「MRI(磁気共鳴画像)で、子宮の形を調べましょう」
東京都の会社員女性(39)は2003年、5回目の流産をした後、医師からそう言われた。02年、2回続けて流産した後、この病院で血液検査やエックス線検査を受けた。

この時、子宮の形に異常が見つかったが、医師は「出産にはあまり影響がない」と判断。だが、その後も3回流産した。MRI検査の結果、子宮内部を左右に隔てる出っぱりがあることが分かった。「中隔子宮」という形態異常だ。出っぱり部分は「線維性筋組織」と呼ばれ、血管が少なく血流が悪い。ここに受精卵が着床すると、酸素が足りない状態になり、流産しやすい。

04年、日本医大病院(東京都文京区)産婦人科教授の竹下俊行さんを受診し、この出っぱりを切除する手術を受けた。手術は、腹部を切開して出っぱりを切除する方法と、開腹はせず、子宮口から「子宮鏡」という内視鏡を入れて電気メスで削る方法がある。

開腹すれば、確実に切除できるが、腹部に傷跡が残る。一方、子宮鏡手術は、体への負担が軽い反面、出っぱりを削り残すなどの恐れがある。女性は、出っぱりの幅が広く、子宮鏡での手術は難しかった。そこで、腹部に数か所、小さな穴を開け、そこからカメラと切除器具などを入れる腹腔鏡手術を受けた。

その後、妊娠し、一昨年10月、男児を出産した。「もう1人ぐらいは欲しいかな」と考えている。子宮の形態異常は、約4%の女性に見られるとされる。胎児が育たない不育症の原因の9%ほどを占めるとされる。

異常があっても不育症になりにくい形態もあるが、中隔子宮の場合、流産の確率が高い。竹下さんは「中隔子宮の場合、手術すれば8割程度、出産できるようになる」と話す。

子宮の形態異常を伴う不育症の女性には、ほかの要因が重なっていることも多い。この女性は、血液検査で、少し血液が固まりやすいことが分かり、手術後の妊娠では、血栓(血液の塊)を予防するアスピリンとヘパリンを使用した。竹下さんは「子宮の形態に異常があっても必ずしも手術の必要はないが、流産を繰り返した場合は、手術を勧める」と話す。
(子宮に出っぱり 流産5回)


中隔子宮とは、胎生期において起こります。左右のミュラー管(女性生殖器の卵管、子宮、および腟上部に分化する部分)癒合部の正中組織が、子宮底から子宮腔に向かって隔壁として残存・下垂しているものです。約4%の女性に見られるとされています。

簡単に言ってしまえば、子宮はもともと胎児期の早い時期に、ミューラー管が左右から癒合してできあがりますが、これが途中の段階で止まってしまうのが原因で起こる子宮の奇形です。中隔部分が、内子宮口の高さに達しているか否かによって、完全中隔子宮と不全中隔子宮に分類されます。

中隔子宮は、上記のように流産、早産や微弱陣痛、胎児の位置異常(横位,骨盤位)などを起こしやすくなってしまいます。そのため、不育症の原因となってしまうわけです。

治療を要する場合は、以下のような手術が行われます。
ミュラー管の癒合不全によって生じた、さまざまな子宮奇形に対しては、妊孕能の修復や獲得を目的として子宮形成手術が行われます。特に、中隔子宮や双角子宮などは不妊症や流産の原因となりうるので、手術が行われます。

経頸管的に子宮鏡または切除用内視鏡で中隔を切除するか、開腹して子宮形成術(ジョーンズ-ジョーンズ手術,トンプキンス手術)などが行われます。

流産の原因としては、大きく分けて母体、胎児、夫婦間因子に分類することが出来ます。

母体による流産原因としては、感染症や子宮の異常(子宮頸管無力症、子宮奇形、子宮筋腫など)、黄体機能不全、高プロラクチン血症、内分泌疾患などがあります。胎児による流産の原因としては、染色体の異常、遺伝子病などがあります。夫婦間因子による原因とは、免疫異常(免疫応答の異常など)や、血液型不適合妊娠(Rh+−の不適合など)といったものがあります。

さらに、習慣流産といって、連続3回以上流産を経験した場合もあります。特に、絨毛膜下血腫が原因である場合は、SLE(全身性エリテマトーデス)や抗リン脂質抗体症候群を疑います。また、2回以上自然流産(死産も含めて)を反復する場合(習慣流産を含めて)便宜的に「不育症」と呼びます。

流産の恐れがあるといった場合、基礎疾患を始めとして、何らしらかの問題が存在していることも考えられます。上記ニュースのように、手術によって治療することもできる場合もあります。諦める前に、一度、不妊外来などを受診して精査することが望まれます。

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