がん患者らが医療機関を転々とする「がん難民」が問題化する中、がんに関するさまざまなことについて、語り合ったり相談に乗ったりする「がん哲学外来」を、順天堂大病院(東京都文京区)が30日から開設する。料金は無料。3月中旬にかけ計5日間、試行的に実施し、需要があればさらに続けるという。

担当の樋野興夫教授(病理・腫瘍学)は「がんに関心があれば患者や家族に限らず、医療関係者、学生、誰でも歓迎。同じ目線で語り合えれば」と話す。ユニークな試みとして注目されそうだ。

樋野教授は、がん発生や進行の仕組み、中皮腫などを長く研究してきたが「1人に1人ががんになる時代。がんとの付き合いには哲学的な考え方を取り入れる必要がある」との思いが強くなり、「哲学」と冠した外来窓口の創設に行き着いた。

外来は、がんに関する来院なら何でも受け付ける方針。患者や家族に適切な診療科を紹介したり、悩みや不安の相談を受けたりするほか、発がんの仕組みなどがんの基本知識を解説することなどを想定しているという。

外来は予約制で、同院のがん治療センターの1室で午前と午後に1時間ずつ開き、1人当たり30分−1時間程度。申し込みや問い合わせは、がん治療センターへ電話かファクスで。番号はいずれも03-5802-8196
(順大に「哲学外来」 がん患者と悩み語り合う)


がんの告知においては、その内容もさることながら、「情報をいかに伝えるべきか」といったことは非常に重要なことであると思われます。

かつて(1960年代くらいまで)は、告知しないのが普通で、「まずはご家族に…」といったことが一般的だったようです。その後、1980年代以降はケースバイケースで告知する、というのが一般化されていったように思います。最近ではインフォームドコンセントの概念が定着し、がん告知は一般的に行われるようになったものであると思われます。

というのも、医師が患者に正確な事実を説明することは、患者が自ら置かれた状況を十分理解し、熟考したうえで医療における自己決定を行うための前提であり、患者からインフォームド・コンセントを得るうえでの必須条件となると考えられるからです。

一方で、患者さんは『知らされない権利』もあり、あえて聞かないという権利もあります。故に、前段階として、初診時などであらかじめ、待合室の段階で患者の病気が「がん」であったときには「がん」と知らせてほしいかどうか、さらに「がん」であったとき、その「がん」が治癒が望めない状態のときでも、そのことを知らせてほしいかどうかなど、患者さんやご家族にアンケートをとっておく必要があります。

その後、検査などを行い、診断を経て告知、といたるわけですが、ここにおいて、最近では以下のような問題があると思われます。
昨今では、病気について知ろうと思えば、たとえ医師などではなくとも、いくらでも調べることができる環境にあると思われます。キーワードを次から次に検索にかけていけば、それ相応の知識が手に入るわけです。

検査や診断の結果から、患者さん自身で5年生存率を調べることもでき、時には病院の手術成績まで掲載されていることもあります。そして、まだ一般的でない「最新治療」と銘打った治療法なども知ることができます。

もちろん、こうした情報化された状況を忌むべきものであると言いたいわけではありません。ただ、疾患や治療のことについての理解が不完全で、自分の都合の良いように解釈してしまうケースもあると思われます。

そしてそうした場合、あまり話し合わないうちに「あの医者は不勉強だ」「あの人に治療は任せられない」といった猜疑心を抱いてしまうことになってしまうとも考えられます。

そこで有用なのが「セカンド・オピニオン」と呼ばれるものです。セカンド・オピニオンとは、患者さんが現在かかっている医療機関から提供されている医療行為(治療法のみならず,主治医の診断も含まれる)に疑問を感じ、納得のために別の第2の医療機関を受診して求める意見のことです。

一度疑ってしまうと、関係の修復が難しく(医者の話をきいてもらえない)、他の方に意見を聞き、「(あの医師の言うことは)やっぱり正しかったのか」「2番目に意見を求めた先生の治療のほうが、やはり納得できる」といったことで、患者さんがよりよい医療を受けるための権利となっています。

ただ、セカンド・オピニオンを求めるのにも、「誰に聞いたらいいのか…」「今、相談している先生がイヤな顔をするのでは…」といったことで、なかなか言い出しづらいというケースも多いと思われます。

そこで、上記のような気軽に相談できる機関があれば、非常に助かると思われます。いわば、がん患者さんの駆け込み寺ともいえる存在でしょうか。今後、こうした外来が多くの病院で開設され、病院ごとや診療科ごとの垣根のない医療ができれば、と期待されます。

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