睡眠が長すぎても短すぎても糖尿病になりやすく、1日5時間未満では肥満になる確率が高いなど、睡眠と生活習慣病が関連するとの研究結果を兼板佳孝日本大講師(公衆衛生学)らがまとめ、12日、発表した。

睡眠時間が短い人と長い人は死亡の危険が高いことは知られているが、生活習慣病の予防にも健やかな眠りが重要なことを示した形だ。兼板講師らは、地域の健診データ(約1000人)や職場の健診データ(約2万2000人)などを分析。

糖尿病は、睡眠が6時間以上8時間未満で最も少なく、6時間未満や8時間以上だとその3−5倍だった。

男性勤務者を対象にした継続調査では、睡眠5時間未満の人は、7年後に肥満になる危険性が5時間以上の人の1.2倍になり、糖尿病などの生活習慣病にもなりやすかった。また太った人は、7年後に睡眠が5時間未満になる確率が太っていない人の1.2倍だった。

動脈硬化の原因となる脂質代謝異常は、成人女性の場合、睡眠6時間以上7時間未満が最も少なく、5時間未満か8時間以上で多かった。

厚生労働省の国民健康・栄養調査では、欠食や外食が多く、ストレスを感じる人ほど睡眠時間が短い傾向にあった。兼板講師は「寝不足だとホルモンバランスが崩れて食欲が高まり、生活習慣病になりやすいのではないか。健康づくり運動には睡眠の指導も重要だ」と話している。
(寝過ぎでも、寝不足でも糖尿病 では何時間なら?)


上記のデータからは、睡眠時間が6〜8時間というのが生活習慣病予防にはいいのではないか、といったことのようです。睡眠時間が短すぎても、長すぎてもダメ、ということ。

こうした生活習慣と疾患とを結びつける疫学調査では、「夜間勤務が発癌リスクを増大させる可能性がある」というものが最近発表されています。疫学データでは、看護師、航空機の客室乗務員など交代制勤務を行うさまざまな職種で、乳癌リスクが高いことが最も強く示されており、次いで前立腺癌、大腸(結腸)癌のリスク増大も認められているそうです。

これは、発癌リスクを評価する世界保健機関(WHO)所属組織である国際癌研究機関(IARC)による結論で、IARCは夜間勤務を「発癌性がおそらくある因子(probable carcinogen)」として正式にリストに加えることを予定しているそうです。

夜間勤務と癌の発症率増大とを結びつける生物学的メカニズムについては、夜間に光を浴びることによるメラトニン分泌量の減少が関わっているとする説が最も有力。メラトニンは脳の松果体から分泌されるホルモンで、夜間、暗いときに作られます。さまざまな生理学的システムに作用し、癌抑制遺伝子を含む免疫系にも影響を及ぼしている可能性がある、とのこと。

また、「不眠症の影響は、その人の睡眠習慣により異なる」というものがあります。夜更かしすることが多い人は、早寝を好む人より不眠症のもたらす身体的、精神的苦痛が大きく、また、全体的な睡眠時間は比較的多いにもかかわらず、不眠症に対するストレスの強いことが、スタンフォード大学の睡眠障害クリニックによる研究で明らかになっています。

この研究は、不眠症患者312人を対象に行ったもので、夜更かし群は、早起き群や中間群に比較して、睡眠時間帯にベッドにいない時間が長く、より睡眠不足を感じることが明らかになっています。また、就寝起床習慣に一貫性がなく、不眠症による抑うつ気分やストレスが強かった、とのことです。

こうした睡眠に関する障害が、体にさまざまな影響を与えているといったことが考えられます。睡眠障害に関しては、具体的には以下のようなものがあります。
不眠症とは、平常時と比較して睡眠時間が短くなり、身体や精神に不調が現れる病気です。日本では、およそ5人に1人が悩んでいると言われ、頻度の高い訴えの1つです。睡眠障害の一種で、下記のように4タイプに分かれます。
入眠障害:寝つきが悪く、なかなか眠れない。
中途覚醒:朝起きる時間までに、何度も目が覚める。中高年に多い。
早朝覚醒:朝早く目覚めてしまい、再度眠ることが出来ない。
熟眠障害:十分に睡眠時間はとっているが、眠りが浅く熟眠感が得られない。

臨床的には、これらの組み合わせで不眠が訴えられることも多いようです。

原因としては、身体疾患や身体疾患治療薬によって誘発される不眠症、精神疾患に伴う不眠症、アルコールや睡眠薬乱用などによる不眠症などがあります。中には、睡眠時無呼吸症候群や周期性四肢運動障害、むずむず脚症候群、致死性家族性不眠症などの特殊な不眠症が明らかになってきています。

多いのは精神疾患や、各種身体疾患の順で多いです。うつ病の早朝覚醒や熟眠感の欠如は、うつ病の部分症状としてよく知られています。

実は不眠症の中に、うつ病などの病気が背景に隠されている恐れがあります。うつ病では、中途覚醒が特徴的で、何度も夜中に起きてしまう、といった方や、心配事が気になって眠っていられない、といったことがある方は、ご注意下さい。

診断では問診が重要であり、健康なときの睡眠パターンと睡眠病歴、睡眠環境、心理的ストレスやライフイベント(近しい人が亡くなったなど)、昼間覚醒時のパフォーマンス(日中眠くて仕方がないなど)、合併する身体疾患と常用薬物、飲酒習慣、肥満度、不安関連症状、抑うつ関連症状など、多くの項目を調べていくことが重要となります。

その後、自記式質問紙の回答や睡眠日誌などをつけることも重要です。身体疾患に伴う睡眠障害を除外するため、一般的な血液検査や、睡眠状態の評価をするため、終夜睡眠ポリグラフィ、体温リズムの評価などが行われることもあります。

治療としては、睡眠薬(ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系薬剤)の処方などが行われますが、睡眠障害のタイプの違いによって、作用時間の異なるもの(超短時間型,短時間型,中間型,長時間型)を使い分けます。他にも、抗うつ薬や不眠に対する不安や緊張が強い場合には精神療法を行う必要がある場合もあります。

不眠で悩まれている方は、一度、精神科などを訪れてみてはいかがでしょうか。

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