Q アスベスト(石綿)はどんな物質なの?
A 天然の繊維状けい酸塩鉱物で、綿のように柔らかく、燃えず、切れにくい。古代エジプトではミイラを包む布にも使われた。国内で大量使用されるようになったのは高度経済成長期の建設ラッシュ時から。建築工事で主に保温・断熱に使うため、吹き付ける形で使用された。
Q どんな被害があるか?
A 飛散した粒子を吸い込むことで健康被害が生じる。肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺がんとの因果関係が指摘され、潜伏期間が長いのが特徴。中皮腫の場合、平均約35年という。建設現場の労働者のほか、アスベストを大量に用いた工場の周辺住民、建物の撤去作業をした人にも健康被害が出ている。
Q 国の対応は?
A 労災認定の時効(5年)で補償を受けられない人、工場の周辺に住み、被害にあった人に対し、国は平成18年からアスベスト新法で補償をしている。今後約40年間で悪性中皮腫の死者数が10万人になるという推計もある。
Q 大手機械メーカー「クボタ」(大阪市)の工場周辺で被害が出た問題のその後は?
A 17年6月、兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場で勤務していた79人が、中皮腫などで死亡していたと発表された。近隣住民も中皮腫を発症したことがわかり「クボタ・ショック」と呼ばれる大問題となった。
昨年9月末現在で被害者は同社関係者が156人(うち死亡128人)、周辺住民は139人(同108人)まで拡大。周辺住民には工場の半径1キロ以内に居住し、アスベスト新法で救済対象となった人に2500万〜4600万円の救済金を支払っている。
(アスベスト被害をめぐるQ&A)
アスベストは石綿とも言われ、人体に対する影響は多彩であり、アスベスト肺、胸膜肥厚、肺癌、中皮腫(悪性中皮腫)などが指摘されています。
アスベスト肺とは、比較的大量のアスベスト吸入により、肺のびまん性線維化病変を主立った特徴とした疾患です。肺が線維化してしまう肺線維症の一つです。
簡単にいってしまえば、アスベストを吸うと気管支の奥まで入り込み、肺の間質で炎症が起こり、肺組織の構造を変化させます。結果、線維化が起こってきた状態を指すわけです。
肺における線維化は、間質や肺胞の炎症性細胞を中心とする浸潤変化とともに、線維芽細胞を中心とする細胞増殖、線維素の分泌・沈着などにより起こります。こうした変化が起こってくると、肺の組織が硬くなります。
こうした線維化が起こってくると、患者さんは息苦しさを感じるようになります。肺は本来、ガス交換(酸素および二酸化炭素など)を行っていますが、線維化が起こると、この効率を著しく損ねてしまいます。
この症状は、徐々に進行してきます。まずは労作時(体を動かしたとき)に息切れが出現してきます。初期は、こうした労作時のみですが、進行すれば安静時にも息苦しさがみられるようになります。会話や着替えのときでも、息が切れるほど呼吸機能が低下してしまうこともあります。
また、乾性せき(痰を伴わない乾いた咳)が現れたりします。血痰が現れることは少ないですが、出現すれば癌の合併も考えます。
こうした間質性肺炎の他に、びまん性胸膜肥厚も合併します。
胸膜は肺の表面、および、肋骨の内側を包む2層の薄い膜(壁側および臓側胸膜)です。この壁側および臓側胸膜で囲まれた胸腔(胸膜腔)には、正常では20ml程度の液体が存在し、潤滑液としての役割をはたしています。
アスベストによる刺激があると、炎症(胸膜炎)が起こり、胸膜腔に水が溜まってきます(胸水という)。この炎症が繰り返し起こると、上記同様に組織が線維化し、肥厚してきます(びまん性胸膜肥厚は、臓側胸膜まで線維性肥厚が及んでおり、良性石綿胸水と呼ばれる胸水貯留の後にみられる)。
必要な検査としては、以下のようなものがあります。
A 天然の繊維状けい酸塩鉱物で、綿のように柔らかく、燃えず、切れにくい。古代エジプトではミイラを包む布にも使われた。国内で大量使用されるようになったのは高度経済成長期の建設ラッシュ時から。建築工事で主に保温・断熱に使うため、吹き付ける形で使用された。
Q どんな被害があるか?
A 飛散した粒子を吸い込むことで健康被害が生じる。肺線維症(じん肺)、悪性中皮腫、肺がんとの因果関係が指摘され、潜伏期間が長いのが特徴。中皮腫の場合、平均約35年という。建設現場の労働者のほか、アスベストを大量に用いた工場の周辺住民、建物の撤去作業をした人にも健康被害が出ている。
Q 国の対応は?
A 労災認定の時効(5年)で補償を受けられない人、工場の周辺に住み、被害にあった人に対し、国は平成18年からアスベスト新法で補償をしている。今後約40年間で悪性中皮腫の死者数が10万人になるという推計もある。
Q 大手機械メーカー「クボタ」(大阪市)の工場周辺で被害が出た問題のその後は?
A 17年6月、兵庫県尼崎市のクボタ旧神崎工場で勤務していた79人が、中皮腫などで死亡していたと発表された。近隣住民も中皮腫を発症したことがわかり「クボタ・ショック」と呼ばれる大問題となった。
昨年9月末現在で被害者は同社関係者が156人(うち死亡128人)、周辺住民は139人(同108人)まで拡大。周辺住民には工場の半径1キロ以内に居住し、アスベスト新法で救済対象となった人に2500万〜4600万円の救済金を支払っている。
(アスベスト被害をめぐるQ&A)
アスベストは石綿とも言われ、人体に対する影響は多彩であり、アスベスト肺、胸膜肥厚、肺癌、中皮腫(悪性中皮腫)などが指摘されています。
アスベスト肺とは、比較的大量のアスベスト吸入により、肺のびまん性線維化病変を主立った特徴とした疾患です。肺が線維化してしまう肺線維症の一つです。
簡単にいってしまえば、アスベストを吸うと気管支の奥まで入り込み、肺の間質で炎症が起こり、肺組織の構造を変化させます。結果、線維化が起こってきた状態を指すわけです。
肺における線維化は、間質や肺胞の炎症性細胞を中心とする浸潤変化とともに、線維芽細胞を中心とする細胞増殖、線維素の分泌・沈着などにより起こります。こうした変化が起こってくると、肺の組織が硬くなります。
こうした線維化が起こってくると、患者さんは息苦しさを感じるようになります。肺は本来、ガス交換(酸素および二酸化炭素など)を行っていますが、線維化が起こると、この効率を著しく損ねてしまいます。
この症状は、徐々に進行してきます。まずは労作時(体を動かしたとき)に息切れが出現してきます。初期は、こうした労作時のみですが、進行すれば安静時にも息苦しさがみられるようになります。会話や着替えのときでも、息が切れるほど呼吸機能が低下してしまうこともあります。
また、乾性せき(痰を伴わない乾いた咳)が現れたりします。血痰が現れることは少ないですが、出現すれば癌の合併も考えます。
こうした間質性肺炎の他に、びまん性胸膜肥厚も合併します。
胸膜は肺の表面、および、肋骨の内側を包む2層の薄い膜(壁側および臓側胸膜)です。この壁側および臓側胸膜で囲まれた胸腔(胸膜腔)には、正常では20ml程度の液体が存在し、潤滑液としての役割をはたしています。
アスベストによる刺激があると、炎症(胸膜炎)が起こり、胸膜腔に水が溜まってきます(胸水という)。この炎症が繰り返し起こると、上記同様に組織が線維化し、肥厚してきます(びまん性胸膜肥厚は、臓側胸膜まで線維性肥厚が及んでおり、良性石綿胸水と呼ばれる胸水貯留の後にみられる)。
必要な検査としては、以下のようなものがあります。
検査としては、聴診や胸部X線検査などが行われます。胸部X線検査で所見が出現する以前から、聴診で両肺底部にfine crackle(「パリパリ」と表現される高調音)が聴取されます。また、ばち状指(指の先端が太鼓のばちのように大きくなる)もしばしばみられる所見です。
胸部X線やCT写真では、原因不明の間質性肺炎・肺線維症との区別が困難であることがあります。ですが、早期病変として背側下部の胸膜直下に、細い帯状の線維化巣陰影がみられることがあり、特徴的です。
胸膜病変は、限局性胸膜斑が胸壁、横隔膜、心嚢、傍脊柱部にみられ、進行すると石灰化をきたすようになり、診断に役立ちます。
診断には、石綿曝露歴の証明と、胸部X線所見における肺野不整形陰影の存在が、ほぼ必須条件となります。
肺生検組織あるいは気管支肺胞洗浄液(BALF)中に、アスベスト小体(核となる石綿繊維が鉄を含む蛋白で被覆された結晶物)を検出することや、胸部X線における胸膜病変の存在は、アスベストに曝露したことを確実にする所見です。
肺癌の合併頻度は13.2〜20.1%とされ(喫煙との相関が認められる)、曝露開始から発症まで通常20年以上を要するといわれています。悪性中皮腫の合併頻度は肺癌より低く、発生部位は胸膜、腹膜、心嚢ですが、胸膜が最も多いといわれています。
数十年という潜伏期間もあり、今後も患者さんは増えてくると推定されています。補償を含めた議論や対策がしっかりとなされることが望まれます。
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胸部X線やCT写真では、原因不明の間質性肺炎・肺線維症との区別が困難であることがあります。ですが、早期病変として背側下部の胸膜直下に、細い帯状の線維化巣陰影がみられることがあり、特徴的です。
胸膜病変は、限局性胸膜斑が胸壁、横隔膜、心嚢、傍脊柱部にみられ、進行すると石灰化をきたすようになり、診断に役立ちます。
診断には、石綿曝露歴の証明と、胸部X線所見における肺野不整形陰影の存在が、ほぼ必須条件となります。
肺生検組織あるいは気管支肺胞洗浄液(BALF)中に、アスベスト小体(核となる石綿繊維が鉄を含む蛋白で被覆された結晶物)を検出することや、胸部X線における胸膜病変の存在は、アスベストに曝露したことを確実にする所見です。
肺癌の合併頻度は13.2〜20.1%とされ(喫煙との相関が認められる)、曝露開始から発症まで通常20年以上を要するといわれています。悪性中皮腫の合併頻度は肺癌より低く、発生部位は胸膜、腹膜、心嚢ですが、胸膜が最も多いといわれています。
数十年という潜伏期間もあり、今後も患者さんは増えてくると推定されています。補償を含めた議論や対策がしっかりとなされることが望まれます。
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