カプセルを飲み込むだけで小腸内の検査が行える「カプセル内視鏡」を使った診察が、昨年10月に保険適用されて今月で半年になる。従来の内視鏡では検出が困難とされていた小腸ポリープや潰瘍の有所見率が大きくアップ。麻酔などの前処置やバリウムなどの造影剤が不要なため、患者の肉体的負担の軽減にもつながるなど、小腸の検査・治療を飛躍的に前進させたと高い評価を得ている。
カプセル内視鏡は直径11mm、長さ26mmで、大きなビタミン剤のような形をしている。超小型カメラを内臓し、口から飲み込んで内視鏡検査を行う。消化管の蠕動運動によって小腸を通過しながら8時間かけて約5万枚の腸粘膜の画像を撮影し、記録装置に転送。医師がこの画像をもとに診断を行う。
小腸は全消化管の75%を占める体内で最も長い臓器で、全長6〜7メートル。従来の内視鏡だと口と肛門のどちらから入れても十分な観察ができず、「暗黒の臓器」とも呼ばれていた。
それがカプセル内視鏡の開発で小腸全体を観察できるようになり、これまで見逃されてきた糜爛や血管異形成など小病変の検出が可能になった。また、関節リウマチの治療でよく飲まれる消炎鎮痛剤や、心筋梗塞予防の低容量アスピリンが小腸の粘膜を傷つけていることも分かってきた。
大阪市立大学医学部附属病院での臨床研究を含め約300例のカプセル内視鏡検査にかかわってきた大阪医科大学の樋口和秀教授は「カプセル内視鏡の有所見率は約70%。原因不明の消化管出血の場所をほぼ特定できるようになり、そこにある潰瘍や血管病変をダブルバルーン内視鏡で効果的に焼灼治療できるようになった」と検査や治療で大きな成果が上がっていると話す。
患者の負担も随分軽くなった。検査は腹部に心電図のようなモニターを張り付け、記録装置(小型コンピューター)をベルトで腰にまいて、カプセル内視鏡を少量の水で飲み込むだけ。検査前日の午後10時まで消化のよいものなら飲食が可能な上、検査後は職場や家庭に戻り、日常生活を送れる。
そして8時間後に病院に戻り、モニターと記録装置を返却。結果は医師がチェックした上で後日、知らされる。カプセルは使い捨てで、排便時に体外に出たところを本人が回収する。
ただ、カプセル内視鏡検査の保険適用は日本の場合、原因不明の消化管出血に限定される。カプセルを体外に確実に排出させるという面から、クローン病など腸の狭窄が考えられる疾患は適用外だ。
検査費用は3割負担の被保険者で約3万円。現在、医療現場で使われている小腸用カプセル内視鏡はイスラエルのギブン・イメージング社製で、2001年の発売以来、全世界で約65万個が普及しているという。
樋口教授は「まだリアルタイムで観察できないなど課題もあるが、カプセル内視鏡が保険適用になったことで、これまで原因がわからず試験開腹などの手術をしていた小腸の病変の早期発見・治療が可能となり、病気が深刻な状態にならないうちに対策を立てられる可能性が広がった」と評価している。
(「カプセル内視鏡」 小腸の検査・治療で飛躍的な成果上げる)
内視鏡とは、管腔構造を示す消化管、気管、膀胱・尿管などや胸腔内、腹腔内を直接観察することで、診断、ときには治療を目的とした器械を指します。
多くは口腔、鼻腔、耳管、肛門、腟などから非観血的(外科的手術によって出血をみるものを観血的治療という)に器具を挿入するものが多いです。ですが、関節腔を検査する関節鏡、腹腔内を観察する腹腔鏡、頭蓋骨に小孔を開けて挿入する脳室鏡のように、観血的に行うものもあります。
以前は、ファイバースコープが用いられており、ガラス繊維の柔軟性と屈曲しても光が通過する性質を応用して、数万本のグラスファイバーを束ね、両端にレンズを装着して病変を観察する仕組みのものでした。最近では、スコープの先端に固体撮像素子CCDを組み込んで、モニターテレビで観察する電子内視鏡(電子スコープ)が普及して一般的に用いられています。
カプセル型内視鏡は、CCDセンサーと超小型レンズを搭載したカプセルと無線送信機構(ベストのような物で体に着けておく)で、飲み込んだ患者の消化器内部の様子を外部モニターで観察するものです。上記のように、胃や腸のぜん動で体内を進み、8時間後には体外に排出されます。
カプセル型内視鏡は、2007年に保険適応となりました。通常の内視鏡検査の技術料に、使い捨てカプセルの7万7,200円を加えた9万4,200円。患者負担を除く額が保険で支払われるため、3割負担なら2万8260円を病院で支払うことになります。
ただ、医療費抑制を図りたい厚労省は、「チューブ型内視鏡やCT(コンピューター断層撮影法)で検査後、さらに検査が必要な事例に限る」と割高なカプセル型の普及に慎重な姿勢をとっています。また、医療機関は、解析用ワークステーションなど600万円強の機器を同社から購入することになるため、導入している所はまだ少ないのではないか、と思われます。
カプセル型内視鏡のメリット、デメリットは以下のようなものがあります。
カプセル内視鏡は直径11mm、長さ26mmで、大きなビタミン剤のような形をしている。超小型カメラを内臓し、口から飲み込んで内視鏡検査を行う。消化管の蠕動運動によって小腸を通過しながら8時間かけて約5万枚の腸粘膜の画像を撮影し、記録装置に転送。医師がこの画像をもとに診断を行う。
小腸は全消化管の75%を占める体内で最も長い臓器で、全長6〜7メートル。従来の内視鏡だと口と肛門のどちらから入れても十分な観察ができず、「暗黒の臓器」とも呼ばれていた。
それがカプセル内視鏡の開発で小腸全体を観察できるようになり、これまで見逃されてきた糜爛や血管異形成など小病変の検出が可能になった。また、関節リウマチの治療でよく飲まれる消炎鎮痛剤や、心筋梗塞予防の低容量アスピリンが小腸の粘膜を傷つけていることも分かってきた。
大阪市立大学医学部附属病院での臨床研究を含め約300例のカプセル内視鏡検査にかかわってきた大阪医科大学の樋口和秀教授は「カプセル内視鏡の有所見率は約70%。原因不明の消化管出血の場所をほぼ特定できるようになり、そこにある潰瘍や血管病変をダブルバルーン内視鏡で効果的に焼灼治療できるようになった」と検査や治療で大きな成果が上がっていると話す。
患者の負担も随分軽くなった。検査は腹部に心電図のようなモニターを張り付け、記録装置(小型コンピューター)をベルトで腰にまいて、カプセル内視鏡を少量の水で飲み込むだけ。検査前日の午後10時まで消化のよいものなら飲食が可能な上、検査後は職場や家庭に戻り、日常生活を送れる。
そして8時間後に病院に戻り、モニターと記録装置を返却。結果は医師がチェックした上で後日、知らされる。カプセルは使い捨てで、排便時に体外に出たところを本人が回収する。
ただ、カプセル内視鏡検査の保険適用は日本の場合、原因不明の消化管出血に限定される。カプセルを体外に確実に排出させるという面から、クローン病など腸の狭窄が考えられる疾患は適用外だ。
検査費用は3割負担の被保険者で約3万円。現在、医療現場で使われている小腸用カプセル内視鏡はイスラエルのギブン・イメージング社製で、2001年の発売以来、全世界で約65万個が普及しているという。
樋口教授は「まだリアルタイムで観察できないなど課題もあるが、カプセル内視鏡が保険適用になったことで、これまで原因がわからず試験開腹などの手術をしていた小腸の病変の早期発見・治療が可能となり、病気が深刻な状態にならないうちに対策を立てられる可能性が広がった」と評価している。
(「カプセル内視鏡」 小腸の検査・治療で飛躍的な成果上げる)
内視鏡とは、管腔構造を示す消化管、気管、膀胱・尿管などや胸腔内、腹腔内を直接観察することで、診断、ときには治療を目的とした器械を指します。
多くは口腔、鼻腔、耳管、肛門、腟などから非観血的(外科的手術によって出血をみるものを観血的治療という)に器具を挿入するものが多いです。ですが、関節腔を検査する関節鏡、腹腔内を観察する腹腔鏡、頭蓋骨に小孔を開けて挿入する脳室鏡のように、観血的に行うものもあります。
以前は、ファイバースコープが用いられており、ガラス繊維の柔軟性と屈曲しても光が通過する性質を応用して、数万本のグラスファイバーを束ね、両端にレンズを装着して病変を観察する仕組みのものでした。最近では、スコープの先端に固体撮像素子CCDを組み込んで、モニターテレビで観察する電子内視鏡(電子スコープ)が普及して一般的に用いられています。
カプセル型内視鏡は、CCDセンサーと超小型レンズを搭載したカプセルと無線送信機構(ベストのような物で体に着けておく)で、飲み込んだ患者の消化器内部の様子を外部モニターで観察するものです。上記のように、胃や腸のぜん動で体内を進み、8時間後には体外に排出されます。
カプセル型内視鏡は、2007年に保険適応となりました。通常の内視鏡検査の技術料に、使い捨てカプセルの7万7,200円を加えた9万4,200円。患者負担を除く額が保険で支払われるため、3割負担なら2万8260円を病院で支払うことになります。
ただ、医療費抑制を図りたい厚労省は、「チューブ型内視鏡やCT(コンピューター断層撮影法)で検査後、さらに検査が必要な事例に限る」と割高なカプセル型の普及に慎重な姿勢をとっています。また、医療機関は、解析用ワークステーションなど600万円強の機器を同社から購入することになるため、導入している所はまだ少ないのではないか、と思われます。
カプセル型内視鏡のメリット、デメリットは以下のようなものがあります。
従来の内視鏡は広く普及してますが、チューブを飲み込む際におう吐を抑えたり、のどの痛みを抑えるための表面麻酔が必要など、患者の負担も大きいです。
たとえば、表面麻酔を行うキシロカインなどでは、アナフィラキシーショックを起こす可能性もあり、注意が必要になります。また、上部消化管内視鏡検査においては、胃運動の抑制を目的とした前処置として、臭化ブチルスコポラミン(抗コリン薬)やグルカゴンが用いられます。ですが、これらの薬剤は緑内障や高血圧、前立腺肥大、心臓疾患、糖尿病などの基礎疾患があると、禁忌あるいは慎重投与を要する場合があります。こうした場合、カプセル型内視鏡ならばこうした薬剤による影響を考える必要が無くなります。
ただ、チューブ型内視鏡は、さまざまな処置具を装着することで止血やポリープ切除などを観察しながら同時に行えるメリットがあります。さらに、カプセル型は外部からコントロールできず、観察範囲が限られてしまう問題もあるそうです。
利点はたしかにあるものの、問題点もあり、まだ発展途上といった感のあるカプセル型内視鏡。今後のさらなる進化に期待したい所です。
【関連記事】
生活の中の医学
直腸からの粘液排出で、内視鏡検査などを受けた65歳女性
たとえば、表面麻酔を行うキシロカインなどでは、アナフィラキシーショックを起こす可能性もあり、注意が必要になります。また、上部消化管内視鏡検査においては、胃運動の抑制を目的とした前処置として、臭化ブチルスコポラミン(抗コリン薬)やグルカゴンが用いられます。ですが、これらの薬剤は緑内障や高血圧、前立腺肥大、心臓疾患、糖尿病などの基礎疾患があると、禁忌あるいは慎重投与を要する場合があります。こうした場合、カプセル型内視鏡ならばこうした薬剤による影響を考える必要が無くなります。
ただ、チューブ型内視鏡は、さまざまな処置具を装着することで止血やポリープ切除などを観察しながら同時に行えるメリットがあります。さらに、カプセル型は外部からコントロールできず、観察範囲が限られてしまう問題もあるそうです。
利点はたしかにあるものの、問題点もあり、まだ発展途上といった感のあるカプセル型内視鏡。今後のさらなる進化に期待したい所です。
【関連記事】
生活の中の医学
直腸からの粘液排出で、内視鏡検査などを受けた65歳女性