韓国は３日、中国大陸内陸部のゴビ砂漠から飛来する有害物質を含んだ黄砂の影響で、学校を閉鎖する措置に踏み切った。メモリチップ製造工場などでも安全対策が強化された。

韓国当局は、先週末に黄砂注意報を出したのに続き、３日には南東部の幼稚園と小学校に通う児童の保護者に対し、子どもたちを自宅待機させるよう要請。その理由について、釜山のある教育関係者は、その世代の子どもたちは免疫システムがまだ弱いためとしている。

同国では、毎年この時期に中国から飛来する黄砂により、多数の死者と数十億ドル(数千億円)規模の損害が出ているという。
(大量黄砂で韓国の学校閉鎖　免疫システムまだ弱く)

中国では大気汚染の深刻化などで、推計約2,000万人の気管支ぜんそく患者や慢性閉塞肺疾患患者がいると考えられています。そのため、喘息薬市場は現在8億元規模であり、今後も急増していくとみられています。現在の医薬品市場全体では1.5兆〜2兆円規模ですが、2015年には日本を超えると予測されています。

黄砂自体には、アレルギー反応や喘息様の病態が起こることは少ないと考えられます。しかしながら、そこへ大気汚染物質や土壌中のカビや細菌が付着することでアレルギー反応が起こるようです。

このことをアジュバントといい、免疫機構を非特異的に増強させることにより、抗原に対する免疫応答増強能をもつ物質の総称を指します。

具体的には、動物に抗原とともに投与することにより、免疫応答を起こしにくい抗原や自己抗原に対する抗体産生や細胞性免疫応答を起こしたり、特定クラスの抗体の産生誘導に利用されます。簡単に言えば、黄砂(特にSiO2などの成分)に大気汚染物質が付着することで、アレルゲンの作用を強く助長するのではないか、と指摘されています。

環境省の黄砂問題検討会中間報告書によれば、韓国では、65 歳以上の高齢者の死亡率が黄砂現象期間に2.2%増加し、特に心臓血管系疾患及び気管支疾患が原因の死亡率が4.1%高くなったという疫学調査報告があるようです。

呼吸器疾患で問題となり、頻度が比較的高いものとして気管支喘息、慢性気管支炎などがあり、以下のような関連があります。
喘息とは、アレルギー反応や細菌・ウイルス感染などが発端となった気管支の炎症が慢性化することで、気道過敏性の亢進、可逆性の気道狭窄をおこし、発作的な喘鳴、咳などの症状をきたす呼吸器疾患です。

環境刺激因子(アレルゲンと呼ばれ、大気汚染も含まれディーゼル粒子なども)、寒気、運動、ストレスなどの種々の刺激が引き金となり、これらに対する過敏反応として、気管支平滑筋、気道粘膜の浮腫、気道分泌亢進などにより気道の狭窄・閉塞が起こります。気道狭窄によって、喘鳴、息切れ、咳などの症状が起こってきます。

こうした障害を起こす物質としては、
・イオウ酸化物(SOx)
なかでもSO2やSO3が多い。石炭や石油の燃焼により発生し、気道内に入って強い酸性となって気道粘膜を障害する。
・窒素酸化物(NOx)
主な物質はNOやNO2であり、光化学スモッグの原因の一つで、オキシダントを形成して人体に障害を与える。石炭の煤煙や自動車の排気ガス中に存在し、気道内で亜硝酸や硝酸となって気道粘膜や肺胞を障害する。
・一酸化炭素(CO)　
自動車の排気ガスやタバコの煙に含まれる。血液中でヘモグロビンと結合し、CO-Hbとなり、障害の一因となる。

こうした物質が呼吸障害の原因となり、息切れや労作時呼吸困難が主症状となって、せきや痰ってきます。低酸素血症から高炭酸ガス血症になることがあり、進行すると肺性心となってCO2ナルコーシスで死亡することもあります。

国内にも飛来してきており、決して看過できる問題ではないと思われます。黄砂の情報をしっかりと共有し、健康被害が起こらないようにすることが重要であると思われます。

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