以下は、ザ!世界仰天ニュースで取り上げられていた内容です。

大阪に住む道坂さん、あるアレルギーのおかげで一生の宝物を得たという。それは19年前、当時、高校の陸上部に所属していた道坂さんは、同じ陸上部のエース宮崎キヨさんに思いを寄せていた。一目ぼれ…しかしその可愛さゆえ、ライバルも多かった。奥手だった道坂さんは声もかけられず、遠くから見つめるだけ…それから一年…2年生になった彼は玉砕覚悟で告白を決意!ちょっと、話したいことがあるからと、放課後に宮崎さんを呼び出した。「付き合ってくれないか」と当たって砕けろ!と、ストレートに気持ちを伝えた告白。

緊張の一瞬…すると、彼女は…「道坂くん、後ろ向いてくれる」と、道坂さんの背中にシャツの上から指でなぞって何かを書いた。そして「じゃあね」と、彼女は何も答えず、そしてそのまま走って帰ってしまった。これってどういう事?すると道坂さんは、何やらトイレに駆け込みいきなり上着を脱ぎはじめた。その背中を見ると、なんと、「スキ」の2文字が!!

一体なぜ道坂さんの背中は指で軽くなぞるだけで文字が浮き出たのか?これが彼のアレルギー症状だった。普段から、陸上部の仲間がこうして背中を指でこすると…なんと触ったところがアレルギー反応を起こし毛細血管が膨張。このように文字が浮かびあがってしまうのだ。それを宮崎さんも知っていた。だから、それを利用して返事をしたのであった。

実はこれ世界的に見ても稀なアレルギーの一種。一見痛々しく見えるが、本人は痛くも痒くもないのだという。指で背中を軽くなぞっただけで、まるで文字のように浮かび上がってくる。その病名は!「圧迫蕁麻疹」。肌に何かがちょっとかすっただけでも免疫システムが過剰に反応し、その結果、毛細血管が膨張、触れた部分が浮き上がってしまうのだ。

口に出すには抵抗のあった告白の返事が、こんな形で気持ちが伝わり、2人は付き合うことに…。それからも敏感な肌が大活躍する。陸上の試合の前には…背中に応援メッセージ。回りくどいが、これが2人の愛情表現。成績優秀だった道坂さん。東京の大学も考えたが、あえて地元の大学に彼女と一緒に進学!しかし、何もかも順調だった訳ではなく、喧嘩もしばしば。別れの危機もあったが、あのアレルギーが二人を救った。そして1996年、交際から6年。晴れて結婚。そして二児を授かった。

仰天ニュースに投稿をもらい、現在の道坂さん一家を取材。腕、足、お腹、そして額…道坂さんの体は、どこでもなぞると文字が浮き出てくるという。痛みや痒みは全くないが、見た目のインパクトゆえに初めて見た人は必ず驚くという。日常生活では、体を洗うため肌をゴシゴシやると、全身真っ赤になってしまう。

もちろん、彼の両親、彼の子供のたちでこの症状を持つものはいない。「付き合うきっかけといい、仲直りのきっかけといい、ありがたいですね。」と話す奥さんと「高校の時でも大学の時でも色んな言葉を書いてくれたんで、ひとつのコミュニュケーションをとれる。ひとつの手段だったんじゃないかなと思います。」という前向きな道坂さん。不思議なアレルギーは2人素敵な幸せをもたらした。


蕁麻疹とは、一過性にかゆみをともない、限局性の膨疹(皮膚の一部に扁平な盛り上がりが生じた状態)と紅斑(血管が拡張し、赤くなった状態)が生じる皮膚疾患のことを指します。

蕁麻疹は、アレルギー性あるいは非アレルギー性に、肥満細胞から遊離されたヒスタミン(あるいはヒスタミン類似物質)により生じると考えられています。

アレルギーの原因となるアレルゲンが存在し(物理性蕁麻疹など、アレルギーを介さないものは存在しない)、IgE抗体を介して肥満細胞(炎症や免疫反応などの生体防御機構に重要な役割を持つ細胞)が刺激され、ヒスタミンが放出されます。その結果、ヒスタミンなどの化学伝達物質により、局所的に皮膚の微小血管から血漿成分(血液の血球以外の液体部分)が漏れ出します。このことにより、膨疹が生じると考えられています。

原因は食物、薬剤、吸入抗原、感染、内臓疾患、物理的刺激、精神的ストレスなど多岐にわたります。その原因により、
物理性蕁麻疹
圧迫蕁麻疹、温熱あるいは寒冷蕁麻疹、コリン性蕁麻疹、人工蕁麻疹、日光蕁麻疹、振動蕁麻疹など
食事性蕁麻疹
薬物性蕁麻疹
接触蕁麻疹
水性蕁麻疹
血管神経性浮腫

などに分類されます。ただ、蕁麻疹はその詳細な検査にもかかわらず、90%程度が原因が特定できないといわれています。原因が明らかな場合、上記のような原因名をつけて言われます。

中でも、物理的な刺激が加わることで生じる皮疹で、30分〜1時間といった短時間で消えるものを物理性蕁麻疹といいます。このうち、皮膚を機械的にこすった後に生じるものを人工蕁麻疹(機械性蕁麻疹)といいます。

上記では圧迫性蕁麻疹と書かれていますが、医学大辞典による定義では圧迫蕁麻疹の場合、
持続的な圧迫刺激を受けた部位に2〜8時間後に生じる原因不明,深在性の蕁麻疹。手掌,足底などにみられ,時に痛みを伴う。
とあります。また、人工蕁麻疹の場合、
圧迫や摩擦など機械的刺激が加わった部位に一致して生じる蕁麻疹。擦過部位に膨疹を生じる皮膚描記症がみられる。
とあります。この定義を比較すると、どちらかといえば人工蕁麻疹と称する方が正しいのではないか、と考えられます。

ちなみに、「文字が書ける」と背中に指などで書いていましたが、同様のことが皮膚科では皮膚描記症と呼ばれる検査で行われます。具体的には、以下のようなものを指します。
皮膚描記症とは、棒ようなものの尖端で皮膚を軽く擦過した後、その皮膚の変化を観察する診断法のことです。

上記のように人工(機械性)蕁麻疹の患者さんでは、三重反応として知られる反応が現れます。三重反応とは、
?3〜15秒で紅色の線条を生じる。
?次いで、軸索反射による周辺の徴候から膨疹(隆起性皮膚描記症)に変化する。
?さらに、
・アトピー性皮膚炎→擦過部が白色に変化(白色皮膚描記症)
・色素性蕁麻疹→皮疹部に顕著な膨疹がみられる(ダリエー徴候)

こうした反応が現れることをいいます。人工蕁麻疹では、?までの変化が生じてきます。

刺激の与え方には、診察医の爪やボールペンの反対側、打診槌の柄を用いるなどさまざまな方法があります。ですが、つねにほぼ一定の刺激を加える必要があります。人工(機械性)蕁麻疹では陽性となりますが、他の蕁麻疹や健常人でも陽性となることがあります。

同様の症状を現した女性が画家となり、この体質を利用して絵を描いているというニュースがありました。このように、特異的な体質をコンプレックスと思わず、誇りに思えるような発想の転換が、人生を豊かにしてくれるのではないか、と思わされたニュースでした。

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