乳癌を早期に検出できる唾液検査が、米テキサス大学ヘルスサイエンスセンター(ヒューストン)の研究グループによって開発されたことを、BBCニュースが報じた。
 
今回の研究では、女性30人から採取した唾液検体を調べ、乳癌の有無によって違いが生じる49種類の蛋白を特定。BBCニュースによると、この蛋白から、腫瘍が悪性か良性かを判別できる可能性もあるという。

検査は簡単で、診察室や歯科医院でも短時間に癌検査ができるようになる可能性もあると研究グループは述べている。研究は、医学誌「Cancer Investigation」1月10日号に掲載された。

研究グループは現在、この唾液検査のプロトタイプを用いた臨床試験を計画しているほか、子宮頸癌をはじめとするほかの癌の検出への活用も検討している。
(乳癌を唾液で検出)


以前にも、唾液による口腔癌やシェーグレン症候群などの検出について発表されていました。現在のところ唾液検査は一般的ではありませんが、もし臨床応用することが出来れば、患者さんへの侵襲が少なく、非常に簡便な検査が誕生すると考えられます。

昨年の4月、ニューオーリーンズで開催された国際歯科研究学会(IADR)年次集会で発表された内容によれば、すでに口腔癌およびシェーグレン症候群の診断につながる指標が見つかっているそうです。口腔癌は5種類の蛋白と4種類のmRNAによって90%以上の確率で特定することができ、シェーグレン症候群でも数種類の蛋白およびmRNAがマーカーとなるといいます。

米国歯科研究学会(AADR)によれば、唾液は血液や尿と同じように重要な情報の宝庫であるとのことです。すでに、麻疹、流行性耳下腺炎、風疹、肝炎(A、B、C型)、乳癌、アルツハイマー病および嚢胞性繊維症を唾液から検出する新しい検査法が開発段階にある、とのこと。

もしかしたら、2011年を待たずして、乳癌への応用が可能になるのではないか、と期待されます。乳癌では特に、以下のような理由で必要性が高いと考えられます。
乳癌患者のうち、乳房のエックス線(マンモグラフィ)などを使った検診で癌が見つかったのは2割に過ぎず、4人に3人は、検診を受けずに自分でしこりなどの異常に初めて気づいて病院を受診したことが、日本乳癌学会の大規模調査でわかっています。

これは、多くの女性が乳癌に最初に気づくのは、ほとんどが自分で「しこり」に気づいたため、との結果のようです。検診にて発見されるのは、たった2割でしかないと判明しました。

その原因としては、乳癌検診の受診率が低いままで、「しこりが無ければ大丈夫」と思われる女性が多いと考えられます。ですが、「胸を触る自己診断で見つかる乳がんの大きさは平均約2センチで、自然に気づく場合は3センチ以上が多い」といったことや、「発見時には既に、リンパ節に転移していた人も、1/3」といったことからも、検診率の上昇を目指す必要があります。

一般的な乳癌のスクリーニング検査としては、問診、触診、軟X線乳房撮影(マンモグラフィー)、超音波検査等が実施され、臨床的に疑いが生じると、生検が実施され組織学的診断により癌かそうで無いかが判別されます。

低い検診受診率の背景としては、マンモグラフィや触診といった検査への抵抗感があるのかも知れません(もちろん、若い人は『自分は関係ない。面倒』ということで、検診へ行くこと自体に躊躇いがあるのかも知れませんが)。

もし唾液で検査できれば、「乳癌検診を受けてない?じゃあ、(外来診療の)ついでに検査しますか?」ということにもなるのかもしれませんね。結果、乳癌の早期発見ができるようになれば、と思われます。

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