独立行政法人・医薬基盤研究所(大阪府吹田市)を中心とした疫学研究チームは、香川県・小豆島の住民らの協力で帯状疱疹の実態解明に向けた大規模な基礎データ調査に乗り出す。50歳以上の住民1万人以上を対象に、発症率や免疫の保有などを調べる。これほど多くの住民が協力する疫学研究は国内では珍しく、今回のデータを基に将来的にはワクチン開発も期待されるという。

帯状疱疹は帯状ヘルペスとも呼ばれ、子供のころにかかった水ぼうそうのウイルスが原因で発症するとされる。加齢やストレスで免疫力が低下した際、体内に残ったウイルスが再活動し、帯状に疱疹ができ神経の痛みを引き起こす。
 
重症の場合は「帯状疱疹後神経痛」となり、長期間痛みが取れず日常生活にも支障をきたすことがある。国内では発症数やメカニズム、発症率など実態把握が進んでいないのが現状という。
 
研究チームは、同研究所のほか大阪大医学部や阪大微生物研究会、奈良県立医大、地元医師会などで構成。小豆島など同県小豆郡は50歳以上の人口が約1万9000人と、米国で実施された同様の調査の対象者数と同規模で、自治会組織が整い人口の流出入が少ないことから調査地に選ばれた。
 
同郡内に事務所を置き、薬剤師や保健師ら専門員6人を配置。住民に免疫の保有、帯状疱疹が発症していないかなどを問い合わせ、発症した場合は医療機関で採血などを行う。
 
研究チームは、少なくとも対象人口の6割程度の約1万2000人の協力が必要とし、地元の小豆島町と土庄町で自治会ごとに研究目的や具体的な内容などを説明。個人情報の保護などから弁護士らでつくる倫理委員会も立ち上げた。調査期間は3年間で、今年4月からの調査開始を目指す。
(島民1万人対象 帯状疱疹を実態調査へ 医薬基盤研など)


水痘(水ぼうそう)に罹患した後、そのウィルス(水痘・帯状疱疹ウイルス)は、神経節内(三叉神経節、脊髄神経節)に潜伏感染しています。その後、水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化することで、帯状疱疹が起こります。

齢を経るとともに増加し、特に40歳代以降に多いといわれています。年間発症率は人口10万人あたり300〜500人程度です。

免疫機能に異常が生じなどで、VZVが再活性化して生じます。よって、原因となるのは、過労や老化のほか、糖尿病、外傷、悪性腫瘍、自己免疫疾患、重症感染症、免疫抑制剤や抗腫瘍薬による治療、放射線療法などがあります。故に、帯状疱疹自体は予後良好な疾患ですが、発症要因として血液疾患、癌、膠原病などが潜在している可能性を考慮する必要があります。

経過としては、神経痛様の疼痛(ピリピリした痛みです。顔を洗うといった、軽く触れることでさえ痛いそうです)が先行し、その部位に浮腫性紅斑や紅色丘疹が出現します。しだいに水疱、膿疱、痂皮(かさぶた状になる)と変化し、約3週間で治癒します。

ですが、合併症として帯状疱疹後神経痛(post-herpetic neuralgia:PHN)が、およそ3%の率(加齢とともに増加)で発生し、問題となります。これは、神経変性によるもので、耐えがたい痛みが残ることもあります。

また、Ramsay Hunt(ラムゼー・ハント)症候群といって、顔面神経の膝神経節が侵されると、顔面神経麻痺による閉眼困難や内耳障害(耳鳴り,難聴,眩暈)、舌に疱疹が生じて味覚障害を伴うこともあります。

診断法や治療法については、以下のようなものがあります。
まず、顔や背中〜胸など、一定の神経支配領域に一致した帯状の皮疹があるのを確認します。通常、左右のどちらか一方で、浮腫性の紅斑→小丘疹→小水疱へと変化します。

上記のような臨床症状と、特徴的な水疱の出現により、ほぼ診断が可能です。場合によっては、水疱内溶液や口腔ぬぐい液を培養したり、水疱内容液を塗抹して細胞内に特有の封入体を認める、といった所見も重要です。確定診断のため、、抗VZVモノクローナル抗体を用いた免疫染色を行うこともあります。この方法は、特異性が高く迅速であるという特徴があります。

治療疱疹としては、急性期の疼痛を緩和し、皮疹の再上皮化を促進するとともに、後遺症である帯状疱疹後神経痛(PHN)、運動麻痺、瘢痕などの発生を予防することです。疼痛に対しては、非ステロイド性抗炎症薬を用います。

できるだけ発症初期(皮疹出現から72時間以内)に抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビル(ACV)を使用します。こうした早期治療は、PHNの予防にも役立ちます。

帯状疱疹治癒後も帯状疱疹後神経痛(PHN)が発生すると、数ヶ月〜数年にわたり痛みが持続することがあります。そうした場合、交感神経節ブロックなどのペインクリニックが必要であることもあります。

上記の大規模な研究により、帯状疱疹に対する効果的な治療法や予防策が発見されれば、と期待されます。

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