糖尿病は多くの合併症を起こしやすく、特に血糖値の管理が十分にできていない場合はその危険が大きい。
 
糖尿病神経障害(ニューロパシー)になると、神経が身体のほかの部位に信号を送ることが困難になる。下記の症状については、早急に医師の診察を受ける必要がある。

米国家庭医学会(AAFP)は、糖尿病による神経障害の危険信号として以下のものを挙げている:
・しびれ感、特に指先やつま先に生じるもの
・鋭い痛み、刺激感
・足のひりひりする痛み
・筋力の低下
・身体のいたるところに生じる灼熱感
・男性の勃起不全(ED)

(糖尿病神経障害の症状)


糖尿病とは、インスリンの絶対的もしくは相対的不足により引き起こされる、持続的な高血糖状態を指します。自己免疫的機序により発症する1型糖尿病と、それ以外の原因による2型糖尿病に大別できます。

1998年の厚生省による全国調査では、糖尿病患者数は690万人であり、40歳以上では10人に1人が糖尿病である計算になります。いわば国民病ともなった病気です。最近では、糖尿病性腎症により慢性腎不全に陥り、血液透析導入のトップになっています。

2型糖尿病とは、生活習慣が大きく関わっており、慢性的な高血糖状態やインスリン抵抗性(インスリンが多く分泌されていても、効かない状態)により、相対的なインスリン不足状態を指します(分泌自体はあっても、作用が追いつかない状態)。その後、インスリン分泌不全も起こってくる可能性があります。

糖尿病患者の90〜95%は2型糖尿病に属しています。こちらは、遺伝的素因に加齢、過食、肥満、運動不足やストレスなどの環境因子が後天的に加わって発症する疾患です。

原因としては、遺伝的因子と環境的因子の両方がいわれています。多因子遺伝疾患と考えられており、現在は多数の候補遺伝子が報告されています。環境因子としては、肥満、過食、ストレス、薬剤、ウイルス感染などがあります。

症状としては、高血糖により口渇、多飲、多尿、脱水を生じ、重症例では昏睡などの意識障害をきたします。インスリン作用の不足により、体重減少、筋萎縮などをきたすこともあります。

いわゆる3大合併症としては、糖尿病網膜症による視力障害(失明に至ることも)、末梢神経障害(ニューロパチー)による知覚障害や自律神経障害、糖尿病性腎症による浮腫、腎不全などが起こりえます。

糖尿病神経障害とは、以下のように説明できると思われます。
糖尿病神経障害とは、糖尿病患者において認められる末梢神経の変性と、それに伴う機能異常を指します。

症状としては、上記の様に知覚神経の障害によると考えられるしびれ感や自発痛、アキレス腱反射消失が両側性および遠位優位に認められます。また、自律神経障害による起立性低血圧、発汗異常なども認められることがあります。

原因としては、神経栄養血管の障害が関与しているといわれています。神経病変(軸索変性,節性脱髄)と、内鞘血管異常(内腔狭窄)からなります。神経病変は、高血糖による代謝障害と血管障害が原因で、内鞘血管異常は局所的な栄養血管の血行障害に基づくといわれています。

糖尿病に5年以上罹患して、上記の症状が出現すれば可能性は高いと考えられます。末梢神経障害では、下肢の振動覚低下やアキレス腱反射低下が早期から認められます。

自律神経障害としては、心拍の呼吸性変動の減少(主に副交感神経障害による)、起立したときの血圧変化(収縮期血圧30mmHg以上または拡張期血圧15mmHg以上の血圧降下は異常)などがみられます。

治療としては、血糖コントロールが基本であり、これにアルドース還元酵素阻害薬、ビタミンB12補充、神経内血行障害に対して血管拡張作用薬や血小板凝集抑制薬(PGE1 製剤など)を使用します。

糖尿病神経障害は、糖尿病性壊疽の原因ともなり、場合によっては下肢や指などを切断せざるをえないこともあります。しっかりと治療し、予防することが重要となります。

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