愛知県の主婦(49)は、毎日のようにズキズキと頭が痛み、月に数日は寝込む。寺本神経内科クリニック(名古屋市)院長の寺本純さんに「片頭痛」と診断され、治療薬「トリプタン」の錠剤を飲んでいるが、効かないことも多い。昨年夏、自分で注射する自己注射薬の臨床試験に参加し、効果を実感した。今年2月に発売されて処方を受け、「持っていると安心」と話す。
頭痛には、くも膜下出血や風邪など、他の病気が原因で起きる場合と、頭痛そのものが患者を苦しめる「慢性頭痛」がある。後者には、月に数回ズキズキ痛み、吐き気を伴う「片頭痛」のほか、ほぼ毎日、頭が締め付けられるように痛む「緊張型頭痛」などがある。
このうち片頭痛は、強い痛みのため、寝込んで仕事や学校を休む人も多い。約800万人の患者がいると推計され、女性は男性の4倍多い。
片頭痛の治療薬として、トリプタンが2000年に登場、注射薬や錠剤、点鼻薬がある。医師の処方薬で、鎮痛薬が効かない頭痛にも効果がある。最も手軽で、広く使われているのは錠剤。ただし、効き始めるまでに30分ほどかかるため、重症の患者では、飲むタイミングが遅れると効かないことも多い。吐き気がひどいと、飲んだ錠剤を吐くこともある。
そんな時に効果的なのが注射薬だ。注射後、5〜10分で効き始める。しかし、片頭痛は体を動かすと悪化するため、痛みがひどい時は、注射のために医療機関に行くのは難しい。
そこで、自宅で使えるよう、トリプタンの一つ「スマトリプタン」(商品名イミグラン)の自己注射薬が発売された。使い方は簡単だ。注射液が入ったカートリッジをペン型の注射器にセット、太ももに押し当ててボタンを押す。バネで5ミリほどの針が飛び出して皮膚に刺さり、薬剤が注入される。
慢性頭痛の一つで、年に1〜2回、激しい痛みが1か月ほど続く「群発頭痛」にも、使用が認められた。ただし、注射液の値段(健康保険での自己負担額)は1本1000円強で、錠剤(1錠約300円)の3倍以上。ほかに、医師が使い方を教える指導管理料や、初診時には注射器本体の加算があり、さらに3000円以上負担が増える。
寺本さんによると、トリプタンを使い過ぎて効かなくなる例も報告されており、「効果の高い注射薬はなおさら、“いざという時のお守り”として慎重に使うべきだ」と言う。
今月、効き目が長時間持続する錠剤も発売され、国内で使えるトリプタンは5種類になった。寺本さんは「薬と患者との相性があり、もし一つが効かなくても別の種類が効くこともある。専門医に相談してほしい」と話している。
(片頭痛治療薬)
片頭痛とは、拍動性頭痛(ズキンズキンと脈打つような痛み)を主体として、これにさまざまな随伴症状を伴う発作性頭痛です。片頭痛には前兆を伴うものと伴わないものがあります。
片頭痛の発生メカニズムについては、まだ解明されていない部分もありますが、有力な説としては「セロトニン説」と「神経血管説」の2つがあるそうです。
片頭痛の特徴としては、「若くして発症し、女性に多く、主に片側性(両側性もありうる)に繰り返す拍動性の頭痛」です。悪心・嘔吐といった随伴症状を伴いやすく、体動、光、音で痛みが増強します。発作間欠期には症状は示しません。
約3割に視覚異常や麻痺や感覚障害などの前兆を伴う症例(前兆を伴う偏頭痛)があり、しばしば家族歴を有します。中でも、代表的前徴は視野の中心付近から始まるキラキラ光る境界をもつ暗点(閃輝暗点)です。前徴は5〜10分にわたって徐々に進行し、60分以内に治まり、引き続いて頭痛が出現します。
前兆を伴わない片頭痛は、最も多いタイプ(50〜80%)で、明らかな前駆症状を伴わず発現します。頭痛が4〜72時間持続します。日常の動作で増悪することがあり、光過敏、音過敏を認めることがあります。
誘因として空腹や寝不足、寝すぎ、アルコール、月経周期、経口避妊薬、運動、入浴、外出(騒音,暑さ,乾燥,日光での誘発)、匂い、ストレスなどが挙げられます。
治療としては、以下のようなものがあります。
頭痛には、くも膜下出血や風邪など、他の病気が原因で起きる場合と、頭痛そのものが患者を苦しめる「慢性頭痛」がある。後者には、月に数回ズキズキ痛み、吐き気を伴う「片頭痛」のほか、ほぼ毎日、頭が締め付けられるように痛む「緊張型頭痛」などがある。
このうち片頭痛は、強い痛みのため、寝込んで仕事や学校を休む人も多い。約800万人の患者がいると推計され、女性は男性の4倍多い。
片頭痛の治療薬として、トリプタンが2000年に登場、注射薬や錠剤、点鼻薬がある。医師の処方薬で、鎮痛薬が効かない頭痛にも効果がある。最も手軽で、広く使われているのは錠剤。ただし、効き始めるまでに30分ほどかかるため、重症の患者では、飲むタイミングが遅れると効かないことも多い。吐き気がひどいと、飲んだ錠剤を吐くこともある。
そんな時に効果的なのが注射薬だ。注射後、5〜10分で効き始める。しかし、片頭痛は体を動かすと悪化するため、痛みがひどい時は、注射のために医療機関に行くのは難しい。
そこで、自宅で使えるよう、トリプタンの一つ「スマトリプタン」(商品名イミグラン)の自己注射薬が発売された。使い方は簡単だ。注射液が入ったカートリッジをペン型の注射器にセット、太ももに押し当ててボタンを押す。バネで5ミリほどの針が飛び出して皮膚に刺さり、薬剤が注入される。
慢性頭痛の一つで、年に1〜2回、激しい痛みが1か月ほど続く「群発頭痛」にも、使用が認められた。ただし、注射液の値段(健康保険での自己負担額)は1本1000円強で、錠剤(1錠約300円)の3倍以上。ほかに、医師が使い方を教える指導管理料や、初診時には注射器本体の加算があり、さらに3000円以上負担が増える。
寺本さんによると、トリプタンを使い過ぎて効かなくなる例も報告されており、「効果の高い注射薬はなおさら、“いざという時のお守り”として慎重に使うべきだ」と言う。
今月、効き目が長時間持続する錠剤も発売され、国内で使えるトリプタンは5種類になった。寺本さんは「薬と患者との相性があり、もし一つが効かなくても別の種類が効くこともある。専門医に相談してほしい」と話している。
(片頭痛治療薬)
片頭痛とは、拍動性頭痛(ズキンズキンと脈打つような痛み)を主体として、これにさまざまな随伴症状を伴う発作性頭痛です。片頭痛には前兆を伴うものと伴わないものがあります。
片頭痛の発生メカニズムについては、まだ解明されていない部分もありますが、有力な説としては「セロトニン説」と「神経血管説」の2つがあるそうです。
1)セロトニン説
ストレス・緊張などにより脳が刺激を受けると、血液成分である血小板から血管を収縮させる作用を持つセロトニンが多量に放出されるようになり、脳内の血管が収縮する。時間の経過と共にセロトニンが分解・排泄されて減少すると、一度収縮した血管が逆に広がりはじめるようになり、この時に頭痛が起こるようになるというもの
2)三叉神経血管説
脳から伝えられた何らかの刺激が血管周囲にある三叉神経を刺激し、三叉神経の末端から血管を拡張させる作用をもつサブスタンスPなどのさまざまな神経伝達物質が分泌される。その結果、血管が広がり、その周囲に炎症が起こって頭痛として自覚されるというもの。
片頭痛の特徴としては、「若くして発症し、女性に多く、主に片側性(両側性もありうる)に繰り返す拍動性の頭痛」です。悪心・嘔吐といった随伴症状を伴いやすく、体動、光、音で痛みが増強します。発作間欠期には症状は示しません。
約3割に視覚異常や麻痺や感覚障害などの前兆を伴う症例(前兆を伴う偏頭痛)があり、しばしば家族歴を有します。中でも、代表的前徴は視野の中心付近から始まるキラキラ光る境界をもつ暗点(閃輝暗点)です。前徴は5〜10分にわたって徐々に進行し、60分以内に治まり、引き続いて頭痛が出現します。
前兆を伴わない片頭痛は、最も多いタイプ(50〜80%)で、明らかな前駆症状を伴わず発現します。頭痛が4〜72時間持続します。日常の動作で増悪することがあり、光過敏、音過敏を認めることがあります。
誘因として空腹や寝不足、寝すぎ、アルコール、月経周期、経口避妊薬、運動、入浴、外出(騒音,暑さ,乾燥,日光での誘発)、匂い、ストレスなどが挙げられます。
治療としては、以下のようなものがあります。
軽症例にはNSAIDsまたはエルゴタミン製剤に適宜制吐薬を併用します。トリプタン系薬物とは、セロトニンという1Bと1D受容体に選択的に作用して血管の拡張と炎症を抑える薬です。いずれも発作初期の服用で有効です。
エルゴタミン製剤については有効性も確認されていますが、ほかの内服薬に比し吐き気の副作用が多いためナウゼリン(胃腸機能調整薬)との併用が有用であるといわれています。吐き気の強い場合はNSAIDsの坐薬が使われることもあります。
中等から重症なものには、初めからトリプタン系薬剤を用います。ある程度頭痛が強くなってからでも効果がありますが、1錠当たりの薬価が高いというデメリットがあります。また、前兆期には使用できず、冠動脈疾患などを有する患者さんでは使用できません。
発作頻度が高いときや、発作が重度のときが多い場合には、予防治療を併用することもあります。ただ、すぐに効果が発現しない場合もあるので、有効性は少なくとも2ヶ月の投与をする必要があります。Ca拮抗薬(テラナス)やβ遮断薬(インデラル)、抗てんかん薬(デパケン)、抗うつ薬(トリプタノール)などが用いられます。
こうした治療でも反応しにくい患者さんの場合、上記のような自己注射が有効なことがあるようです。ただ、経済的な負担や、使い過ぎによる問題なども生じる可能性があり、主治医と相談の上、使用することが重要なようです。
【関連記事】
生活の中の医学
片頭痛のある女性は脳卒中リスクが高い
エルゴタミン製剤については有効性も確認されていますが、ほかの内服薬に比し吐き気の副作用が多いためナウゼリン(胃腸機能調整薬)との併用が有用であるといわれています。吐き気の強い場合はNSAIDsの坐薬が使われることもあります。
中等から重症なものには、初めからトリプタン系薬剤を用います。ある程度頭痛が強くなってからでも効果がありますが、1錠当たりの薬価が高いというデメリットがあります。また、前兆期には使用できず、冠動脈疾患などを有する患者さんでは使用できません。
発作頻度が高いときや、発作が重度のときが多い場合には、予防治療を併用することもあります。ただ、すぐに効果が発現しない場合もあるので、有効性は少なくとも2ヶ月の投与をする必要があります。Ca拮抗薬(テラナス)やβ遮断薬(インデラル)、抗てんかん薬(デパケン)、抗うつ薬(トリプタノール)などが用いられます。
こうした治療でも反応しにくい患者さんの場合、上記のような自己注射が有効なことがあるようです。ただ、経済的な負担や、使い過ぎによる問題なども生じる可能性があり、主治医と相談の上、使用することが重要なようです。
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