富士フイルムは6日、女性の胸部X線診断装置(マンモグラフィー)で撮影した画像をコンピューターで解析し、乳がんの可能性のある病巣を見つけ出す画像診断システム検査支援システム「MV−SR657」を、同日から発売すると発表した。

乳がん患部の特徴を示す微小石灰化や腫瘤などを自動的に検出し、四角で囲んで表示したり矢印で示したりする。クリックすれば、拡大表示もできる。日本人女性約3000人の症例をもとに開発した。

これまでマンモグラフィー画像による病巣の読み取りは医師の目が頼りだった。暗い部屋で微細な石灰化や腫瘤などをすべて見極めるのは難しく、医師に大きな負担がかかっていた。新装置はコンピューターが自動検出するので、見落としがなくせるという。

マンモグラフィーCADの商品化は国内メーカーでは初。価格は2000万円(税別)で初年度50台以上の販売を見込む。
(マンモグラフィCADを新発売 富士フイルム)


マンモグラフィー(乳房X線撮影)とは、専用のX線撮影装置を用いて、乳房を強く挟んで撮影する画像診断の一種です。圧迫により、乳房内部の様子を鮮明に写しだすことができ、病変前後の乳腺を排除して撮影することができます。触知することのできない乳癌の発見や、乳房腫瘤の良悪性の鑑別、乳癌の拡がり診断などに有効であるといわれています。

たとえば、乳癌に特徴的なマンモグラフィ所見としては、「集簇する微細石灰化とスピキュラ(スピクラ)を伴う高濃度の腫瘤像」といったものがあります。これは、石灰化の小さな粒が、たくさん集まっているような状態や、スピキュラ(腫瘤から周囲に向かって出る針状の突起)があると、悪性であるといった診断がなされるわけです。

日本の乳がん検診は、昭和63年の老人保健法で「30歳以上に問診・視触診検診を逐年で行う」という形で全国に導入されました。ですが、視触診だけではなかなか乳癌を発見することが難しく、平成12年の老人保健法65号で、50歳以上においてマンモグラフィ併用検診は死亡率を減少させる、とのことで推進が勧告されました。

さらに、最近では40歳以上に隔年のマンモグラフィ併用検診が勧告され、特に40〜49歳においては2方向撮影が推奨されています。

ただ、マンモグラフィーにも、以下のような弱点があります。
マンモグラフィは検診および精密検査で、上記のような有用な検査方法の1つであると考えられています。ですが、高濃度乳房の多い若年者においては、病変の検出が難しいといわれています。

高濃度乳房とは、閉経前であるため、乳腺がまだ多く、そのためにレントゲン写真を見ても乳癌発見となる腫瘤や、石灰化が乳腺に隠れてしまってレントゲンに適していない状態です。

ですので、35歳以下の若い女性においては、マンモグラフィはあまり有効であるという報告は少ないといわれています。また、乳腺実質の量が多いため、若年者の乳房はしばしば結節様に触知され、触診での診断もまた、難しい場合が少なくないといわれています。

もし上記のようなシステムが、より高い精度で診断することができるようになれば、医師の見落としも防ぐことができるようになるのではないか、と期待されます。

その一方で、乳がん検診に行くという人がまだ少ないのもまた問題となっています。診断技術の進歩、そして高い検診率が、今後の乳癌での死亡率を減らす鍵となっていくと思われます。

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