以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。
アメリカ・オクラホマ州ジョーンズに住むフィンレイ夫妻は結婚4年目の仲の良い夫婦。妻のジルは心臓に問題があり、過去に2回手術を受けていたが、その手術で心臓の病気は完治していると医師に言われていた。
2007年05月26日朝、二人に突然の悲劇が訪れる。ライアンが妻ジルを起こしに行くと、何か様子がおかしい。ピクリとも動かないジル…揺さぶっても反応せず、息をしていない。脈もなく、心臓も止まっていた。ライアンはすぐに911に電話をかけ、救急車が到着するまでの間、電話で指示を受けながら妻に人工呼吸と心臓マッサージを行った。
15分後、救急隊員が駆けつけた。心臓は通常一定のリズムで脈打つが、この時ジルの心臓は「心室細動」という小刻みに痙攣してしまう状態にあった。その場で電気ショックを施し、ジルは病院に運ばれたが、一刻を争う危険な状態だった。心臓は動き出したものの意識不明の昏睡状態で運ばれたジルには、脳へのダメージを防ぐため、脳低体温療法を行う必要があった。ジルの体温を33度まで冷やし、脳のダメージを防ぐ最大限のケアが施された。
24時間が経過し、ジルの体温を徐々に上げる治療に切り替えられた。過去には患者が体を温められている途中で意識を回復したという例もあったが、ジルは目覚めなかった。ジルの脳が調べられ、医師がライアンに告げたのは「意識が回復する可能性は1%から2%程度。植物状態になる可能性が高いでしょう」という最悪の言葉だった。
鼻から胃に通された栄養補給チューブと水分補給の点滴、そして人工呼吸器、この3つがジルの生命を維持していた。ライアンは、昏睡状態が続く妻をつきっきりで看病をした。06月01日、予想以上にしっかり呼吸ができているということで、ジルの人工呼吸器が外された。だが、喜びはつかの間、これ以上の回復はないだろうという言葉が医師から告げられた。このままの状態が続き、時期治療はストップされ、ゆくゆくは医療系の介護施設に移ることになる、という。そしてその4日後、もう一つの選択肢として、医師から示されたのはあまりに残酷なものだった。それは生命維持装置を外すこともできるという家族の同意書だった。ジルの場合、生命維持装置とは、栄養チューブと点滴を意味していた。
オクラホマ州では、まず病院の倫理委員会に決定が委ねられる。そして家族が同意書にサインをし、オクラホマの裁判所に届出をすれば、合法的に生命維持装置を外すことが許されていた。愛する妻を介護施設に転院させるべきか、この病院で尊厳死させるべきか。このことはジルの両親にも伝えた。ジルがどんな状態でもずっと一緒にいてあげたいと思うライアンだったが、果たしてそれがジルの望むことだったのか?ジルの両親も苦しい気持ちの中、ライアンにそう問いかけた。思い悩むライアン。回復する見込みもないのに、医療技術によって生命を維持し続ける人生を妻は望んでいるのだろうか…。ある時親戚の最期を看取った時の妻ジルの言葉を思い出した。意識もないままベッドで寝たきりの姿を見て「私はあんな風になりたくない」と…。ライアンは生命維持装置を外すことを決断、6月9日、家族が見守る中、栄養チューブと点滴が外された。5時間が過ぎた頃、ジルの体に変化が起こった。
しきりに体を動かし始めたのだ。だが、それは「ラストラリー(最後の回復)」という現象で、人間が最後の時を迎える瞬間に、体の機能を蘇らせて、動いたり、喋ったり、回復したかのように見える行動をするものだった。医師からそれを聞いていた家族は驚きはしなかったが、胸が押しつぶされるような思いでその場にいた。皆が覚悟を決めていたその時、奇跡が起きた。
ジルが「タコスかチーズフォンデュを食べに行きたい」と言葉を発したのだ。ラストラリーではなかった。まさに奇跡の蘇りだった。なぜジルは死の淵から蘇ることができたのか。原因は不明のままだが、正しい救急処置と、低体温法でジルの脳が守られたと考えられている。その後ジルは心臓にペースメーカーを埋め込む手術を受け、3ヶ月後にはほとんど後遺症もなく、普通の生活が送れるまでに回復した。
心室細動(VF)とは、致死的不整脈の一つで、心臓性突然死の主な直接原因となります。心室の各部分に、無秩序な電気的興奮が起こります。そのため、心電図上で特徴的な、不規則な波形を示します(QRS波とT波は識別不能)。
心室細動を起こす原因として、心筋梗塞(特に急性期)や弁膜症、心筋症、高血圧性心疾患などの重症な心疾患などがあります。特に原因が見当たらない場合、先天性QT延長症候群やBrugada(ブルガダ)症候群などが疑われます。これらは原因遺伝子が解明されており、イオンチャネル病(先天性QT延長症候群は、Naチャンネル、Kチャンネルの遺伝子、Brugada症候群は、ナトリウムイオンチャネル遺伝子SCN5Aとの関連が指摘されている)という概念でとらえられています。
心臓は、ご存じの通り、全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。ポンプを動かしているのが、電気刺激です。この電気刺激が上手く伝われない結果、心臓からの血液が上手く拍出することができないため、脳血流量が途絶してしまいます。3〜5秒間でめまい、5〜15秒間で意識消失が出現し、3〜4分持続すると、脳の不可逆的変化が生じ、死に至ってしまいます。
そのため、心室細動と考えられる患者さんが発見されたら、直ちに救急処置を施行しなければなりません。ライアンのように心肺蘇生を行ったり、除細動、後療法の3段階での処置が必要です。
とくに重要となるのが、AEDなどによる除細動です。最近では、大きなショッピングモールや室内プール、ジムなどで目にすることも多いのではないでしょうか。AED、すなわち自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator)とは、心臓の心室細動の際に電気ショックを与え(電気的除細動)、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器です。
自動体外式除細動器(AED)は、操作を自動化して医学的判断ができない一般の人でも使えるように設計されています。操作はいたって簡単で、AEDの発する指示音声に従ってボタンを押すなど2〜3の操作のみです。
使い方は、電源を入れ、電極パッドを胸に貼り付けると心電図を解析して電気ショックを与えるべきかを調べます。電気ショックが必要と解析した場合には、機械の指示に従ってスイッチを押すと電気ショックを与えます。
AEDが、その機能を発揮するのは心室細動を起こしている心臓に対してです。"正常な拍動をしている""心臓・完全に停止している""心房細動を起こしている"心臓に対しては、AEDの診断機能が「除細動の必要なし」の診断を下し通電は行われません。
致死的不整脈である心室細動に対する、確実な唯一の治療方法は電気的除細動electrical defibrillationであり、救急措置には不可決の治療法であるといえるでしょう。ただ、AEDに関する注意点としては、以下のようなものがあります。
アメリカ・オクラホマ州ジョーンズに住むフィンレイ夫妻は結婚4年目の仲の良い夫婦。妻のジルは心臓に問題があり、過去に2回手術を受けていたが、その手術で心臓の病気は完治していると医師に言われていた。
2007年05月26日朝、二人に突然の悲劇が訪れる。ライアンが妻ジルを起こしに行くと、何か様子がおかしい。ピクリとも動かないジル…揺さぶっても反応せず、息をしていない。脈もなく、心臓も止まっていた。ライアンはすぐに911に電話をかけ、救急車が到着するまでの間、電話で指示を受けながら妻に人工呼吸と心臓マッサージを行った。
15分後、救急隊員が駆けつけた。心臓は通常一定のリズムで脈打つが、この時ジルの心臓は「心室細動」という小刻みに痙攣してしまう状態にあった。その場で電気ショックを施し、ジルは病院に運ばれたが、一刻を争う危険な状態だった。心臓は動き出したものの意識不明の昏睡状態で運ばれたジルには、脳へのダメージを防ぐため、脳低体温療法を行う必要があった。ジルの体温を33度まで冷やし、脳のダメージを防ぐ最大限のケアが施された。
24時間が経過し、ジルの体温を徐々に上げる治療に切り替えられた。過去には患者が体を温められている途中で意識を回復したという例もあったが、ジルは目覚めなかった。ジルの脳が調べられ、医師がライアンに告げたのは「意識が回復する可能性は1%から2%程度。植物状態になる可能性が高いでしょう」という最悪の言葉だった。
鼻から胃に通された栄養補給チューブと水分補給の点滴、そして人工呼吸器、この3つがジルの生命を維持していた。ライアンは、昏睡状態が続く妻をつきっきりで看病をした。06月01日、予想以上にしっかり呼吸ができているということで、ジルの人工呼吸器が外された。だが、喜びはつかの間、これ以上の回復はないだろうという言葉が医師から告げられた。このままの状態が続き、時期治療はストップされ、ゆくゆくは医療系の介護施設に移ることになる、という。そしてその4日後、もう一つの選択肢として、医師から示されたのはあまりに残酷なものだった。それは生命維持装置を外すこともできるという家族の同意書だった。ジルの場合、生命維持装置とは、栄養チューブと点滴を意味していた。
オクラホマ州では、まず病院の倫理委員会に決定が委ねられる。そして家族が同意書にサインをし、オクラホマの裁判所に届出をすれば、合法的に生命維持装置を外すことが許されていた。愛する妻を介護施設に転院させるべきか、この病院で尊厳死させるべきか。このことはジルの両親にも伝えた。ジルがどんな状態でもずっと一緒にいてあげたいと思うライアンだったが、果たしてそれがジルの望むことだったのか?ジルの両親も苦しい気持ちの中、ライアンにそう問いかけた。思い悩むライアン。回復する見込みもないのに、医療技術によって生命を維持し続ける人生を妻は望んでいるのだろうか…。ある時親戚の最期を看取った時の妻ジルの言葉を思い出した。意識もないままベッドで寝たきりの姿を見て「私はあんな風になりたくない」と…。ライアンは生命維持装置を外すことを決断、6月9日、家族が見守る中、栄養チューブと点滴が外された。5時間が過ぎた頃、ジルの体に変化が起こった。
しきりに体を動かし始めたのだ。だが、それは「ラストラリー(最後の回復)」という現象で、人間が最後の時を迎える瞬間に、体の機能を蘇らせて、動いたり、喋ったり、回復したかのように見える行動をするものだった。医師からそれを聞いていた家族は驚きはしなかったが、胸が押しつぶされるような思いでその場にいた。皆が覚悟を決めていたその時、奇跡が起きた。
ジルが「タコスかチーズフォンデュを食べに行きたい」と言葉を発したのだ。ラストラリーではなかった。まさに奇跡の蘇りだった。なぜジルは死の淵から蘇ることができたのか。原因は不明のままだが、正しい救急処置と、低体温法でジルの脳が守られたと考えられている。その後ジルは心臓にペースメーカーを埋め込む手術を受け、3ヶ月後にはほとんど後遺症もなく、普通の生活が送れるまでに回復した。
心室細動(VF)とは、致死的不整脈の一つで、心臓性突然死の主な直接原因となります。心室の各部分に、無秩序な電気的興奮が起こります。そのため、心電図上で特徴的な、不規則な波形を示します(QRS波とT波は識別不能)。
心室細動を起こす原因として、心筋梗塞(特に急性期)や弁膜症、心筋症、高血圧性心疾患などの重症な心疾患などがあります。特に原因が見当たらない場合、先天性QT延長症候群やBrugada(ブルガダ)症候群などが疑われます。これらは原因遺伝子が解明されており、イオンチャネル病(先天性QT延長症候群は、Naチャンネル、Kチャンネルの遺伝子、Brugada症候群は、ナトリウムイオンチャネル遺伝子SCN5Aとの関連が指摘されている)という概念でとらえられています。
心臓は、ご存じの通り、全身に血液を送り出すポンプの働きをしています。ポンプを動かしているのが、電気刺激です。この電気刺激が上手く伝われない結果、心臓からの血液が上手く拍出することができないため、脳血流量が途絶してしまいます。3〜5秒間でめまい、5〜15秒間で意識消失が出現し、3〜4分持続すると、脳の不可逆的変化が生じ、死に至ってしまいます。
そのため、心室細動と考えられる患者さんが発見されたら、直ちに救急処置を施行しなければなりません。ライアンのように心肺蘇生を行ったり、除細動、後療法の3段階での処置が必要です。
とくに重要となるのが、AEDなどによる除細動です。最近では、大きなショッピングモールや室内プール、ジムなどで目にすることも多いのではないでしょうか。AED、すなわち自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator)とは、心臓の心室細動の際に電気ショックを与え(電気的除細動)、心臓の働きを戻すことを試みる医療機器です。
自動体外式除細動器(AED)は、操作を自動化して医学的判断ができない一般の人でも使えるように設計されています。操作はいたって簡単で、AEDの発する指示音声に従ってボタンを押すなど2〜3の操作のみです。
使い方は、電源を入れ、電極パッドを胸に貼り付けると心電図を解析して電気ショックを与えるべきかを調べます。電気ショックが必要と解析した場合には、機械の指示に従ってスイッチを押すと電気ショックを与えます。
AEDが、その機能を発揮するのは心室細動を起こしている心臓に対してです。"正常な拍動をしている""心臓・完全に停止している""心房細動を起こしている"心臓に対しては、AEDの診断機能が「除細動の必要なし」の診断を下し通電は行われません。
致死的不整脈である心室細動に対する、確実な唯一の治療方法は電気的除細動electrical defibrillationであり、救急措置には不可決の治療法であるといえるでしょう。ただ、AEDに関する注意点としては、以下のようなものがあります。
AEDを使用する上で、まず以下のような点に注意します。
AHAガイドライン2005によれば、AEDを使用する際は、1ショック後、すぐに心肺蘇生術をを行なうべきであるといわれています(解析が2分ごとに行なわれるため、その間に心肺蘇生術を行う)。また、心肺蘇生法の胸骨圧迫対人工呼吸法の比率を『15:2から30:2に改める』など、従来よりも胸骨圧迫に注目している、といった点も知っておくと良いかもしれませんね。
こうしたことは恐らく、市民向けの講習会などで教えてくれると思われますので、機会があれば参加しておくといいかもしれません。何はともあれ、ジルさんが目を覚ましたというその一因に、懸命なライアンの適切な蘇生処置があったということもあるでしょうね(発見が早かったということもあるでしょうが)。
ちなみに、心室細動から蘇生したケースは、年間20〜30%に再発してしまうといわれています。そこで、植込み型除細動器を埋め込む手術を受けるわけです。これにより、心室細動による突然死は数%以下に減少するといわれています。植込み型除細動器は、心室細動を感知して自動的に作動して心室細動を止めてくれます。近年の植込み型除細動器は、ペースメーカーの機能も兼ねるようになっているそうです(除細動後に拍動が乱れても適切に処置する)。
それにしても、生命維持装置を外そうとした夫の決断を、ジルはどのように受け止めたのでしょうか。こうしたことを考えると、予め「もしものときは…」といった話し合いをしておくのは、意外と大事であると思わされます。
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膵臓癌と誤診され、貯蓄を使い果たした男性
1)患者の前胸部が汗や水で濡れている場合は拭う。
2)胸毛の薄い部位を見極める。(濃い人の場合は、中にカミソリが入ってます。電極パッド貼付部分だけで良いので剃ります)
3)金具は外す。(腕時計、ネックレスなど)
4)貼り薬(湿布、膏薬等)などは拭く。
5)心臓ペースメーカーを入れている人は、電極パッド貼付は3cm程度離れたところがよい。
6)心電図解析中は誤診を防ぐ為に、また救助者等が感電しないよう通電時にも、患者に触れない様に注意する。
7)医師等の指示があるまで電極は外さないこと。(一度貼った電極をはがさない、位置を変えない。電極貼付位置を変えてしまう事により、僅かながらでも心電図の波形その他データが変わる可能性がある)
AHAガイドライン2005によれば、AEDを使用する際は、1ショック後、すぐに心肺蘇生術をを行なうべきであるといわれています(解析が2分ごとに行なわれるため、その間に心肺蘇生術を行う)。また、心肺蘇生法の胸骨圧迫対人工呼吸法の比率を『15:2から30:2に改める』など、従来よりも胸骨圧迫に注目している、といった点も知っておくと良いかもしれませんね。
こうしたことは恐らく、市民向けの講習会などで教えてくれると思われますので、機会があれば参加しておくといいかもしれません。何はともあれ、ジルさんが目を覚ましたというその一因に、懸命なライアンの適切な蘇生処置があったということもあるでしょうね(発見が早かったということもあるでしょうが)。
ちなみに、心室細動から蘇生したケースは、年間20〜30%に再発してしまうといわれています。そこで、植込み型除細動器を埋め込む手術を受けるわけです。これにより、心室細動による突然死は数%以下に減少するといわれています。植込み型除細動器は、心室細動を感知して自動的に作動して心室細動を止めてくれます。近年の植込み型除細動器は、ペースメーカーの機能も兼ねるようになっているそうです(除細動後に拍動が乱れても適切に処置する)。
それにしても、生命維持装置を外そうとした夫の決断を、ジルはどのように受け止めたのでしょうか。こうしたことを考えると、予め「もしものときは…」といった話し合いをしておくのは、意外と大事であると思わされます。
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