以下は、ザ!世界仰天ニュースで扱われていた内容です。

東京に住む上杉直樹さん。彼を悩ませたのは世にも不思議なアレルギー症状だった。今から3年前、上杉さんは親元を離れ、大学院に通いながら司法試験合格を目指していた。体を動かすことが好きだったため、昼間は工事現場のアルバイトで汗を流していた。彼は仲間たちもあきれるほどの大食漢。26歳まで病気一つ知らず。しかも子供の頃から、アレルギーとは全く無縁、スポーツ万能の超健康優良児だった。ところが、上杉さん26歳の時、突如体に異変が起こった。

大学時代の友人と久しぶりに再会した時だった。かなり奮発しフレンチのフルコースを堪能した。メインメニューはスモークサーモンのキャビアのせであり、贅沢気分を満喫した。その帰り、電車にも間に合うようにと走って友人と別れ、無事、家に戻った。ところがそこで左目に、何か違和感があった。鏡に映った顔には、赤い斑点が生じていた。顔だけではなく、両腕、腹部、そして全身にも蕁麻疹が現れた。こんなことは生まれて初めてで、すぐに病院で診てもらうことになった。

医師に症状が出る前に何を食べたかを聞かれた。キャビアやサーモンなどを食べた、と医師に伝えたところ、恐らく、生ものに当たったのだろうと告げられた。

蕁麻疹はすぐに治り、数日後、自宅で彼女と食事。その日は、彼女からピザの差し入れ。この前のアレルギー症状のことなどすっかり忘れ、あっという間に完食した。そして、洗い物を始めた彼女の近くで、腹筋運動をしていると、この前と同じ症状が現れた。医師にまた食べ物を聞かれ、エビなどの魚介類がのっていたピザを食べたと答えた。医師は、魚介アレルギーの疑いがあるので、一度専門の皮膚科でちゃんと診てもらったほうがいいと言われた。

だが、健康には自信のあった彼は魚介類さえ食べなければ大丈夫と勝手に判断した。ところが、その症状は三度、上杉さんを襲った。その日は大学院の友人とスポーツバーでサッカー観戦し、その後に豚骨ベースのこってりラーメンを食べた。帰り道、テレビで見たプレーの真似事をし、はしゃいでいると、またあの症状が現れた。魚介類を食べていないのに蕁麻疹が出てきたのだ。

ようやく専門医に行くと、まず皮膚テストによるアレルギー検査が行われた。対象となった食物は30種類を超え、その結果、上杉さんのアレルギーの原因がおそらく小麦だということがわかった。

小麦なら毎日のように食べていたが症状は時々しか出ていない、と思ったが、「医師は疲労が重なり、免疫力が低下している時に小麦に反応したのでは?」と見解を示した。

「これからは小麦は一切食べてはいけないんですか?」という上杉さんの問いに医師は、「上杉さんの場合は体調が良くないときは要注意ですが、規則正しい生活さえしてれば、小麦を食べてもかまいません」と答えた。

小麦を本当に食べられないのか?白黒はっきりさせたかったため、上杉さんはもしもの時のために携帯電話をスタンバイし、パンを食べた。試験勉強で少し疲れた状態だったが、1時間が経過しても何とも無かった。医師の言っていた通り、極度に疲れていなければ小麦は食べても大丈夫なんだ、と上杉さんは喜んだ。

その2ヶ月後、上杉さんは仲間とフットサルをすることになった。試合前に、腹ごしらえのカレーパンを食べた。前日にバイトもなく、体調は万全。準備運動がてら走ってグラウンドへ向かった。そこで蕁麻疹に加え、呼吸困難などの今までにない激しい症状が起こった。

駆けつけた救急車によって運ばれたのは、慶応病院。何とか一命をとりとめ、「食物依存性運動誘発アナフィラキシー」だと思われると診断された。この病気は小麦を食べて運動すると発症するのが特徴で、なんと、小麦と運動で発症する。

通常の食物アレルギーは食べた事でアレルギー症状が出るのに対し、上杉さんのアレルギーは「食物+運動」の組み合わせの時だけ発症する珍しいもの。小麦を食べて安静にしていれば、アレルギーを引き起こす小麦アレルゲンは消化され、その性質を失う。しかし、運動により消化活動が低下すると、小麦アレルゲンが消化されないまま小腸まで運ばれ、血液中に吸収される。それにより発症すると考えられている。血液中の小麦アレルゲン濃度が高まると、全身に蕁麻疹、血圧低下、重症の場合は、死に至ることもある。

そして、去年の9月、横浜市立大学附属病院で検査が行われた。その検査とは、あえて小麦を食べ、運動するとういうもの小麦をフライパンで薄く焼いたものを食べたのち、トレッドミルと呼ばれる機器に乗って運動するというもの。できるだけ負担が少ない最小限の症状を起こして調べる方法だった。小麦の量を少しずつ増やしていき、どれくらいで蕁麻疹などの症状が出るかどうかを調べる。そして、運動との組み合わせで確かに発症した。

上杉さんを診断したこの病気に詳しい猪又医師は「この病気の原因となる食物は約60%が小麦で圧倒的に多く見られます。ついで、エビ・イカ・カニなどが多いのですが、最近では果物やナッツ類なども報告されています」

現在、上杉さんの外食は小麦の含まれていないお寿司が専らとなり、いつ症状が出てもいいようにアドレナリン自己注射を24時間、携帯しているという。幸い、その後は一度も発症はしていないという。


食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは、特定の食物を摂取した後、1〜4時間以内にランニングなどの運動負荷が掛かることにより、蕁麻疹とともにアナフィラキシー症状が現れる状態を指します。

上記にある通り、運動のみや食物摂取のみでは発症しません。ところが、特定の食物を食べた後に、運動を行うことで蕁麻疹などの症状が現れてきます。日本では、上記のケースのように小麦によることが最も多く、他にもエビや牡蠣、セロリなども原因となることがあります。

食物アレルギーとは、食物を摂取して起きる、生体に不利益な反応のなかで免疫学的機序を介して起きるもの、と定義することができると思われます。起こりうる「不利益な反応」には、蕁麻疹や紅斑、湿疹、嘔吐や下痢、アナフィラキシーショックなどがあります。

中でも、食物アレルギーの臨床症状で最も重篤なものは、全身性の即時型反応であるアナフィラキシーです。アナフィラキシーとは、外来物質の侵入が原因となり、それに対する急激な生体反応の結果、循環器系や消化器系、呼吸器系、皮膚などの広範な臓器が障害を受ける状態を指します。これが重篤となり、循環・呼吸不全に陥る場合をアナフィラキシーショックといいます。

簡単に言ってしまえば、劇症型のアレルギー反応であり、入ってきた異物に身体が過剰に反応し、あらゆる場所が腫れ上がってしまい、最悪の場合、呼吸困難で死に至ることもあります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシーは、食物アレルギーの中では特殊なものであると考えられます。特殊型としては、他に口腔アレルギー症候群(注:食物依存性運動誘発アナフィラキシーとは別物です)などもあります。

口腔アレルギー症候群は、花粉症の患者さんなどで、リンゴなどの果実によって口腔内のアレルギー症状が起こる病気です。

原因となる食べ物が口腔粘膜に直接接触することで生じるアレルギー反応と考えられています。アレルギー反応を起こしうるものとしては、
・バラ科の果物(リンゴ、モモ、ナシ、イチゴ、サクランボ)
・ウリ科の植物(メロン、スイカ)
・バナナ
・ジャガイモ

などがあります。

これらの原因食品は花粉症の原因花粉類と交差抗原性(アレルギーの原因となる物質が共通して含まれていること)があることが知られており、そのために花粉症の患者さんで症状がみられることが多いと考えられています。含まれる抗原の特徴がきわめて似ているため、こうした交差反応が起こってしまうわけです。

なお、果物のアレルギーがある人の場合、ゴム(ラテックス)にもアレルギーを起こす場合があり、職業上ゴム手袋を用いる場合などでは注意が必要と考えられます。

食物アレルギーの診断や治療は、以下のように行います。
まずは、詳細な問診と食物日誌により原因抗原を推定することが重要となります。ポイントとしては、
?症状を起こす食品の種類と摂取量
?症状発現までの時間
?再現性の有無
?症状を起こす他の条件(運動,感冒)などの有無を確認

こうしたことをチェックして(問題となる症状が食物アレルギーによるものかどうかも含めて)、症状はどの程度や現れ方なのか、どんな食物が原因になっているのか、などをしっかりと把握します。

こうした問診に基づき、アレルゲン特異IgE抗体や皮膚テストなどを行ったり、原因と考えられる食物の除去試験や負荷試験などを行います。食物依存性運動誘発アナフィラキシーでは、上記のケースのように確定診断のために誘発試験を行いますが、誘発試験だけでアナフィラキシーショックを生じることもあります。そのため、慎重な対応が必要となります(専門医による実施が勧められる)。

治療としては、原因食物を摂取したときに出現するアレルギー症状を予防するための食物除去を中心とした食事療法、食物アレルギーにより引き起こされた症状を軽快・消失させる薬物療法に分けられます。

食物アレルギー症状の出現を完全に抑制できる治療法はないため、食物アレルギーで起きる症状が強い場合には、原因食物を摂取しないようにすること(除去食療法)ことが優先されます。

症状出現時には、症状に応じた薬物療法を実施します。たとえば、蕁麻疹などが生じた場合は抗ヒスタミン薬を投与します。アナフィラキシーショックが生じた場合には、症状出現後できるだけ早期にエピネフリンの筋注を行うことが重要です。その後に、必要に応じて輸液、昇圧薬、抗ヒスタミン薬、ステロイド薬などを投与するとともに、気道を確保するなど、ショックに対する治療を行います。

また、上記のように過去に食物アレルギーによりアナフィラキシーショックを起こした既往のある患者さんに対しては、エピネフリン自己注射器(エピペン)をあらかじめ処方します。万が一の時は、緊急避難的に自己注射してもらいます。

やはり好きな物が食べられなくなると言うのは、非常に大きな苦痛になると思われます。ですが、呼吸困難などを起こして致命的な症状を起こすこともあります。同様の症状が現れた方は、皮膚科などを受診されて相談されてはいかがでしょうか。

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