以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

今から7年前、突然病に倒れた徳光和夫さん。病気とは全く無縁だった彼を死の淵に立たせたのは、毎年約25万人がその病で倒れ、そのうち4万人が亡くなっている重大な病、心筋梗塞でした。

当時、週に6本のレギュラー番組を抱えていた彼は、休みはほとんどなく、収録が終っても別の打ち合せで仕事が深夜に及ぶこともしばしば。さらにストレス解消法として、徹夜で麻雀をし、タバコは1日に100本以上。毎日の睡眠時間は4〜5時間。美味しいものには目がなく、魚の肝や魚卵など脂っこいものが大好きという生活を送っていました。

そんなある日、ゴルフを終え、夕食をとりながら仕事の打ち合せをしていた徳光さん。しかしなぜか食事が美味しく感じられず、胃の辺りに、えも言われぬ不快感を覚え始めます。

本人はその異変を食事が合わなかっただけと思っていましたが、症状はますますひどくなっていきました。 具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)胃の不快感
胃の辺りがムカムカし、痛みとも気持ち悪さとも言い難い不快感がありました。ですが、「単に食事が合わなかっただけ」と思い、病院には行きませんでした。

2)吐き気
上記の心窩部(みぞおち)辺りの不快感に加え、吐き気が襲ってきました。

3)大量の発汗
暑いわけでもないのに大量の汗をかき、じっとりとした冷や汗のようなものが止まりませんでした。

4)衰弱して立ち上がれない
上記のような症状が続き、ついには衰弱して立ち上がれない状態になってしまいました。症状が、病院に運ばれるまでもずっと続いていました。

こうした症状が現れ、病院に救急搬送されることになった徳光さん。発症からすでに、16時間が経過していました。

病院で検査を受け、診断されたのは以下のようなものでした。
心窩部の不快感、胸痛、冷や汗などから担当医が心筋梗塞を疑い、心電図をとりました。するとやはり、その所見からも心筋梗塞であると判明しました。結果、すぐに手術が行われ、事無きを得たようです。

徳光さんの場合、右冠動脈に梗塞が起こっており、心臓の約4割に血が通っていない状態だったそうです。

心筋梗塞は、心臓が栄養としている冠動脈の血流量が下がり、心筋が虚血状態になり壊死してしまった状態です。冠動脈の閉塞または高度の狭窄により、血行障害をきたし、心筋虚血が一定時間持続した結果、心筋細胞が壊死に陥ってしまうわけです。

冠動脈が閉塞する原因としては、やはり冠動脈の粥状動脈硬化(アテローム硬化)による狭窄が基礎にあります。粥状動脈硬化(アテローム硬化)とは、脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、粥状のかたまりができて血管内が細くなった状態です。

ですので、やはり脂っこい食事が多いなど、高脂血症の要因があると心筋梗塞を起こしやすいと考えられます。喫煙や高コレステロール血症(特に高LDLコレステロール血症)、糖尿病や高血圧であるといわれています。

日本では心筋梗塞は欧米と比較して少なかったですが、食習慣や生活様式の西欧化や社会生活におけるストレスの増加、人口の高齢化などに伴って近年増加しています。

心筋梗塞では、その粥腫が破裂し、引き続いて血栓が生じて閉塞に至るものが大部分であると言われています。具体的には、冠動脈内膜下に形成された粥腫が破綻→血小板が凝集→冠動脈に血栓が形成される→冠動脈内腔の完全閉塞→心筋の壊死、という流れが考えられています。

特徴的な症状としては、狭心痛(胸が締め付けられるような痛み)を生じます。「痛い」よりも「胸が苦しい」「重い感じがする」など、締め付けられる(絞扼感)を訴えることが多いといわれています。

通常、狭心症では胸痛の持続時間は数分程度でおさまりますが、安静にしていても30分以上胸痛の持続する場合は急性心筋梗塞を疑います。左肩や顎への放散痛(肩こりと間違われることも)は特徴的といわれています。

上記のように、胸の痛みが胃の不快感として感じられることがあります。これは、関連痛といいます。関連痛とは、疾患のある臓器以外の部位に出現する痛みのことです。

簡単に言ってしまえば胃の痛みを中枢へと伝える神経と、心臓の痛みを伝える神経が近い位置にあるため、誤って「胃の痛み・不快感」として伝えられてしまった状態です(共通の神経で痛覚が脳へ伝達されるために起こると考えられている)。

ちなみに、狭心症(心臓の痛み)の際に左腕痛が起こったり、胆嚢炎(胆嚢はみぞおちに存在)の時の背部痛などがあります。また、高齢者の方や糖尿病患者の方はこうした痛みを感じにくかったりします。その結果、放置してしまうケースもあります。

診断としては、上記のような臨床症状がみられたり、心電図で連続する2誘導以上でST上昇、またはST低下(非ST上昇型)を示し、数時間後にはQ波の出現、あるいは非Q波梗塞ではR波の減高がみられます。数日で冠性T波の出現をみることもあります。

血液生化学的検査では、白血球の増加は特異性がないが発症早期からみられ、その程度は重症度や予後と関連するといわれています。最近では、心筋特異性が高いトロポニンT・トロポニンI・ミオシン軽鎖も用いられています。

心エコーも有用であり、収縮低下を確認することがほかの疾患との鑑別に有用であったり、他の合併症の有無も判断できます。冠動脈造影は、虚血性心疾患の確定診断には非常に重要となりますが、侵襲性が高いといった難点もあります。

治療法としては、まずは対症療法中心に行いつつ病状の安定を図り、合併症の発生を厳重に管理します。通常は、アスピリン内服、酸素吸入、輸液、硝酸薬などを中心に行います。

発症6時間以内の心筋梗塞の場合、積極的に閉塞した冠動脈の再灌流療法を行うことで、心筋の壊死範囲を縮小可能であるといわれています。

カテーテル的治療(PTCA, PCI)を行う場合や、血栓溶解療法(PTCR)、狭窄部位が3つ以上であった場合などに、緊急冠動脈大動脈バイパス移植術 (CABG) が行われる施設もあります。

経皮的冠動脈形成術(PTCA:percutaneous transluminal coronary angioplasty)とは、心臓を栄養する血管である冠動脈の閉塞した箇所にカテーテルを用いて、バルーン(風船)を拡張して狭くなった冠動脈を拡げる手術です。

PTCAは約3分の1の割合で、再狭窄が数か月後に起こるのが欠点の1つとして挙げられていましたが、最近ではステントと呼ばれる小さなメッシュ状の金属チューブを動脈壁に留置することが行われています。これにより、再狭窄を少なくすることができると考えられます。ステントによって、再狭窄率は15%前後にまで低減することができたと言われています。

治療のかいもあり、元気に仕事を続けられていて何よりです。やはり、仕事のしすぎや食生活の大切さが重要であり、高脂血症を指摘されている人は十分にお気を付け下さい。

【関連記事】
本当は怖い家庭の医学 症例集

開腹せずに大動脈瘤を治す最新治療−ステントグラフト手術