横浜市の会社員(46)は2005年の秋ごろ、辛いものを食べたときにびりびりとしびれるような痛みを感じるようになった。舌の右側の縁のいつも同じ場所。とがった親知らずが、舌にあたるせいではないかと考え、近くの歯科医院で削ってもらった。
それでも痛みは治まらない。1週間後、再び歯科医院でそう話すと、「舌の異常かもしれない。口腔外科を受診した方がいい」と紹介状を書いてくれた。
だが、仕事は忙しい。たいした病気ではないだろうという思いもあって、受診しないまま月日が過ぎた。正月、実家で久々に会った両親が心配して病院に行くように繰り返すので、ようやく重い腰を上げた。
北里大歯科口腔外科に行くと、「舌に腫瘍ができている」と言われ、すぐに紹介を受けた耳鼻咽喉科准教授の中山明仁さんから、手術を勧められた。早期の舌がんだった。
幸い転移はなく、レーザーで舌の右側を小指1本分程度切って治療は終わった。7泊8日の入院で、退院の翌日から仕事に復帰。手術直後は切った跡がひりひりと痛んだが、1か月後には落ち着いた。今は日常生活での支障はない。「放っておかないで本当に良かった」と振り返る。
舌がんは、早期なら一部を切るだけだが、やや進行すると放射線を出す針を舌に刺してがん細胞をたたく「小線源治療」が行われる場合がある。さらに進行すると、舌を大きく切って腕や腹、背中の筋肉などで再建する手術が必要になる。
小線源治療は舌を切らないため、治療後も普通に話せるが、ごくまれにあごの骨が溶けたり、針を刺した部分にかいようができたりすることがある。切除後に跡に舌を再建しても、うまく話せなかったり、食事にむせたりすることがある。
がんの初期には、舌が食事のたびにしみる、しくしくするなどの感じがしたり、口内炎ができたりする。これらが2週間以上治らない時は、まず歯科か耳鼻咽喉科に行く。異常なしと言われても、症状が治まらない場合は、がんを専門に扱う大きな病院の耳鼻咽喉科や頭頸部外科などを直接受診してみても良いという。
舌がんは、がんのなかでは比較的進行が早い。「2か月で2倍に大きくなることもある」と中山さん。「おかしいと思ったら、とにかく早めの受診を」と呼びかける。
口やのどのがんは、進行してから治療を受けると、話す、食べるなどの機能が損なわれ、その後の生活が一変することもある。早期発見につながるがんの最初のサインとしては、以下のようなものがある。
(舌のしびれで早期発見)
舌癌とは、その名の通り舌(有郭乳頭より前の舌可動部)に生じる上皮性悪性腫瘍です。ちなみに、同じ舌でも、舌根のものは中咽頭癌に分類されます(境界は有郭乳頭です)。舌のへり(舌縁部)、それも後方に好発します。
全癌の1%、口腔癌の60%を占めるといわれています。原因となるのは、う歯(虫歯)、不適合義歯などの器械的刺激、喫煙、飲酒などがリスクとしてあげられています。
初期症状としては、舌の違和感、軽度の痛みなどがあります。進行すると、食事をしている時の痛みや、舌運動制限、構音障害(言葉を発するときの障害)、嚥下障害(飲み込みにくさ)などが出現します。
病変を見ると、潰瘍やその周囲の硬結が特徴的で、前癌状態(そこから癌に進行することがある病変)として白板症、紅板症などがあります。
診断としては、生検による確定することができ、画像診断(頭部CT、MRIなど)により原発巣、頸部リンパ節転移、遠隔転移の拡がりを診断することができます。初診時頸部リンパ節転移の頻度は、40〜50%ですが、遠隔転移は少なく、経過中に発生する部位では肺が多いという特徴があります。
治療としては、以下のようなものがあります。
それでも痛みは治まらない。1週間後、再び歯科医院でそう話すと、「舌の異常かもしれない。口腔外科を受診した方がいい」と紹介状を書いてくれた。
だが、仕事は忙しい。たいした病気ではないだろうという思いもあって、受診しないまま月日が過ぎた。正月、実家で久々に会った両親が心配して病院に行くように繰り返すので、ようやく重い腰を上げた。
北里大歯科口腔外科に行くと、「舌に腫瘍ができている」と言われ、すぐに紹介を受けた耳鼻咽喉科准教授の中山明仁さんから、手術を勧められた。早期の舌がんだった。
幸い転移はなく、レーザーで舌の右側を小指1本分程度切って治療は終わった。7泊8日の入院で、退院の翌日から仕事に復帰。手術直後は切った跡がひりひりと痛んだが、1か月後には落ち着いた。今は日常生活での支障はない。「放っておかないで本当に良かった」と振り返る。
舌がんは、早期なら一部を切るだけだが、やや進行すると放射線を出す針を舌に刺してがん細胞をたたく「小線源治療」が行われる場合がある。さらに進行すると、舌を大きく切って腕や腹、背中の筋肉などで再建する手術が必要になる。
小線源治療は舌を切らないため、治療後も普通に話せるが、ごくまれにあごの骨が溶けたり、針を刺した部分にかいようができたりすることがある。切除後に跡に舌を再建しても、うまく話せなかったり、食事にむせたりすることがある。
がんの初期には、舌が食事のたびにしみる、しくしくするなどの感じがしたり、口内炎ができたりする。これらが2週間以上治らない時は、まず歯科か耳鼻咽喉科に行く。異常なしと言われても、症状が治まらない場合は、がんを専門に扱う大きな病院の耳鼻咽喉科や頭頸部外科などを直接受診してみても良いという。
舌がんは、がんのなかでは比較的進行が早い。「2か月で2倍に大きくなることもある」と中山さん。「おかしいと思ったら、とにかく早めの受診を」と呼びかける。
口やのどのがんは、進行してから治療を受けると、話す、食べるなどの機能が損なわれ、その後の生活が一変することもある。早期発見につながるがんの最初のサインとしては、以下のようなものがある。
<舌がん発見のコツ>
・舌のわきから裏側にかけてできることが多い
・舌の痛みや違和感、しくしくする感じが2週間以上続く
・治りにくい口内炎
・表面に硬いしこりを感じる、こすって血がつく
・白い斑点は前がん病変の場合もある。でこぼこやかいようにも注意
(舌のしびれで早期発見)
舌癌とは、その名の通り舌(有郭乳頭より前の舌可動部)に生じる上皮性悪性腫瘍です。ちなみに、同じ舌でも、舌根のものは中咽頭癌に分類されます(境界は有郭乳頭です)。舌のへり(舌縁部)、それも後方に好発します。
全癌の1%、口腔癌の60%を占めるといわれています。原因となるのは、う歯(虫歯)、不適合義歯などの器械的刺激、喫煙、飲酒などがリスクとしてあげられています。
初期症状としては、舌の違和感、軽度の痛みなどがあります。進行すると、食事をしている時の痛みや、舌運動制限、構音障害(言葉を発するときの障害)、嚥下障害(飲み込みにくさ)などが出現します。
病変を見ると、潰瘍やその周囲の硬結が特徴的で、前癌状態(そこから癌に進行することがある病変)として白板症、紅板症などがあります。
診断としては、生検による確定することができ、画像診断(頭部CT、MRIなど)により原発巣、頸部リンパ節転移、遠隔転移の拡がりを診断することができます。初診時頸部リンパ節転移の頻度は、40〜50%ですが、遠隔転移は少なく、経過中に発生する部位では肺が多いという特徴があります。
治療としては、以下のようなものがあります。
早期例では、放射線治療(小線源組織内照射)ないしは舌部分切除術(レーザー使用)が行われます。小線源組織内照射は、頚部転移のないT1,T2とT3の一部が適応となります。
進展例では、拡大根治手術が主体で、これに化学療法、放射線療法が組み合わされます。進展範囲により、舌の半側切除、亜全摘、全摘などが選択されます。初期例を除くと、隣接領域に浸潤しやすく、下顎骨、咽頭などの合併切除が必要な場合もあります。
術後に嚥下、構音の障害が必発なので(舌の切除をするわけですから)、これに対しては皮弁によって欠損部を再建します。術後の嚥下、構音障害を最小限にするため、遊離皮弁などを用いた再建術が併用されます。頸部リンパ節転移には頸部郭清術が行われます。手術不能例では、放射線、化学療法などが姑息的に行われます。
全体では、5年生存率は50%前後であるといわれています。お心当たりの方は、上記のチェックポイントで調べ、すぐに病院へ行き、早期発見・治療することが重要であると思われます。
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本当は怖い家庭の医学 症例集
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進展例では、拡大根治手術が主体で、これに化学療法、放射線療法が組み合わされます。進展範囲により、舌の半側切除、亜全摘、全摘などが選択されます。初期例を除くと、隣接領域に浸潤しやすく、下顎骨、咽頭などの合併切除が必要な場合もあります。
術後に嚥下、構音の障害が必発なので(舌の切除をするわけですから)、これに対しては皮弁によって欠損部を再建します。術後の嚥下、構音障害を最小限にするため、遊離皮弁などを用いた再建術が併用されます。頸部リンパ節転移には頸部郭清術が行われます。手術不能例では、放射線、化学療法などが姑息的に行われます。
全体では、5年生存率は50%前後であるといわれています。お心当たりの方は、上記のチェックポイントで調べ、すぐに病院へ行き、早期発見・治療することが重要であると思われます。
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