日本産科婦人科学会は23日、東京都内で理事会を開き、体外受精して子宮に戻す受精卵を原則1個にする見解案を承認した。35歳以上か、2回以上続けて妊娠しなかった患者は、2個まで戻すことを容認する。
体外受精では妊娠率を高めるため、複数の受精卵を子宮に戻す治療が行われている。当初の学会指針は「3個以内」だったが、昨年12月の理事会で「2個以内とし、可能な限り1個を目指す」とする見解案が承認された。今回、会員の意見を聞いた上で「原則1個」を決定。4月の総会で正式に決定される予定になっている。
背景に体外受精の技術向上で1個と2個の妊娠率が縮まってきたことに加え、多胎妊娠は早産など、妊婦への負担が大きいことがある。
一方で、35歳からは妊娠率が低下するため「2個」を容認する選択肢も残した。受精卵は子宮に戻しても必ず妊娠に成功するとはかぎらないことから、今回の見解案によって不妊治療の経済的負担が増す可能性もあるが、学会は母体の安全を重視した。
(体外受精後に戻す受精卵、原則1個に)
生殖医療における体外受精(IVFと略されます。In Vitro Fertilizationのことです)とは不妊治療の一つで、通常は体内で行われる受精を体の外で行う方法です。受精し、分裂した卵(胚)を子宮内に移植することを含めて体外受精・胚移植(IVF-ET)といいます。
体外受精の中で、特に胚移植法の適応となるのは、以下の場合です。
こうした卵管の異常や精子異常、不妊症などに対して適応となります。
ただ、体外受精-胚移植にも問題もあり、上記のような多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、子宮外妊娠などが起こってしまう可能性があります。
多胎妊娠とは、2児以上の胎児が子宮内に存在する状態を指します。生殖医療技術の発達に伴い、3倍以上に急増していた時期もあります。単胎妊娠に比べ、流早産や妊娠高血圧症、胎児奇形、子宮内胎児発育遅延などの合併症が起こる可能性があり、やはり母胎に対しても大きなリスクを伴う状態であると考えられます。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、以下のようなものを指します。
体外受精では妊娠率を高めるため、複数の受精卵を子宮に戻す治療が行われている。当初の学会指針は「3個以内」だったが、昨年12月の理事会で「2個以内とし、可能な限り1個を目指す」とする見解案が承認された。今回、会員の意見を聞いた上で「原則1個」を決定。4月の総会で正式に決定される予定になっている。
背景に体外受精の技術向上で1個と2個の妊娠率が縮まってきたことに加え、多胎妊娠は早産など、妊婦への負担が大きいことがある。
一方で、35歳からは妊娠率が低下するため「2個」を容認する選択肢も残した。受精卵は子宮に戻しても必ず妊娠に成功するとはかぎらないことから、今回の見解案によって不妊治療の経済的負担が増す可能性もあるが、学会は母体の安全を重視した。
(体外受精後に戻す受精卵、原則1個に)
生殖医療における体外受精(IVFと略されます。In Vitro Fertilizationのことです)とは不妊治療の一つで、通常は体内で行われる受精を体の外で行う方法です。受精し、分裂した卵(胚)を子宮内に移植することを含めて体外受精・胚移植(IVF-ET)といいます。
体外受精の中で、特に胚移植法の適応となるのは、以下の場合です。
1.絶対的適応
1)両側卵管の器質的障害
2)精子過少症:500万〜2,000万/ml
2.相対的適応
1)両側卵管の機能障害:薬物療法、卵管形成術の奏功しないもの
2)精子異常:2,000万〜4,000万/ml、数回のAIH(人工授精)で妊娠しないもの
3)子宮内膜症:薬物療法、手術療法の奏功しないもの
4)頸管因子による不妊
5)原因不明不妊:抗卵・抗精子抗体を含む。
不妊期間が3年以上で数年間の積極的治療にても妊娠しないもの
こうした卵管の異常や精子異常、不妊症などに対して適応となります。
ただ、体外受精-胚移植にも問題もあり、上記のような多胎妊娠や卵巣過剰刺激症候群(OHSS)、子宮外妊娠などが起こってしまう可能性があります。
多胎妊娠とは、2児以上の胎児が子宮内に存在する状態を指します。生殖医療技術の発達に伴い、3倍以上に急増していた時期もあります。単胎妊娠に比べ、流早産や妊娠高血圧症、胎児奇形、子宮内胎児発育遅延などの合併症が起こる可能性があり、やはり母胎に対しても大きなリスクを伴う状態であると考えられます。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、以下のようなものを指します。
卵巣過剰刺激症候群(OHSS)とは、無排卵症に対して排卵誘発や体外受精−胚移植などを行うことで発症するもので、卵巣肥大や腹水が起こってきます。不妊症治療の排卵誘発時に生ずる副作用(排卵誘発の約5.3%で発生)であるといえるでしょう。
排卵誘発により多くの卵胞が同時に腫大し、局所あるいは全身の血管透過性が亢進し、血管外に蛋白および液性成分が漏出してきます。その結果、血管内脱水で血液濃縮、血圧低下をきたしてしまいます(卵巣中の高エストロゲン状態により局所の血管透過性が亢進し、卵巣より液の漏出をきたしているものと考えられています)。
重症の場合には大量の腹水や胸水貯留をきたし、血清電解質異常、さらには循環血液量減少に伴う血液濃縮、血栓、重篤な場合には循環不全に陥る場合があります。
子宮外妊娠とは、受精卵が本来着床すべき子宮の内腔以外の場所に着床し生育した状態を指します。発生部位は卵管妊娠がほとんどで、98%以上を占めています。中でも80%は卵管膨大部妊娠であるといわれています。特に、卵管性不妊では子宮外妊娠が起こりやすいと考えられています。
少しでも妊娠の確率を上げたい、と不妊治療に頼りたいという気持ちは分かりますが、一方で治療にはリスクを伴うのだ、ということもしっかりと認識し「安全に行うためには不妊治療がどうあるべきか」など、こうして見直されることは重要であると思われます。
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不妊症・不妊治療のまとめ
体外受精は自然妊娠より高率の妊娠異常を伴うとの調査結果
排卵誘発により多くの卵胞が同時に腫大し、局所あるいは全身の血管透過性が亢進し、血管外に蛋白および液性成分が漏出してきます。その結果、血管内脱水で血液濃縮、血圧低下をきたしてしまいます(卵巣中の高エストロゲン状態により局所の血管透過性が亢進し、卵巣より液の漏出をきたしているものと考えられています)。
重症の場合には大量の腹水や胸水貯留をきたし、血清電解質異常、さらには循環血液量減少に伴う血液濃縮、血栓、重篤な場合には循環不全に陥る場合があります。
子宮外妊娠とは、受精卵が本来着床すべき子宮の内腔以外の場所に着床し生育した状態を指します。発生部位は卵管妊娠がほとんどで、98%以上を占めています。中でも80%は卵管膨大部妊娠であるといわれています。特に、卵管性不妊では子宮外妊娠が起こりやすいと考えられています。
少しでも妊娠の確率を上げたい、と不妊治療に頼りたいという気持ちは分かりますが、一方で治療にはリスクを伴うのだ、ということもしっかりと認識し「安全に行うためには不妊治療がどうあるべきか」など、こうして見直されることは重要であると思われます。
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