手足のまひや視覚障害などの症状が出る神経難病「多発性硬化症」の治療薬インターフェロンベータの使用後に、副作用が出たり、症状が悪化したりするなどで37%が治療を中止していたことが、厚生労働省研究班の全国調査でわかった。
特に視神経と脊髄に主な病変がある「視神経脊髄型」の場合は症状が悪化する可能性があり、専門医は「効果と副作用をみながら慎重に使うべき」と話している。
脳や脊髄、視神経にある神経線維は、ミエリンという脂質で覆われている。多発性硬化症はこのミエリンが破壊される原因不明の病気だ。神経は脳と全身をつなぎ、電気信号をやりとりしているが、ミエリンには電気コードの被覆に当たる役割がある。破壊されると、視力障害や手足のまひ、しびれ、排尿障害などの症状が出る。重症だと寝たきりになることもある。
国内の推定患者は1万人以上。2000年に保険適用されたインターフェロンベータが唯一進行を抑える薬とされてきたが、近年、使用後に症状が悪化したという報告が相次いだ。厚生労働省研究班が全国調査を行うと、308人のうち117人(37%)が副作用などで治療を中止していたことがわかった。特に視神経脊髄型では、血液検査で抗体が陽性だった17人中14人が「症状の悪化」などを理由に治療を中止していた。
インターフェロンベータは、欧米では多発性硬化症の再発を約30%抑える薬として広く使われている。欧米の多発性硬化症は脳に大きな病変があるものがほとんどで、視神経脊髄型に当たる患者は数%しかいない。一方、日本には、視神経脊髄型の患者が多く、約3割を占める。病巣の分布が違うため、別の病気ではないかという議論がもともとあった。
2004年、米国と東北大のグループが視神経脊髄型だけに高率で見つかる抗体を発見した。同大神経内科教授の糸山泰人さんらの研究によると、視神経脊髄型の患者にはこの抗体に反応する脳や脊髄のたんぱく質に異常があったが、通常の多発性硬化症では異常がなかった。糸山さんは「分子レベルで見ると、両者は別の病気。治療法も当然異なる」と話す。
糸山さんは、視神経脊髄型なら、ステロイドの服用と、血液中の液体成分を入れ替える血漿交換を併用する治療に切り替えた方が良いという。抗体検査や画像から診断可能で、抗体検査は、東北大など3大学で無料で実施している。
ただし、インターフェロンベータが完全に無効かどうか結論は出ていない。国立精神・神経センター免疫研究部長の山村隆さんは「効果がある患者さんもいる反面、皮膚にかいようができたり、うつになったりするなどの副作用がある。使用には慎重な見極めが大切」と話す。
(多発性硬化症の治療薬)
多発性硬化症とは、原因不明の中枢神経の炎症性脱髄性疾患です。大脳、小脳、脳幹、視神経など中枢神経組織の主に白質に多巣性の限局性脱髄性病変が生じます。
中枢神経白質の障害に基づく様々な症候が出現し(空間的多発)、しかもこれらが再発・寛解を繰り返す(時間的多発)のが特徴的です。多発性硬化症に特異的な症候はありませんが、視力障害、運動麻痺、感覚障害などが様々な組み合わせで出現してきます。初発時の発症形式は、急性・突発性で、約1週間以内に症状が完成します。
視力障害としては、視神経病巣により片側または両側の視力低下をきたします。視神経炎発症時には、眼球運動時痛を伴うことが多く、乳頭黄斑線維が障害されやすいため、中心視力の障害が強いです。特にアジア人では、視力障害が高度になりやすいのが特徴で、両側全盲となる場合もあります。
運動麻痺としては、通常は上位運動ニューロン(錐体路)障害による痙性麻痺の型をとります。腱反射は亢進し、Babinski反射やChaddock反射などの病的反射がみられます。病変の高位により、痙性片麻痺(内包などの障害)、痙性四肢麻痺(頸髄病巣)、痙性対麻痺(胸髄病巣)を呈します。
感覚障害としては、異常感覚(ジンジン感など)、感覚鈍麻などが様々な分布でみられます。脊髄病巣ではレベルのある感覚障害、大脳病巣では顔面を含む半身の感覚障害を呈することが多いです。
必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
特に視神経と脊髄に主な病変がある「視神経脊髄型」の場合は症状が悪化する可能性があり、専門医は「効果と副作用をみながら慎重に使うべき」と話している。
脳や脊髄、視神経にある神経線維は、ミエリンという脂質で覆われている。多発性硬化症はこのミエリンが破壊される原因不明の病気だ。神経は脳と全身をつなぎ、電気信号をやりとりしているが、ミエリンには電気コードの被覆に当たる役割がある。破壊されると、視力障害や手足のまひ、しびれ、排尿障害などの症状が出る。重症だと寝たきりになることもある。
国内の推定患者は1万人以上。2000年に保険適用されたインターフェロンベータが唯一進行を抑える薬とされてきたが、近年、使用後に症状が悪化したという報告が相次いだ。厚生労働省研究班が全国調査を行うと、308人のうち117人(37%)が副作用などで治療を中止していたことがわかった。特に視神経脊髄型では、血液検査で抗体が陽性だった17人中14人が「症状の悪化」などを理由に治療を中止していた。
インターフェロンベータは、欧米では多発性硬化症の再発を約30%抑える薬として広く使われている。欧米の多発性硬化症は脳に大きな病変があるものがほとんどで、視神経脊髄型に当たる患者は数%しかいない。一方、日本には、視神経脊髄型の患者が多く、約3割を占める。病巣の分布が違うため、別の病気ではないかという議論がもともとあった。
2004年、米国と東北大のグループが視神経脊髄型だけに高率で見つかる抗体を発見した。同大神経内科教授の糸山泰人さんらの研究によると、視神経脊髄型の患者にはこの抗体に反応する脳や脊髄のたんぱく質に異常があったが、通常の多発性硬化症では異常がなかった。糸山さんは「分子レベルで見ると、両者は別の病気。治療法も当然異なる」と話す。
糸山さんは、視神経脊髄型なら、ステロイドの服用と、血液中の液体成分を入れ替える血漿交換を併用する治療に切り替えた方が良いという。抗体検査や画像から診断可能で、抗体検査は、東北大など3大学で無料で実施している。
ただし、インターフェロンベータが完全に無効かどうか結論は出ていない。国立精神・神経センター免疫研究部長の山村隆さんは「効果がある患者さんもいる反面、皮膚にかいようができたり、うつになったりするなどの副作用がある。使用には慎重な見極めが大切」と話す。
(多発性硬化症の治療薬)
多発性硬化症とは、原因不明の中枢神経の炎症性脱髄性疾患です。大脳、小脳、脳幹、視神経など中枢神経組織の主に白質に多巣性の限局性脱髄性病変が生じます。
中枢神経白質の障害に基づく様々な症候が出現し(空間的多発)、しかもこれらが再発・寛解を繰り返す(時間的多発)のが特徴的です。多発性硬化症に特異的な症候はありませんが、視力障害、運動麻痺、感覚障害などが様々な組み合わせで出現してきます。初発時の発症形式は、急性・突発性で、約1週間以内に症状が完成します。
視力障害としては、視神経病巣により片側または両側の視力低下をきたします。視神経炎発症時には、眼球運動時痛を伴うことが多く、乳頭黄斑線維が障害されやすいため、中心視力の障害が強いです。特にアジア人では、視力障害が高度になりやすいのが特徴で、両側全盲となる場合もあります。
運動麻痺としては、通常は上位運動ニューロン(錐体路)障害による痙性麻痺の型をとります。腱反射は亢進し、Babinski反射やChaddock反射などの病的反射がみられます。病変の高位により、痙性片麻痺(内包などの障害)、痙性四肢麻痺(頸髄病巣)、痙性対麻痺(胸髄病巣)を呈します。
感覚障害としては、異常感覚(ジンジン感など)、感覚鈍麻などが様々な分布でみられます。脊髄病巣ではレベルのある感覚障害、大脳病巣では顔面を含む半身の感覚障害を呈することが多いです。
必要な検査や治療としては、以下のようなものがあります。
病歴で神経症状の再発寛解、MRI・T2強調画像で中枢神経白質に大小不同の病変が多発、髄液で炎症所見(リンパ球増加、蛋白、IgG増加)があれば多発性硬化症が最も考えられます。さらに、MRIで6mm以上の卵円形の病巣、髄液で髄鞘塩基性蛋白増加があれば、より疑われます。
多発性硬化症の脱髄巣は、T2強調画像、プロトン強調画像、FLAIR画像で高信号、T1強調画像で低信号域として描出されます。急性期の病巣はガドリニウム造影T1強調画像で増強効果を示すことが多いです。MRI病巣は大脳では側脳室周囲白質にみられることが多いです。
髄液検査としては、急性増悪期には軽度の細胞増多(主として単核球)や蛋白増加を認めることが多く、髄液IgG量(IgG indexなど)が上昇、髄鞘の崩壊を反映してミエリン塩基性蛋白の上昇をみる例が多いです。
治療としては、急性期、寛解期の再発予防および対症療法に分けられます。
急性期には保険適用外であるがステロイドパルス療法が第1選択で、回復が不十分な場合、パルス療法の再施行か血漿交換(保険適用)を考慮します。
再発予防にはインターフェロンβが行われ、再発を30%減少させるといわれています。副作用としては、発熱、感冒様症状、注射部位の皮膚の発赤壊死、白血球減少、肝障害があります。
上記のように、多発性硬化症のタイプによっては、むしろ悪化させてしまうこともあるようです。抗体検査や画像から診断可能とのことなので、しっかりとした診断のもと、治療を行うことが重要なようです。
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生活の中の医学
化学療法が有害な大腸癌のタイプもある?
多発性硬化症の脱髄巣は、T2強調画像、プロトン強調画像、FLAIR画像で高信号、T1強調画像で低信号域として描出されます。急性期の病巣はガドリニウム造影T1強調画像で増強効果を示すことが多いです。MRI病巣は大脳では側脳室周囲白質にみられることが多いです。
髄液検査としては、急性増悪期には軽度の細胞増多(主として単核球)や蛋白増加を認めることが多く、髄液IgG量(IgG indexなど)が上昇、髄鞘の崩壊を反映してミエリン塩基性蛋白の上昇をみる例が多いです。
治療としては、急性期、寛解期の再発予防および対症療法に分けられます。
急性期には保険適用外であるがステロイドパルス療法が第1選択で、回復が不十分な場合、パルス療法の再施行か血漿交換(保険適用)を考慮します。
再発予防にはインターフェロンβが行われ、再発を30%減少させるといわれています。副作用としては、発熱、感冒様症状、注射部位の皮膚の発赤壊死、白血球減少、肝障害があります。
上記のように、多発性硬化症のタイプによっては、むしろ悪化させてしまうこともあるようです。抗体検査や画像から診断可能とのことなので、しっかりとした診断のもと、治療を行うことが重要なようです。
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