中高年で体調を崩す人は男の方が多く、離職がその引き金になった可能性があることが26日、厚生労働省の「中高年縦断調査」で分かった。05年10月末現在で50〜59歳の男女が対象で、第1回(05年11月)と第2回(昨年11月)の両調査に応じた3万1403人の回答を分析した。

中高年に多い脳卒中、がん、高血圧、糖尿病、高脂血症、心臓病の6疾病について、第1回調査時は罹患していなかったが第2回で罹患していた人の割合を比較したところ、がんを除く5疾病で男の方が罹患率が高く、最も差が大きいのは高血圧(男6.9%、女3.8%)だった。

第1回調査時は仕事をしていたが、第2回では離職していたのは男3.6%、女5.0%で、この間に健康状態が「良い」から「悪い」に変化したのは男19.4%、女13.9%で、5.5ポイントの差がついた。

厚労省は「健康がすぐれずに離職した人もいるが、離職が体調悪化につながった可能性があり、その傾向は男性に強く表れているようだ」と分析している。
(男性は離職で体調崩す割合高い 厚労省)


第1回(2005年11月)と第2回(昨年11月)の2点での調査であり、なおかつ医療機関が集計した結果ではないので(中高年者の自由回答)、たとえば以下のような場合があるかも知れません。

たとえば、第1回目の時点で既に糖尿病や高脂血症の傾向があったにもかかわらず、治療していなかったというだけで、「離職後に病気になった」と数字上は集計されてしまう可能性もあります。また、離職後→病気という流れではなく、厚労省も認識していますが病気があるために仕事を辞めざるを得ない、という場合もあるかも知れません。

しかも、「男女での差がある(健康状態が「良い」から「悪い」に変化したのは男19.4%、女13.9%で、5.5%の差がついた)」→男性にとって離職は体調に変化をきたす、といった論理で結論づけているようですが、これはおかしいのではないでしょうか。男性は、この年代で体調変化をきたしやすく、女性は体調変化をきたしにくい年代である、という単なる生物学的な問題かも知れません。これを単に離職が要因であると結論づけるのは乱暴に過ぎると考えられます(それに、男女差もたった5.5%しかありませんし)。

ですが、男性にとって、仕事というのは張り合いであったり、日常生活において大きな部分を占めるものというのは一般的にイメージとして捉えやすいのではないでしょうか(もちろん、最近は女性の社会進出に伴い、性差は少なくなっているのかも知れませんが)。仕事が無くなってしまって、多大な変化によるストレスを感じてしまう、ということも想像が付きやすいと思います。

このことに関連して、鬱病を例に取ると、以下のようなことが言えると思われます。
昔は「男性の"職場での異動"、女性の"引っ越し"」が、うつ病の原因となるストレスとしてよく言われていたそうです。男性はやはり仕事場での変化や勝手の違う部署での仕事に大きなストレスを感じるそうです。一方、女性は引っ越しによって新たなコミュニティに入っていき、人間関係を構築し直していくのにストレスを感じやすいということなのでしょう。よって、春先の時期には異動や引っ越しがあり、ストレスを感じる人が多いのではないか、と考えられます。

かなり古いものですが、1967年にアメリカの心理学者、ラー氏とホームズ氏によって発表された「ストレスマグニチュード法」というものがあります。これは配偶者の死を100として数値化し、その他ストレスを感じる度合いを表にしたものです。マグニチュードとは、地震の規模を数値化したものですが、これを「人間はいつ、どういう時にどのくらいのストレスを感じるのか」という「ストレスの規模」に応用した、と考えると分かりやすいと思われます。

これによると、
01 配偶者の死     100
02 離婚する      73
03 別居する      65
04 刑務所への収容   63
05 近親者の死     63
06 本人の病気     53
07 結婚する      50
08 解雇される     47
09 離婚調停中     45
10 退職、引退     45
11 家族の病気     44
12 妊娠する      40

…といった具合になっています。やはり家族間の問題や仕事上での問題が大きなことが分かります。もちろん、これがどれほどの根拠を持っているのか、現代に照らし合わせるとどうかなどといったことはありますが、こうした大きなイベントがあると、やはりストレスを感じると思われます。

「退職後は、どうしようか」といったことは、しっかりと話し合ったり、身の振り方を考えることは、意外と体調やメンタルヘルスといった観点からも、意外と大事なことかもしれませんね。

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