脳血管疾患による死亡率は北日本が高く、肝癌は西日本が高い−。厚生労働省が4日、発表した生活習慣病に関する都道府県別の死因分析結果で、こんな傾向が明らかになった。

調査は平成18年の人口動態統計(厚労省)と推計人口(総務省)を基に、年齢や性別による人口構成の違いをなくすよう統計処理した上で、11種類の疾病について都道府県別の死亡率を比較した。

それによると、脳血管疾患による死亡率1〜3位は男性が岩手、青森、秋田、女性が岩手、秋田、栃木で、北日本が目立った。肝がんによる死亡率は男性が福岡、佐賀、広島、女性が佐賀、福岡、大阪の順で高かった。

乳がんによる女性の死亡率が最も高かったのは東京で、最も低かったのは三重だった。
(脳血管疾患は北日本が中心 都道府県別の死因分析 厚労省)


脳血管疾患(障害)とは、全脳あるいは局所の脳症状をきたす原因となる、急性・慢性の脳血管の閉塞性および出血性疾患を指します。簡単に言ってしまえば、脳血管が詰まったり、破れて出血することで起こる疾患のことで、脳卒中などが代表的です。

具体的には、脳血栓症、脳塞栓症、脳実質内出血、くも膜下出血、硬膜外出血、硬膜下出血、脳静脈洞血栓症、一過性脳虚血発作、高血圧性脳症などがあります。

1951年以降、死亡原因のトップの座にあった脳血管障害は、1970年ごろより減少傾向をみせはじめ、1980年ごろには悪性腫瘍に、1985年には心臓病に抜かれ、死亡原因の第3位となりました。

ただ、死亡率が低下しても決して病気そのものが著明に減少したのでなく、有病率あるいは受療率は決して減少傾向を示していません。統計データとしては、脳出血による死亡が減少しているわりには、脳梗塞による死亡は横ばい状態が続いており、この背景としては、脳出血発症の減少および軽症化があると思われます。

以前は、「東高西低」などと呼ばれ、脳血管障害死亡率は東北地方から北関東、中部地方に高く、東海から近畿、山陰地方および東京、大阪などの大都市で低いとされていました。

最近ではこの地域差は減少しつつあると言われていましたが、上記のニュースでは、やはり脳血管障害死亡率は、北日本では多いようです。寒冷地に脳卒中の発症が多く、冬には特に脳出血が多い傾向があることから、やはり季節・気候が脳血管障害の発症には関連があるように思われます。

生活習慣と脳血管障害の関連性は、以下のようなものがあります。
原因となるのは、まず高血圧が挙げられ、脳血管障害発症の危険因子として最も重要であると言われています。収縮期・拡張期血圧いずれの上昇も、脳出血、脳梗塞両方の発症頻度を増加させます。少なくとも高度の高血圧に対する降圧療法は,脳卒中の発症率を低下させることが証明されています。

また、心疾患をもつ患者は、もたない患者に比べ脳卒中発症の危険が2倍以上高く、特に心房細動を伴う弁膜症は脳塞栓症の危険因子となります。他にも、糖尿病患者は、非糖尿病患者に比べて脳梗塞発症率が約4倍高いといったことや、高脂血症が脳梗塞とは関係があり、その治療が脳梗塞発症を低下させることが示されています。

さらに、脳梗塞と肥満は関係あるとされており、これは肥満者には高血圧など危険因子が多いことが考えられます。高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、低HDLコレステロール血症などこれら高脂血症が、特に脳梗塞と関係があり、また、その治療が脳梗塞発症を低下させることが指摘されています。

アルコール摂取や喫煙も、脳血管障害の発症には関連があります。アルコール摂取は、脳出血、慢性硬膜下血腫、およびくも膜下出血の発症を増加させると考えられています。特に、アルコールによる不整脈の発現は、脳梗塞の危険を増加させます。

喫煙は、特に若年者において脳血管障害の危険を増すことが指摘され、さらにヘマトクリットを増加させ、血液粘度を上昇させる(いわゆるドロドロ血液の状態)ことからもそのリスクを上げます。同様に、多血症、脱水などの高ヘマトクリットの状態は、血液粘度上昇を生じ、脳血流低下の原因となり、脳血管障害のリスクを上げます。ですので、夏場の脱水も注意する必要があります。

一度脳梗塞を経験した患者さんは、1年間に平均5〜10%の割合で再発を起こすということもあり、脳塞栓症例は再発時も塞栓症を呈することが多いといわれています。やはり、上記のようなリスクファクターがある場合は、しっかりと治療なさることが重要であると思われます。

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