がん検診のシリーズの1回として子宮がん検診(10月26日)を取り上げたところ、「子宮がん予防にワクチンができたと聞きましたが、どのようなものですか?」という質問が多く寄せられた。

子宮がんには、子宮の入り口の部分(頸(けい)部)にできる子宮頸がんと、奥の袋状の部分(体(たい)部)にできる子宮体がんがある。ワクチンは、このうちの子宮頸がんの発病を防ぐ働きがある。昨年から今年にかけ、米国、欧州連合(EU)、オーストラリア、韓国などで相次いで承認された。日本では今年に入り、グラクソ・スミスクライン社と万有製薬がそれぞれ承認申請を出している。

なぜ、がんが予防接種で防げるのかというと、子宮頸がんの95%以上は、「ヒトパピロマウイルス」というウイルスの感染で起きるからだ。

性交渉によって感染するが、エイズウイルスなどとは違い、ごくありふれたウイルスなので、成人女性の半数以上は一生に一度は感染すると言われている。ただ、いったん感染してもほとんどの場合、ウイルスは自然に消えてしまう。

ところが、ウイルスが消えずに持続感染し、何年もかけてがんになることがある。ワクチンは、このウイルスの感染を防ぐ。海外では性交渉が始まる前の若い女性に広く予防接種を打つことが検討されているが、横浜市立大産婦人科准教授の宮城悦子さんは「打つ時点で感染していなければ、何歳でもワクチンの予防効果はある」と説明する。

ただし、ヒトパピロマウイルスにはいくつもの型があり、ワクチンはがんを引き起こすすべての型に対して効果を発揮するわけではない。宮城さんによると、海外のデータではがんの予防効果は7〜8割とされている。最初の臨床試験が始まって5〜6年しか経過しておらず、長期的にはいつまで効果が持続するかも未知数だ。このため、米国では、予防接種を受けても定期的に子宮頸がん検診を受けることが推奨されている。

ヒトパピロマウイルスが持続感染してからがんになるまでは何年もかかる。しかも、将来がんになる危険が高い「前がん病変」も検診で発見可能だ。子宮頸がんは初期(0期)で見つかれば、がんとその周囲を切り取る簡単な治療で、子宮も温存でき、がんもほぼ100%治る。

このため、欧米の多くの国では7〜8割もの女性が子宮頸がんの検診を受けているが、日本の受診率は2〜3割。先進国の中では極端に低い。宮城さんは「定期的に検診を受けていればほとんどの子宮頸がんは早期発見できる。まずは検診を受けて」と話している。
(子宮頸がん…予防はワクチン・定期検診)


ZARDの坂井泉水さんが子宮頸癌で闘病中に亡くなったのが記憶に新しいかと思われます。年齢別にみた子宮頸部がんの罹患率は、20歳代後半から40歳前後まで増加した後、横ばいになり、70歳代後半以降に再び増加します。最近では、罹患率や死亡率がともに若年層で増加傾向にあります。

子宮頸癌の原因としては、ヒト・パピローマ・ウイルス(human papilloma virus:HPV)の感染が、子宮頸癌、特に扁平上皮癌のリスク要因とされています。HPVが持続感染(他のタイプのHPVは、一時的に感染しても治癒することが多い)することで、子宮頸癌が発生すると考えられています。子宮頸癌患者の90%以上から、HPVが検出され、ハイリスク・タイプ(16型や18型など)で浸潤がんへの進展がみられやすいとされています。

実はHPVは、100種類以上の型があります。子宮頸がんに関連するのは、15の型に絞られます。そのうち16、18、33、52、58型が高危険型に分類され、欧米で7割の子宮頸がんが16、18型に起因するそうです。日本人には比較的52、58型が多いですが、16、18型がやはり全体の6割を占めます。

この16、18型の感染を防止するのが、米国の製薬会社「メルク」の子宮頸がんワクチン「ガーダシル」と、英国のグラクソ・スミスクライン(GSC)の「サーバリックス」です。

「ガーダシル」は、16、18型のほか、尖圭コンジロームの原因となる型にも効果があり、昨年以降、米、メキシコ、豪州など70以上の国と地域で承認されています。一方、「サーバリックス」は、アジュバントと呼ばれる免疫増強剤が配合され、16、18型のほか、がんの原因となる31と45型にも効果が認められました。2007年5月、豪州で承認を受け、欧州と米国でも承認を待っています(ただ、アメリカではサーバリックス(Cervarix)は認可が遅れています。FDAから、質問事項が追加されたと明らかにされました。2008年1月中には、承認される見通しだそうです)。
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日本国内では、万有製薬が「ガーダシル」の臨床試験を2006年7月に開始し、9歳から26歳の未感染の女性1,100人に、3回の筋肉注射でワクチンを投与し、2年間経過を見ている状態です。また、GSC日本法人は、2006年4月から、20歳から26歳の女性約1,000人の臨床試験を開始しています。

子宮頸癌のワクチンの注意点としては、以下のようなものがあります。
上記にも書かれていますが、ワクチンは子宮頸癌等の定期健診を省くものではなく、Gardasilなら6, 11, 16, 18型、Cervarix なら16, 18型以外が原因になることがあります。また、ワクチン接種時に既感染のウィルスによる病変の予防にはならなりません。接種後も、定期健診は重要です。特に、子宮頸癌は細胞診によって早期発見が可能なので、定期的な検査が大事であるとされています。

乳癌でも、乳房のエックス線(マンモグラフィ)などを使った検診で癌が見つかったのは2割に過ぎず、4人に3人は、検診を受けずに自分でしこりなどの異常に初めて気づいて病院を受診したことが、日本乳癌学会の大規模調査でわかっています。

これは、多くの女性が乳癌に最初に気づくのは、ほとんどが自分で「しこり」に気づいたため、との結果のようです。検診にて発見されるのは、たった2割でしかないと判明しています。やはり、がん検診についての啓蒙を、より広げて行く必要があると思われます。

子宮頸癌においては、細胞診(擦過細胞診)とHPV検査の併用による検診で、ほぼ確実に発見することが可能であるといわれています。ワクチン接種をしなくても、検診によって早期発見・早期治療をすることが重要であると思われます。

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