イギリスのウェスト・サセックスという地域に、めずらしい病気を抱えた7歳の女の子がいる。彼女は体の新陳代謝機能に異常があり、体内に入ってくる蛋白質をうまく処理できないという。そのため彼女は、20gのチョコレートを食べただけでそれが致命傷になる危険を抱えているのだという。
彼女が患っているのはメチルマロン酸血症(MMA)。彼女の体は新陳代謝機能がきちんと発育しておらず、体内に入ってくるタンパク質をうまく処理することができない。彼女の体は入ってくる全てのタンパク質を、命の危険につながる酸性物質に変えてしまうのだという。そのため彼女は、タンパク質を多く含むチョコレート、牛乳、アイスクリームなどを食べることができないのだ。
彼女はなるべく蛋白質を摂取しないようにする治療を受けているが、長い期間の間には内蔵に蛋白質由来の毒素が少しずつ蓄積していくため、彼女は将来、臓器移植手術を受ける必要が出てくるとのことだ。
この病気の発症率はわずか100万分の1。イギリスには現在、同様の病気に苦しむ人が70人ほどいるという。
(チョコレート食べることが致命傷に、奇病に苦しむ少女)
メチルマロン酸血症とは、体液中に大量のメチルマロン酸が蓄積し、重篤なケトアシドーシスを生じる有機酸代謝異常の一つです。有機酸代謝異常症の中でもっとも頻度の多い疾患です。その大部分は、メチルマロニルCoAムターゼという酵素の異常によって起こります。
体内にケトン体が増加する状態をケトーシスといいますが、その産生されたケトン体により、血液が酸性になった状態をケトアシドーシスといいます。メチルマロン酸血症では、以下のような経路で発生した異常な代謝産物により、ケトアシドーシスになってしまいます。
メチルマロン酸血症で異常がみられる、メチルマロニルCoAムターゼとは、分岐アミノ酸の中間代謝経路に位置しています。蛋白質や脂質などを分解して生じるメチルマロニルCoAを、スクシニルCoAに変換するのに重要な酵素です。
メチルマロン酸血症の患者さんでは、この変換ができず、細胞内にメチルマロニルCoAが大量に発生してしまい、その影響で、メチルマロン酸やプロピオン酸、メチルクエン酸、3-OHプロピオン酸などの異常な代謝産物も発生してしまいます。
なお、このメチルマロニルCoAムターゼという酵素は、ビタミンB12を補酵素としています。ですので、メチルマロニルCoAムターゼが正常に機能していても、生体内のビタミンB12の代謝経路に異常があれば、この反応は起こらなくなりメチルマロン酸血症となります。
よって、メチルマロン酸血症では、
後者のビタミンB12が不足することで起こるタイプでは、ビタミンB12大量投与により臨床的・生化学的に改善する病型と考えられます。これを、ビタミンB12依存性(反応性)メチルマロン酸血症といいます。
具体的には、ビタミンB12依存性(反応性)メチルマロン酸血症は、メチルマロニルCoAムターゼの補酵素である、アデノシルコバラミンの合成系の障害により生じます。CblA、B、C、D、Fの5群に分類されており、
現れる症状や、その治療法としては以下のようなものがあります。
彼女が患っているのはメチルマロン酸血症(MMA)。彼女の体は新陳代謝機能がきちんと発育しておらず、体内に入ってくるタンパク質をうまく処理することができない。彼女の体は入ってくる全てのタンパク質を、命の危険につながる酸性物質に変えてしまうのだという。そのため彼女は、タンパク質を多く含むチョコレート、牛乳、アイスクリームなどを食べることができないのだ。
彼女はなるべく蛋白質を摂取しないようにする治療を受けているが、長い期間の間には内蔵に蛋白質由来の毒素が少しずつ蓄積していくため、彼女は将来、臓器移植手術を受ける必要が出てくるとのことだ。
この病気の発症率はわずか100万分の1。イギリスには現在、同様の病気に苦しむ人が70人ほどいるという。
(チョコレート食べることが致命傷に、奇病に苦しむ少女)
メチルマロン酸血症とは、体液中に大量のメチルマロン酸が蓄積し、重篤なケトアシドーシスを生じる有機酸代謝異常の一つです。有機酸代謝異常症の中でもっとも頻度の多い疾患です。その大部分は、メチルマロニルCoAムターゼという酵素の異常によって起こります。
体内にケトン体が増加する状態をケトーシスといいますが、その産生されたケトン体により、血液が酸性になった状態をケトアシドーシスといいます。メチルマロン酸血症では、以下のような経路で発生した異常な代謝産物により、ケトアシドーシスになってしまいます。
メチルマロン酸血症で異常がみられる、メチルマロニルCoAムターゼとは、分岐アミノ酸の中間代謝経路に位置しています。蛋白質や脂質などを分解して生じるメチルマロニルCoAを、スクシニルCoAに変換するのに重要な酵素です。
メチルマロン酸血症の患者さんでは、この変換ができず、細胞内にメチルマロニルCoAが大量に発生してしまい、その影響で、メチルマロン酸やプロピオン酸、メチルクエン酸、3-OHプロピオン酸などの異常な代謝産物も発生してしまいます。
なお、このメチルマロニルCoAムターゼという酵素は、ビタミンB12を補酵素としています。ですので、メチルマロニルCoAムターゼが正常に機能していても、生体内のビタミンB12の代謝経路に異常があれば、この反応は起こらなくなりメチルマロン酸血症となります。
よって、メチルマロン酸血症では、
1)メチルマロニルCoAムターゼという酵素に異常があるタイプが大きく分けて原因として考えられます。こうしたことが原因で、体内にメチルマロン酸を中心とした有機酸などが大量に発生してしまう、というわけです。
2)メチルマロニルCoAムターゼの補酵素であるビタミンB12が不足するタイプ
後者のビタミンB12が不足することで起こるタイプでは、ビタミンB12大量投与により臨床的・生化学的に改善する病型と考えられます。これを、ビタミンB12依存性(反応性)メチルマロン酸血症といいます。
具体的には、ビタミンB12依存性(反応性)メチルマロン酸血症は、メチルマロニルCoAムターゼの補酵素である、アデノシルコバラミンの合成系の障害により生じます。CblA、B、C、D、Fの5群に分類されており、
・CblA、B群→ビタミンB12不応例と同様、ケトアシドーシス発作を伴い、常染色体劣性の遺伝形式をとる。タイプによって、こうした違いがみられます。
・CblC、D、F群→ホモシスチン尿を伴い発達遅滞、神経症状を呈する。CblCは常染色体劣性遺伝。
現れる症状や、その治療法としては以下のようなものがあります。
患者さんの多くは、アシドーシス、ケトーシス、嘔吐、痙攣、意識障害などで発症します。頻回の嘔吐などを起こし、脱水で死亡する場合も多いと言われています。
また、大量な有機酸はアンモニアの処理を阻害するため、高アンモニア血症もきたしす恐れがあります。将来的には、神経障害、腎機能の障害、心筋症を合併することもあります。
初回の発作時は、診断確定のため発作時検体での有機酸分析(尿)やアシルカルニチン分析(血清,血液濾紙,尿)を至急に行い、治療を進めます。検査所見では、著明な代謝性アシドーシス(たびたび動脈血でpH 6.9〜7.2を示す)、高グリシン血症、高アンモニア血症、低血糖症、好中球・血小板減少などを認めます。尿中、血中では著明なメチルマロン酸の増加がみられます。
急性発作時の治療としては、まず絶食して、たとえ低血糖がなくても十分な糖質輸液(10%ブドウ糖濃度の末梢輸液や、中心静脈からの糖質による高カロリー輸液)を行うことで、体の蛋白質の異化を防ぐことが基本となります。
代謝性アシドーシスに対しては、メイロン(炭酸水素ナトリウム)による補正を試みます。初期目標としては、pHを7.25以上に保ちます。
高アンモニア血症を合併していれば、代謝性アシドーシス補正も兼ねて交換輸血の反復、腹膜透析を行い、可能であれば血液透析、持続濾過透析を行います。
日常管理としては、重篤な発作を避けるための生活指導が重要で、自然タンパク(一般ミルクや食物由来のタンパク)を通常1〜2g/kg/日で制限します。急性期を乗り越えたら、なるべく早く自然タンパク0.5g/kg/日から開始して、アミノ酸分析や血液ガス、アンモニアの値をみながら段々と増やしていきます。
また、ビタミンB12代謝経路異常型(vitB12反応性)では、ビタミンB12の大量投与を行います。
「好きなモノが食べられない」といったことや、急性発作を起こす可能性に怯えなければならないなど、多くの制約の中で暮らしていかなければならないのは、非常に辛いことであると思われます。周囲の人たちのご理解などが求められます。
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メチルマロン酸血症−我が子に毒を投与したと疑われた母親
また、大量な有機酸はアンモニアの処理を阻害するため、高アンモニア血症もきたしす恐れがあります。将来的には、神経障害、腎機能の障害、心筋症を合併することもあります。
初回の発作時は、診断確定のため発作時検体での有機酸分析(尿)やアシルカルニチン分析(血清,血液濾紙,尿)を至急に行い、治療を進めます。検査所見では、著明な代謝性アシドーシス(たびたび動脈血でpH 6.9〜7.2を示す)、高グリシン血症、高アンモニア血症、低血糖症、好中球・血小板減少などを認めます。尿中、血中では著明なメチルマロン酸の増加がみられます。
急性発作時の治療としては、まず絶食して、たとえ低血糖がなくても十分な糖質輸液(10%ブドウ糖濃度の末梢輸液や、中心静脈からの糖質による高カロリー輸液)を行うことで、体の蛋白質の異化を防ぐことが基本となります。
代謝性アシドーシスに対しては、メイロン(炭酸水素ナトリウム)による補正を試みます。初期目標としては、pHを7.25以上に保ちます。
高アンモニア血症を合併していれば、代謝性アシドーシス補正も兼ねて交換輸血の反復、腹膜透析を行い、可能であれば血液透析、持続濾過透析を行います。
日常管理としては、重篤な発作を避けるための生活指導が重要で、自然タンパク(一般ミルクや食物由来のタンパク)を通常1〜2g/kg/日で制限します。急性期を乗り越えたら、なるべく早く自然タンパク0.5g/kg/日から開始して、アミノ酸分析や血液ガス、アンモニアの値をみながら段々と増やしていきます。
また、ビタミンB12代謝経路異常型(vitB12反応性)では、ビタミンB12の大量投与を行います。
「好きなモノが食べられない」といったことや、急性発作を起こす可能性に怯えなければならないなど、多くの制約の中で暮らしていかなければならないのは、非常に辛いことであると思われます。周囲の人たちのご理解などが求められます。
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