落語家・桂歌丸(71)が、5月に腰部の手術を受けていたことが12日、分かった。

歌丸は06年5月に腰の骨が神経を圧迫する「変性側弯症に伴う腰部脊柱管狭窄症」で手術を受けており、今回は当時の患部の下の部分。5月26日に入院し、翌27日に手術。今月9日に退院しており現在、自宅療養中だ。歌丸は「前の手術より4倍くらい厳しかった。ボルト8本入れたんです」と明かした。

現在は「(医師の)先生からは同じ姿勢を長く取らないようにと言われています」。司会を務める日テレ系「笑点」は、今月下旬の放送分について休むことを15日の放送で伝える予定。26日の独演会から復帰できる方向だ。
(桂歌丸、手術していた!)


腰部脊柱管狭窄症とは、神経組織を入れる腰部脊柱管あるいは椎間孔部がさまざまな原因によって狭窄を来し、馬尾(脊髄の下端から伸びている神経の束は、馬の尻尾に似ているので、こう呼ばれます)や脊髄神経根が圧迫されることによって発症する症候群です。

腰部脊柱管狭窄症の症状としては、間欠性跛行が最も頻度が高いといわれています。これは、少し歩くと脚が痛くて歩けなくなり、少し休むと歩けるようになる、という現象です。ですが、自転車なら長時間漕いでいられる、というのがこの疾患の特徴でもあります。両下肢に症状が観察され,膀胱直腸症状(失禁など)が観察される場合は、馬尾の障害が考えられます。

診断としては、画像検査では単純X線写真、機能撮影以外にMRI,CTが診断に有用であるといわれています。確定診断としては、神経学的所見(どこの筋力が低下しているとか、知覚障害が起こっているとか)と、画像所見とが一致するか否かが重要であるといわれています。

歌丸さんの場合、こうした腰部脊柱管狭窄症に先立ち、変性腰椎側弯があったようです。変性腰椎側弯とは、中高年齢者においてX線前後像で、腰椎部にCobb法の測定で10°以上の側弯が存在する例の総称です。側弯の存在は、角度が20°以上になれば,外見上も腰椎隆起、ウエストラインの非対称などにてある程度分かってきます。側弯変形の原因は、椎間板変性に存在すると考えられています。

こうした側弯変形に伴う臨床上の問題としては、変形に伴って起こるバランス異常や椎間板変性、そして脊柱管狭窄による馬尾性、神経根性の神経症状などが起こってきます。

側弯変形が外見上明らかでない症例における症状としては、椎間板変性による腰背部痛と脊柱管狭窄による下肢痛、しびれ、歩行障害などの神経症状が現れてきます。側弯変形が明らかで、体幹バランス異常がみられるような例においては、腰背部の倦怠感や立位歩行障害を示すことがあります(ただし、ここまでに至るのは全体の5%程度であるといわれています)。

診断としては、以下のように行います。
まず、視診で頚部から腰背部、殿部まで観察できる状態にして、立位と歩行状態のチェックを行います。側弯の有無は、立位静止時のウエストラインおよび骨盤の高さの非対称の有無を検討し、前屈姿勢における腰部隆起の状況などでみます。

また、脊柱全体の側弯変形の存在の有無をみるため、肋骨隆起および肩甲骨の非対称もあわせ検討します。股関節検査である歩容異常、Trendelenburg徴候(患肢片脚起立させて、脚をついていない遊脚側の骨盤が沈下するかどうかをみる検査)、関節可動域検査も必ず施行する必要があります。

腰部神経症状の検査としては、腰椎の可動域検査、運動時痛、圧痛点、神経過伸展テスト(SLR、FNST試験)、運動知覚神経機能の検査などでチェックする必要があります。
 
X線撮影では、腰椎部X線において10°以上の側弯存在例では全脊柱立位2方向撮影を行い、全体的なバランスを把握します。

MRIやミエログラフィー、CT撮影は、神経症状の病態把握に必要となります。特にMRIでは、病態存在部位を中心とした3椎間にわたる連続的な撮像を行い、脊柱管内や脊柱管外の狭窄状態を把握できます。

前回以上の大がかりな手術を受けられ、非常に大きな負担になってしまったのではないか、と思われます。しっかりと静養なさっていただきたいと思います。

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