日中、過度の眠気を引き起こす疾患。その代表格といえるのが睡眠時無呼吸症候群(SAS)。とくに日本人をはじめとするアジア人は罹りやすい骨格をしているというから要注意だ。

ガガガッーと息が止まる大きなイビキと日中の過度の眠気。そして起床時の寝足りなさや頭痛、インポテンツ(ED)などがその主症状。とくに中年以降の男性に多く、罹患者は推定200〜300万人といわれるが、治療を受けている人は10万人程度というから気づいていない人も多いはずだ。

原因は睡眠中、のどの筋肉が緩んで気道が狭くなり、何度も呼吸が止まってしまい熟睡ができなくなるため。その要因には加齢や肥満、へんとう肥大などがあげられるが、「日本人の有病率は肥満大国の欧米と同じぐらい高い」と話すのは、スリープ&ストレスクリニック(東京・大崎)の林田健一院長。

“ロングフェース”といってアジア人に多くみられる“奥行きが狭く、縦に長い顔”の特徴。ただでさえ気道スペースが狭い構造をしているうえに、これに肥満が加わることで一層発症率を高くさせているのだという。

「いま肥満がなくてもイビキをかくような人は発症リスクが高いので要注意。また中年になってから、体重の増加に伴いイビキと日中の強い眠気が出てきたという人は、すでに発症している疑いが強いですね」

【診断】
10秒以上息が止まっている無呼吸の状態が睡眠中1時間当たり15回以上あるか、1時間当たり5回以上で自覚症状があると、SASと診断される。このような状態を放置すると睡眠の質の低下だけでなく、血中の酸素濃度の低下も加わり高血圧や不整脈を引き起こし脳梗塞や心筋梗塞の危険性が3倍になるといわれる。

【治療法】
気道閉塞によるSASでもっとも有効な治療法は「CPAP」。眠るときに鼻にマスクを着け、気道がふさがらないように装置で加圧した空気を送り込む療法。検査(夜間、病院で寝て受ける)で、1時間に20回以上無呼吸があれば保険適用となる。この場合、月1回の外来受診が必要となり、機器のレンタル料も含めてかかる自己負担は月5,000円ほどだ。

「肥満が原因の人は体重を落とせば症状は軽減するので減量は不可欠」と林田院長。
自分では分からない睡眠中の呼吸。もし日中の眠気が強いようなら妻にチェックしてもらい、独身なら録音機などを使って調べるのもひとつの手だ。
(突然襲う睡魔…顔が長い人は注意 睡眠時無呼吸症候群)


睡眠時無呼吸症候群(SAS:sleep apnea syndrome)とは、「睡眠中の10秒以上の気流停止を無呼吸発作と定義し、睡眠中の無呼吸発作が一晩に30回以上出現し、そのうちのいくつかは non-REM睡眠期にも出現する症候群」と定義されています。

以下のような3タイプに分類されます。
閉塞型無呼吸:上気道閉塞によって起こる。無呼吸中呼吸努力が認められ、胸郭と胸壁は奇異運動を示す。
中枢型無呼吸:呼吸中枢の障害によって起こる。呼吸中枢からの出力が消失するため、胸郭と腹壁の動きがなくなる。呼吸調節機構そのものの障害による場合と、脳血管障害などによって呼吸中枢の呼吸調節が不安定になることによって起こる場合がある。
混合型無呼吸:同じ無呼吸発作中に閉塞型と中枢型が存在する。
上記で語られているものは、閉塞型無呼吸に分類されているものであると思われます。

現に、閉塞型の患者さんが多いですが、混合型の要素を伴うケースもあります。男性優位で、中高年でイビキをかく肥満者に多いといわれています。閉塞型の主な原因は上気道閉塞であり、その治療が優先されます。

疫学調査では、成人男性の4〜15%、女性の2〜5%に認められたとする報告があり、高齢者で出現頻度が高くなり、24%に認められたという報告もあります。

症状としては、睡眠中にはいびきが閉塞性の患者で高頻度でみられます。何度も覚醒してしまったり、異常な体動、尿失禁などがみられることもあります。

日中では、傾眠傾向(眠くて仕方がない状態)が最も顕著なものです。睡眠中の覚醒反応により、睡眠障害が起こるために起こります。また、眠っている間に低換気になることで(呼吸が十分にうまくできない)よって、二酸化炭素が蓄積して起床時に頭痛がみられることもあります。その他、精神的な障害を起こすことがみられます。

診断や治療としては、以下のようなことを行います。
検査としては、在宅睡眠時呼吸モニターがスクリーニングに使用されるところが多いようです。小型のモニター装置によって、自宅での睡眠時の口鼻気流、気管音録音、心電図を記録し、コンピュータによって解析します。脳波、眼球運動などの睡眠段階を知る情報は記録されていませんが、スクリーニングとしては有用です。

次に、パルスオキシメーターを使用して検査します。非侵襲的に動脈血酸素飽和度を光学的に測定するものです。4%以上の動脈血酸素飽和度低下があると、呼吸障害ありと考えます。

他にも、形態学的検査で単純X線、CT、MRIや内視鏡によって上気道の形態を調査計測したり、ポリソムノグラフィーで詳細な検査を行うこともあります。

治療としては、apnea index(1時間あたりの無呼吸の回数)が20を超える群が、それ以下の群より有意に予後が悪いという報告(厚労省は、睡眠1時間あたりの低呼吸数が20回以上おこる場合では、5年後の生存は84%[5年後の死亡率は16%]と報告しています)があるため、apnea index 20以上で治療対象となります。

まずは、肥満による無呼吸には体重減少が第一選択となります。現在では、経鼻的持続気道内陽圧呼吸(nasal CPAP:nasal continuous positive airway pressure)が代表的治療法です。呼吸刺激薬、三環系抗うつ薬の投与、アルコール・鎮静薬の禁止、酸素投与も行われることがあります。

こうした内科的治療で効果が期待できない場合、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術(UPPP:uvulopalatopharyngoplasty)が行われたり、重篤な症例では気管切開が行われることもあります。

特に、ドライバーの方などでは大きな問題となります。「熟眠感がない」「日中眠くて仕方がない」という方は、一度、専門外来などを受診してみることをお勧めします。

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