会見で「インフルエンザで異常行動が起こりうることが分かった。薬が直接何かを起こしているという可能性は小さいことを示唆するデータ」と述べています。
さらに、タミフルの10代への処方中止をした後も異常行動は減ったとは言えない、と分析しています。この結果を考えると、インフルエンザ脳炎・脳症のリスクの方が考えられるのではないか、と推定しているようです。
一方、タミフルとの関連性を支持する意見の一つとしては、未熟な子供は血液脳関門におけるP糖蛋白の発現が乏しく、タミフルが通過してしまうのではないか、という説もあります(実験的に証明したわけではないようですが)。
また、最近のデータから以下のようなことが言えると思われます。
17歳以下のインフルエンザ患者での異常行動の発生率は、軽症例を含め約14%であり、飛び降りなど危険性の高い異常行動は0.5%となります。10〜17歳で見るとタミフルを服用しない患者の異常行動発生率は11%と、服用した群の6%に比べて高いという結果になっています。
ただ、この数字は統計的な有意差はないと考えられ、数字からは「飲んでも飲まなくても異常行動の発生に差はない」ということになります。少なくとも、「タミフルを飲まなければ異常行動は起こらない」という認識は誤りとなります。
また、タミフルの効果としては、海外臨床試験においてインフルエンザ発症2日以内の投与によって、発熱期間を24時間、罹病期間を26時間短縮した(服用しない場合、発熱は通常3〜7日間続く。服用した場合には2〜6日間継続へ、約1日間の改善)とのことなので、実はそんなに速効作用のあるものではありません。
ですが、10歳未満の患者はインフルエンザで肺炎を起こす可能性もあり、必要な患者には処方することも大事であると考えられます。
今後、インフルエンザ患者の中でお子さんの場合、親御さんに「処方しますか?」と訊くことになり、服用するかどうかは親御さんの判断になるのでしょうね。医療現場では、さらに混乱することが予想されますが、上記のデータからはどちらにすべきか、とは言えないようです。
【関連記事】
インフルエンザに関するまとめ
10歳未満にも多いインフルエンザ患者の異常行動
ただ、この数字は統計的な有意差はないと考えられ、数字からは「飲んでも飲まなくても異常行動の発生に差はない」ということになります。少なくとも、「タミフルを飲まなければ異常行動は起こらない」という認識は誤りとなります。
また、タミフルの効果としては、海外臨床試験においてインフルエンザ発症2日以内の投与によって、発熱期間を24時間、罹病期間を26時間短縮した(服用しない場合、発熱は通常3〜7日間続く。服用した場合には2〜6日間継続へ、約1日間の改善)とのことなので、実はそんなに速効作用のあるものではありません。
ですが、10歳未満の患者はインフルエンザで肺炎を起こす可能性もあり、必要な患者には処方することも大事であると考えられます。
今後、インフルエンザ患者の中でお子さんの場合、親御さんに「処方しますか?」と訊くことになり、服用するかどうかは親御さんの判断になるのでしょうね。医療現場では、さらに混乱することが予想されますが、上記のデータからはどちらにすべきか、とは言えないようです。
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