以下は、ザ!世界仰天ニュースで扱われていた内容です。

1997年アメリカ・テネシー州ノックスヴィル。この街で体重3,800gのちょっと大きめのジェシカが誕生した。ジェシカの両親は、ともに100Kgを越していた。夫婦は10年にも渡って不妊治療を続け、ようやくジェシカを授かった。

ジェシカは、他の赤ちゃんと比べて、とにかくよくミルクを欲しがった。母乳では足りず、ミルクを与えれば与えるだけ飲み干した。検診で医者に、しっかり量を守って、規則正しく与えてくださいと忠告されても、ジェシカの欲しがるままミルクを与えてしまった。 

そんなある日、父親が何者かに殺害されてしまった。突然襲い掛かった不幸に、母親はひどく落ち込んだ。そんな心を癒してくれるのは娘のジェシカだった。母親は、ジェシカが嬉しそうに食べる顔を見ただけで、淋しさがいっぺんに吹き飛んだ。その笑顔が見たくて、毎日何食も食べさせた。

生まれた時はほとんど標準体重だったジェシカは、あっという間に3歳で77Kgになってしまった(平均体重は15Kg)。4歳の時には100Kgを突破し、5歳では121Kgになり、毎年30Kg近く増え続けた。ジェシカは2時間おきに食事を取り、1日の摂取カロリーは1万Kcalを越えていた(成人男性のおよそ5倍)。

ジェシカの体はいくつもの病気を抱え、肥満治療の専門医によると「彼女の場合、脂肪が心臓と肺を圧迫しているのは明らかで、さらに糖尿病の疑いもあります。あまりにも重い体重のため運動も出来ないので、一刻も早く減量をしないと大変危険な状態です」とのこと。

医師からの強い指示もあって、母親はジェシカにダイエットをさせることにした。母親もジェシカを痩せさせたいとは思っていたが、娘に嫌われたくないと、結局、ジェシカに厳しくなれず、ダイエットは失敗した。結果、運動も全くせず1日7食の生活を続け、体重は増え続けた。

食べ続ける彼女の体重は、200Kg近くにまでなった。医師からは「このままだと生きられない、死も間近だ」と宣告された。さらに、自分の体重が支えきれず、足の骨が歪み、満足に歩けなくなった。それでもジェシカは2時間おきに食べ続け、母親は食べ物を与え続けた。重過ぎる体重と歪んだ足のせいで、助けがなくては動くこともままならない状態になった。

2005年10月、ジェシカは呼吸困難になり、イーストテネシー小児科病院に緊急搬送された。少女は心臓も弱って、まさに瀕死の状態だった。ようやく母親は、娘に食べ物を与えすぎていたことを反省した。ジェシカは母親と離れ、バージニア州の肥満治療クリニックでダイエットを始めた。

歩く事さえままならないジェシカに、まずは息が切れないように歩く事から始め、そして徹底的な食事改善が図られた。数週間後、家に戻り、今度は専属トレーナーが来て、徹底的な運動トレーニングが行われた。しかし、食事療法はなかなかうまくいかない。甘えが出てしまうのだ。ジェシカはまだ8歳であり、自分がどういう状況に置かれているのか、本当には理解できないまま、苦しいダイエットをしなければならなかった。

懸命のダイエットは1年半も続き、約50Kgになった。食事はフルーツが中心となった。着る物もこんなに違う。スリムになったジェシカだが、足の骨が曲がってしまったため歩き方はぎこちない。専門家によると、一度曲がってしまった骨は治すことは難しい。しかし、まだまだ成長期のジェシカは手術をすれば曲がった骨を治すことは可能だという。ジェシカは今も懸命のトレーニングを続けている。同年代の子供のスピードにはまだまだついていけないが、それでも以前と比べるとかなり動けるようになった。

今の悩みは、余ってしまった9Kgの皮膚。いずれ体重が安定してきたら、手術して取り除く予定だという。ジェシカは、大きく変化した自分の今の生活が、楽しくて仕方ないようだ。何より外で自由に遊べることが嬉しい。痩せたジェシカは、おしゃれにも目覚めた。いろんな洋服を着られるようになった。


「肥満」とは、脂肪組織が過剰に蓄積した状態であるといえると思われます。一般的には、エネルギー出納のアンバランスによって、体に過剰な脂肪が蓄積した状態、ということができると思われます。

小児の肥満のほとんどは、エネルギーの過剰摂取などが原因の単純性肥満であるといわれています。一方、ホルモン異常や遺伝性、中枢神経疾患などが原因となる症候性肥満となることもあり、十分な鑑別が必要となります。また、単純性肥満の場合でも、小児期から高血圧、耐糖能異常、血清脂質異常、脂肪肝、睡眠時無呼吸症候群などを合併する場合があります。

小児肥満症の診断基準としては、以下のようなものがあります。
肥満児の判定
18歳未満の小児で肥満度が20%以上、かつ有意に体脂肪率が増加した状態。
体脂肪率の基準値は以下のとおりである(測定法を問わない)
・男児(小児期全般):25%
・女児11歳未満:30%,11歳以上:35%

肥満症の定義
肥満症とは肥満に起因ないし関連する健康障害(医学的異常)を合併する場合で、医学的に肥満を軽減する治療を必要とする病態をいい、疾患単位として取り扱う。

肥満症の診断
5歳0カ月以降の肥満児で下記のいずれかの条件を満たすもの
 A項目を1つ以上有するもの.
 肥満度が50%以上でB項目の1つ以上有するもの.
 肥満度が50%未満でB項目の2つ以上有するもの.
A.肥満治療が特に必要となる医学的問題
 高血圧
 睡眠時無呼吸など肺換気障害
 2型糖尿病,耐糖能障害(HbA1cの異常な上昇)
 腹囲増加または臍部CTで内臓脂肪蓄積
B.肥満と関連の深い代謝異常など
 肝機能障害(ALTの異常値)
 高インスリン血症
 高コレステロール血症
 高中性脂肪血症
 低HDLコレステロール血症
 黒色表皮症
 高尿酸血症
(肝障害の場合は超音波検査で脂肪肝を確認する,TGとIRIは早朝空腹時採血)

肥満度を下げても改善がない場合は、これらの所見は肥満によるとは考えない。

まず治療や診断に先んじて、肥満の原因が食事や運動不足、あるいは両方のいずれであるかの認識の有無が重要です。

一般的に言って、ご両親が「自分は、太りやすい体質なんです」もしくは、「子どもは、特別に肥満しやすい体質」と仰る場合があります。たしかに、いわゆる「倹約遺伝子」をもつ人では、消費エネルギーが200〜300kcal少ないと言われていますが、食事内容などを聴くと,やはり摂取カロリーの過剰が判明することが多いようです。

こうした事柄を確認し、さっそく食事の改善や運動といった指導が始まるわけですが、肥満外来治療の現状として40%が脱落という現状があります。そこで、医療スタッフやご両親が協力し、たとえ悪化していても、外来受診した時に、まずは子どもを褒める、といった態度が重要になるようです。特に、自己評価が低いなど心理面での問題があることが多く、そうしたことを支えることも重要となります。

具体的な治療としては、以下のようなものがあります。
まずは食事療法が重要となります。所要エネルギーを、男児:1,000+年齢×100kcal、女児:1,000+(年齢−1)×100kcalとします。栄養の組成としては、糖質50%、脂質30%、蛋白質20%を提示し、バランスの良い食事を心がけます。ただ、中には好き嫌いが激しく、難渋することが多いですが、数か月ごとに食べられる野菜などを1品ずつ増やすような進め方が必要になります。

こうした食事療法を進める一方で、運動療法も行います。激しい運動ではなく、有酸素運動が有効です。それにも増して、部屋の掃除をする。食器を運ぶ。洗濯物を運ぶ…など、自分の身のまわりのことを自分でして、体を動かす習慣を少しずつ続けていくことが重要となります。

やはり周囲が一方的に治療するように言っても、継続は難しいものです。食事・運動療法の必要性を十分に説明し、本人の納得できる範囲で徐々に開始していき、小さな目標達成ができたら褒める、といったことで少しずつ治療を進めていく必要があります。

上記のケースでも、カロリーの高い食事を頻回に摂っていたなど、食生活に大きな問題がありました。どうしても子供が「食べたい」といったら食事を与えたくなるものですが、好きなだけ食べさせるのだけが愛情ではない、としっかりと認識すべきであったと思われます。

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