読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
2歳の息子の便秘で悩んでいます。生後2、3ヶ月から便が出にくくなりました。水分や食事はきちんと取っていますが、ひどくなるばかりです。どうしたらいいでしょう。(38歳母)

この相談に対して、おかの小児科院長である岡野周子先生は、以下のようにお答えになっています。
排便は、1週間に3回以上あることが望ましいとされています。回数が少ないことだけでなく、便が硬くなって出にくくなるということも便秘のトラブルの一つです。お子さんは生後しばらくは便秘がなく、ほかには問題のない様子ですので、体に異常があることで起こる便秘ではないと考えられます。

肛門のすぐ上にある直腸に便がたまると、脳に便意を感じさせる「排便反射」が起きます。しかし、便秘が続くと、直腸に便がたまっても反射が起きにくくなります。

また、排便時に何回か痛い思いをすると、自ら便意を我慢し、その場をしのごうとします。すると、さらに便が硬くなって出にくくなるという悪循環に陥ってしまいます。

便秘とは、排便が順調に行われず糞便が長期間腸管内に停滞する状態を指し、3〜4日以上便通がない場合に便秘と表現することが多いです(ただし、医学的に厳密な定義はありません)。分類はとしては、おおまかに器質性、機能性、薬剤性、症候性などに分類できます。

機能性の便秘としては、
・一過性便秘:旅行や環境の変化などにみられる一過性の便秘で、頻度が高い。
・弛緩性便秘:大腸の運動の減退に基づくもので、老年者や無力体質、多産婦などに多く、腹部膨満感を訴えることが多い。
・痙攣性便秘:腸管の緊張の亢進によって起こる。腸管の痙攣性収縮のため、兎糞様の便を認める。壮年の男性で太った人や過敏性腸症候群に多い。
・直腸性便秘:痔疾や肛門の痛みによる便秘
などがあります。

薬剤性の便秘では、抗コリン剤や制酸剤、フェノチアジン系の薬剤を飲むことで起こるものを指します。該当する薬剤は非常に多岐にわたります。精神科領域による薬剤使用者では、頻度が非常に高いといわれています。

症候性便秘としては、大腸癌(出血を伴う場合には、直腸癌やS状結腸癌が多い。慢性といっても1年以内に便秘を訴える人に多い)、炎症性腸疾患(Crohn病、潰瘍性大腸炎、腸結核、虚血性大腸炎狭窄型など)に伴う狭窄、全身性疾患に伴うもの(糖尿病や甲状腺機能不全症などで頻度は多い)などがあります。

発症時期によって、上記のようなケースの他に、新生児期では肛門閉鎖、幼児期ではHirschsprung病、思春期では過敏性大腸症候群の便秘型、常習性便秘などを疑います。中・高齢者になると、常習性便秘、弛緩性便秘、比較的短期の発症の場合は大腸癌、急激な発症ではイレウスなどを疑います。

上記のケースでは、以下のように岡野先生はアドバイスされています。
改善方法は、直腸に便をためないようにすることです。そのために、今より多く水分をとる、日常的に食物繊維をとるなど、便を軟らかくする工夫をしてください。その上で、便を軟らかくする薬や、整腸剤、下剤などは、医師と相談して適切に使いましょう。

おむつがとれているのなら、1日1回は食後に5〜10分ぐらいトイレに座ることを、無理強いせずに習慣づけてみてください。

お子さんが自然に便意を感じ、怖がらずに排便できる習慣がつくまでは、しばらくかかることもありますが、気長に対処されると良いと思います。座薬、浣腸などはどうしても便がたまってしまった時だけにしましょう。

このようなケースでは、必要なのはまず生活指導で、排便反射を促すために朝食は決まった時間に摂取したり、わずかな便意でも逃すことなく、十分時間をかけて排便させるなど、排便習慣を是正することが重要になります。

食事指導としては、便の容量を増加させ大腸を刺激し、蠕動運動を促進する食物繊維の摂取が勧められます。こうしたことで改善が難しい場合、薬物療法が必要となります。

お子さんの場合、上記のようなケースは比較的多いのではないか、と思われます。薬物療法に頼る前に、しっかりと生活習慣を改善するなど、まずできることから始めることが重要と思います。

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