以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

毎日、様々な人の相談や書類の作成に追われていた行政書士のF・Aさん(53)。その日も深夜に帰宅し、遅い夕食を摂ろうとした時、心臓がドキドキし胸の圧迫感に襲われました。

3ヶ月後、今度は喉が圧迫される感覚に襲われたF・Aさん。その異変を同僚に話すと、更年期障害の症状だと言われました。少しでも症状が和らいでくれればと、更年期障害の市販薬を飲んでいたF・Aさんですが、さらなる異変が襲いかかります。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)再び胸を圧迫感が襲う
上記のように動悸がし、胸の上に何かが乗っかっているかのような圧迫感を感じました。ですが、それでも「更年期障害のせいだろう」と病院にいくこともありませんでした。
2)胸の痛み
締めつけられるような圧迫感以外に、今度は胸の痛みを感じ、ついには倒れてしまいました。

このような症状が現れ、病院に運ばれたF・Aさん。そして、その後に大学病院で診断された結果は、「微小血管狭心症」と呼ばれるものでした。

微小血管狭心症とは、以下のようなものを指します。
微小血管狭心症とは、冠状動脈造影検査で見えない大きさの微小冠血管の異常によって生じる狭心症のことです。この病は、アメリカで1980年代に提唱された比較的新しいものであり、いまだ認知度が低く、検査で見過ごされ、ドクターショッピングを繰り返してしまう人も多いといわれています。

心臓の筋肉の中を走る細い血管が狭くなり、一時的に血流が滞ることで胸の痛みなどを引き起こすことになります。血管が狭くなってしまう原因に、深く関係しているのが、女性ホルモンでした。女性ホルモンは、45歳〜55歳の閉経前後に、急激に減少します。これがいわゆる更年期と呼ばれる時期であり、実はこの更年期に、微小血管狭心症は起こりやすいといわれています。

主に卵巣から分泌される、女性ホルモンであるエストロゲンの重要な役割は、卵巣自身に働きかけ、その細胞から卵子を作り、排卵の準備をすることです。さらに、もう一つ大切な役割として、血管の太さを拡張し、血管の内膜が傷つかないよう保護することがあります。

そのため、女性ホルモンが出ている間は、女性は心筋梗塞など血管の病になりにくいと言われています。しかし、更年期を迎え、女性ホルモン・エストロゲンが減少すると、血管が徐々に収縮し、詰まりやすい状態に陥ってしまいます。

閉経から65歳ぐらいまででは、脳血管障害、虚血性心疾患など高脂血症や動脈硬化に起因する疾患の増加がみられます。また、閉経後10年頃までは急激な骨量減少がみられ、これらはともにエストロゲン低下が関与しているといわれています。

診断には、狭心症らしい胸痛発作があり、心電図で発作時にST変化があるにもかかわらず、冠状動脈造影検査で狭窄や攣縮がないことを確認することが必要となります。

微小血管狭心症は、労作時あるいは安静時に発症しやすいといわれ、発作を予防するためにはカルシウム拮抗薬やACE阻害薬が試されています(まだ有効な治療法は確立されていません)。

更年期障害でも、動悸や息切れなど様々な症状が出ます。ですが、こうした陰に思わぬ病が隠れていることもあります。そうしたことを念頭において、病院を受診する、といったことも重要であると思われます。

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