読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
以前より夜になると脚がむずむずし、脚の置き場がなくなります。最近「むずむず脚症候群」という病気があることを知りました。どのような病気で、どこを受診すればよいのでしょうか。(群馬・50歳女性)

この相談に対して、代々木睡眠クリニック院長である井上雄一先生は以下のようにお答えになっています。
むずむず脚症候群では、横になっている時や座っている時にふくらはぎなどに不快感が生じ、じっとしていられなくなる症状が見られます。

夜間に悪化し、動いていると軽減するという特徴があります。患者は、この不快感のために、しばしば不眠に悩まされます。

この病気は、人口の2〜4%程度に見られ、決して珍しくはありません。どの年代でも起こりうるものですが、若干女性の方が頻度が高いようです。

発症する原因は、脳内のドーパミンというホルモンの働きの低下や、鉄分の欠乏などが関与すると考えられており、特に若い方で発症する場合には、遺伝的な要素があるのではないかと指摘されています。

また、妊娠中、腎不全、リウマチの方に多いことも知られています。

むずむず脚症候群(エクボム症候群、下肢静止不能症候群)とは、片側あるいは両下肢のふくらはぎ辺りを中心に、「虫が這うようなムズムズ感」や「刺されるような不快感」といった異常な感覚があり、そのため随意的または非随意的に足を「じっとしておられない」状態を指します。

主に夜間の入眠後30分以内に起きたり、1〜2時間にわたって持続します。そのため患者さんは、眠れなくなったり、不穏な状態になってしまいます。

この疾患の原因として、背景に貧血、ビタミン欠乏、癌、糖尿病や加齢などの関与が考えられているそうです。ですが、はっきりとした理由や病態は分かっていません。

むずむず脚症候群の患者さんの多くは、一晩に300回も断続的に脚を動かしており、この動きが血圧および心拍数の増大に関わっているという指摘もあり、心疾患または脳卒中になる比率が正常人の2倍以上ともいわれています。

治療に関して、井上先生は以下のようにお答えになっています。
有効な治療法はすでに確立されています。適切な治療が行われれば、9割以上の方で改善が得られます。パーキンソン病治療で用いるドーパミンの働きを補う薬などが有効です。現在、欧米で開発された薬剤を日本に導入するため、いくつかの臨床試験も行われています。

ご質問者の症状は、かなりこの病気に合致する部分があるようですので、一度医療機関で診断を受けるといいでしょう。

受診する場合には、日本睡眠学会のホームページで、学会認定医や認定医療機関を検索されてはいかがでしょうか。

上記のように、抗てんかん薬であるランドセン、リボトリール、催眠鎮静剤であるコンスタン、ソラナックス、マイスリーなどを就寝時に服用すると効果があるといわれています。また、抗パーキンソン病薬である、メネシット、ペルマックス、パーロデルなどが、効果を発揮することもあります。

また、病因の一つとして貧血が関係していることも指摘されており(神経系において、情報の受け渡しを行うドーパミンが、鉄分が不足すると分泌量が減り、情報を正しく伝えることができなくなってしまうといわれている)、そうした場合は貧血の治療(鉄剤の投与など)を行うことで症状が抑えられることも言われています。

疑わしい症状が出た場合、睡眠障害の専門医のいる病院を受診することが重要となります。悩まれている方は、上記のHPでお調べになってはいかがでしょうか。

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