読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
子宮癌(頸癌・体癌)検診で、細胞診では異常なしでしたが、超音波検査で「子宮内膜肥厚」と言われました。通常約3mmの子宮内膜の厚さが4.4mmでした。どんな状態でしょうか。(64歳主婦)

この相談に対して、藤田保健衛生大病院産婦人科教授である宇田川康博先生は、以下のようにお答えになっています。
子宮体がん検診の主な検査は、子宮内の細胞診検査です。その補助的方法として、超音波で子宮内膜の厚さをみる画像検査が行われます。

子宮体がんや、がんの前段階の病変とされる子宮内膜増殖症では、子宮内膜が厚くなるからです。子宮内膜の厚さは、性成熟期の女性では、性周期で異なりますが、5〜20ミリぐらいの間を推移します。

不正出血があり、かつ超音波検査で子宮内膜の厚さが20ミリを超えるような時は、子宮内膜増殖症や子宮体がんの存在も考えて、子宮内の細胞診や組織診を行います。

一方、閉経後の女性では、子宮内膜は委縮して薄くなりますので、内膜の厚さは、超音波診断上、3ミリ以内にとどまるのがふつうです。この基準で考えますと、ご質問者は、年齢的に多少は子宮内膜の肥厚があるかと思われます。ただ、不正出血もないようですし、細胞診でも異常なしとのことから、まず心配ないと考えられます。

子宮体癌は、子宮内膜から発生し子宮癌の30〜40%を占めます。日本での罹患率は増加しています。好発年齢は50〜60歳代で閉経後の発生が約4分の3を占めますが、最近40歳未満の若年体癌の頻度も増えています。

確定診断は子宮内膜の組織診(子宮内膜細胞診による体癌検出率は90%以上)であり、補助診断としては細胞診、腫瘍マーカー(CA125など)、超音波断層法やCT/MRIなどの画像診断、子宮鏡などがあります。

超音波、MRI、CTなどの画像診断では、子宮腔内の腫瘤の大きさ、筋層への浸潤の有無と深さ、子宮頸部への進展の有無などが判定できます。経腟超音波断層法は,子宮内膜異常の観察に、必須の検査となっています。CTは所属リンパ節の腫大の有無により、リンパ節への転移を推定できます。腫瘍マーカーは、治療経過を追うのに役立ちます。子宮鏡は、組織の狙い切除や腫瘍の広がりの判定に役立ちます。

不正性器出血(子宮出血)は、子宮体癌患者の90%以上に認められ、参考になります。閉経後女性の子宮内膜は萎縮し薄くなります。超音波断層法で内膜の厚みが5mm以上の症例は体癌を疑うことになります(閉経前であっても15mmを超える内膜肥厚があれば疑う)。

上記のケースで、今後どのようにすればいいのか、宇田川さんは以下のようにお答えになっています。
念のため、1ヶ月後に再検査を受ければ、安心できると思います。

時には、卵巣に腫瘍などがあり、閉経後でも女性ホルモンが高くなり子宮内膜が肥厚することもあります。卵巣の異常や、内膜が厚く見える子宮内膜ポリープのような疾患がないかどうかも超音波検査で確認してもらうとよいでしょう。

次回の検査で今回以上の異常がなければ、定期的な経過観察で十分で、特別な治療の必要はありません。

鑑別すべき疾患としては、内膜増殖症、内膜ポリープ、粘膜下子宮筋腫などがあります。

内膜増殖症の場合、子宮鏡所見ではポリープ状や限局性の肥厚内膜像を呈するものが多く、異常血管像や潰瘍形成は認めません(体癌の子宮鏡所見としては、内膜の異常肥厚と隆起、怒張蛇行する異常血管像や潰瘍形成などが挙げられます)。こちらも内膜生検で確定診断を行います。

内膜ポリープ、粘膜下子宮筋腫では、内膜細胞診で鑑別できますが、時に子宮鏡検査を必要とすることもあります。

ご不安なこととは思われますが、再検査にて異常がないかどうかをはっきりさせることが重要であると考えられます。

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