10代の若者が精神科に掛かる数は増えている。「精神科の敷居が低くなってきている」と愛知淑徳大の古井景教授(精神医学)は説明する。

古井教授は、家族や友人関係が希薄になりつつあることが背景にあると指摘する。「ストレスを吸収するサポート態勢がなくなり、精神科に丸投げされるようになった。(何らかの精神的な問題を抱えると)『ストレスで鬱だから』と精神科に掛かることがトレンドともいえる状況だ」

古井教授は「本来、精神科は脳の問題で薬を使うことが中心。鬱病の薬を出しておしまいということもありうる」と、悩みの“抜本解決”につながらない可能性も指摘している。
(増える10代の精神科通院「ストレス吸収する態勢なくなった」)


うつ病の頻度は一般人口の2〜3%といわれています。うつ病相に加えて躁病相をもつ双極性障害は0.5〜1%であり、平均発症年齢は20歳代後半〜30歳代だそうです(内科診断学)。ただ、頻度は軽症をどの程度含めるかによって異なり、2〜3%から14%と幅があります。

うつ病の最近の疫学研究によると、生涯有病率20%であり、障害の内に5人に1人はうつ病になると考えられています。日本で2002年に行われた1600人の一般人口に対する面接調査によれば、時点有病率2%、生涯有病率6.5%とされています。決して人ごとではないと思われます。

うつ病とは、気分障害の一種であり、抑うつ気分や不安・焦燥、精神活動の低下、食欲低下、不眠などを特徴とする精神疾患です。あまり生活に支障をきたさないような軽症例から、自殺企図など生命に関わるような重症例まで存在します。うつ病を反復する症例では、20年間の経過観察で自殺率が10%程度とされています。

北海道大研究チームの調査で、小学4年〜中学1年の一般児童・生徒738人に、鬱病と躁鬱病の有病率が計4.2%に上ったことが分かったそうです。医師が面接する大規模な疫学調査は国内初とのこと。

研究チームの伝田健三・北大大学院准教授は「有病率がこれほど高いとは驚きだ。これまで子供の鬱は見過ごされてきたが、自殺との関係も深く、対策を真剣に考えていく必要がある」としています。

ただ、この「うつ状態」というものには、以下のような診療における難しさがあると思われます。
「うつ状態」という言葉は、日常的に結構な頻度で用いられるのではないでしょうか。「悲しいことがあり、気分が落ち込む」といった意味合いで用いていると思われます。そういった意味では、「うつ状態」は、誰でも人生のある時期に例外なく経験する感情であるといっても過言ではないのではないでしょうか。

ただ、こうした状況にある人全員がうつ病であるということはないでしょう。つまり、この正常な抑うつの感情を、医学的治療を要する病気(うつ病)と区別することには、ある程度のうつ病の知識と臨床経験を要します。一説には、内科外来を受診する患者の20%はうつ状態であるとする報告があるほどに高頻度にみられるといいます。

こうした診断を行う上で、DSM-IVの診断基準によれば、2つの主要症状が基本となります。それは「抑うつ気分」と「興味・喜びの喪失」です。この2つの主要症状のいずれかが、うつ病を診断するために必須の症状であるとされています(実際には、9項目の内の5つを満たすことを条件としている。そのなかで、抑うつ状態、もしくは興味・喜びの喪失をどちらか一方が含まれる)。

「抑うつ気分」とは、気分の落ち込みや、何をしても晴れない嫌な気分や、空虚感・悲しさなどです。「興味・喜びの喪失」とは、以前まで楽しめていたことにも楽しみを見いだせず、感情が麻痺した状態です。

ただ、小児の場合は自覚症状が乏しく、うつ気分が正確に表現されないといったことで、見逃されてしまうこともあると思われます。不登校になったり、学校で孤立してしまうといった状況に陥ってしまうということもあるのではないでしょうか。結果、対人関係や社会生活における障害が持ち越されてしまうこともあると考えられます。

最近、上記ニュースを含めて、「うつ状態の子供が増えた」といったことが言われるように思われますが、以前から「うつ状態」にある子供たちは存在し、うつ病としての認識がなかった、というようなことも背景にあるのではないでしょうか。

近年、欧米を中心に子どものうつ病や不安障害が、一般に認識されているよりもずっと多く存在するということが明らかになってきた、ということもあり、国内でも見直される動きがあるように思われます。

今後、子供たちのメンタルケアを行う上で、学校や精神科医の連携などが必要になってくるのではないでしょうか。コンサルテーション・リエゾン精神医学など、精神疾患を合併している他科の患者についての相談を受けたり、他科での治療に際して医療者と患者間の連絡を円滑化することが行われていますが、今後はより広く精神科医の活動範囲が増えていくように思われます。

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