アメリカの消化器病学雑誌の最新号に掲載された報告によると、アメリカで食道ガン患者がここ数年急激に増加している要因の1つに「肥満」があるという。肥満対策が、食道ガンの予防につながるとのことだ。

報告によると、1973-2001年、アメリカの食道ガン患者の数は30万人から210万人に増加した。増加の正確な要因については今後も研究を続ける必要があるが、脂肪や糖分の過剰摂取による肥満が、食道ガンを誘発している要因の1つとなっているという。

報告は、次のように指摘している。「食道ガンの完治率は非常に低い。アメリカでも、食道ガン患者の手術後5年後の生存率は20%未満だ。食道ガンを予防するためには、脂肪や糖分の過剰摂取を控え、身体を動かすなどして肥満を回避する必要がある」。
(食道ガン患者が急増、原因は「肥満」)


食道癌とは、食道に発生した上皮性悪性腫瘍を指します。
日本における食道癌の組織型は、全国集計でみても93%以上が扁平上皮癌ですが、欧米では多くの症例が腺癌、しかもBarrett食道(胃液による逆流性食道炎などにより、円柱上皮が胃噴門部から連続して食道粘膜と入れ替わったもの)を背景にしたものであるという違いがあります。

好発年齢は60歳代となっています。最近では、食道癌は色素内視鏡および超音波内視鏡検査の普及に伴い、早期食道癌発見の機会があがっています。

結果、内視鏡的粘膜切除術(endoscopic mucosal resection:EMR)が行われる機会が多くなり、さらに手術療法においても手術手技および周術期管理の向上がみられ、治療成績も上がっていると言われています。現在では、手術死亡率は数%と比較的安全な手術となっており、手術治療成績も5年生存率が20%台から50%へと向上しています。

発症のリスクファクターとしては、喫煙や飲酒があり、特に両者の相乗作用との関係がいわれ、1日20本以上喫煙し3合以上飲酒する群が他の群と比べ、食道癌の発生に有意な差のあることが指摘されています。また、食道アカラシアや腐食性食道狭窄、Barrett食道などに癌発生頻度が高いと指摘されています。

症状としては、早期癌では食物がしみたり、食べ物の通過障害感、胸骨後部異常感などの軽度の食道症状が起こりますが、切除例の45%は無症状である言われています。

進行癌となると、狭窄が高度になり、嚥下障害が強くなってきて、悪心・嘔吐がみられることもあります。嘔吐は、初期には食物のみですが、狭窄が進むと唾液や粘液までも吐出してきます。

食道には漿膜がないため、周囲臓器への浸潤が起こりやすく、胸痛や背痛がみられたり、気道との間の瘻孔形成により激しい咳が起こることもあります。また、反回神経麻痺による嗄声などがみられることもあります。

必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
食道癌の早期発見には、消化管造影検査や内視鏡検査(粘膜癌の診断や1cm 以下の微小癌の発見に大きな役割を果たしている)が主に行われています。最近では、食道癌の診断は内視鏡検査が先行され、次いで精密検査としてX線造影検査が選択される傾向があるようです。

その理由としては、内視鏡検査は病変の指摘が短時間で容易にでき、X線造影検査は病巣部の正面像・側面像から病巣の深達度、内視鏡所見では描出しにくい粘膜下の病変の広がりなどが分かるからです。超音波検査やCT検査、MRI検査、超音波内視鏡検査などは、食道癌の周囲臓器浸潤、リンパ節転移診断、他臓器への転移診断などに役立ちます。

治療法としては、内視鏡的粘膜切除術や手術療法、放射線療法、化学療法などが通常行われています。食道癌治療ガイドラインによれば、壁深達度およびリンパ節転移により、その治療方法が選択されています。

たとえば、粘膜癌(特にm1〜m2)に対しては内視鏡的粘膜切除術(EMR)が第1選択とります。粘膜下層癌(sm癌)では従来の頸部、胸部、腹部の3領域リンパ節郭清を基本術式とします。他臓器浸潤のある症例に対しては、転移した臓器が容易に合併切除可能な臓器の場合は、手術を行いますが、気管や気管支、大血管への浸潤が認められる場合には、まず化学・放射線療法を行ってから腫瘍を縮小し、手術を考慮します。高度リンパ節転移、あるいは他臓器転移のような高度に進行すた場合は、非切除症例として化学放射線療法や化学療法が選択されます。

上記のニュースでは「脂肪や糖分の過剰摂取による肥満が、食道ガンを誘発している要因の1つとなっている」とのことであり、その詳細な理由などはまだ分かっていないようです。ですが、肥満は多くの疾患のリスクファクターとなっていることも事実です。気をつけておくにこしたことはなさそうです。

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