前立腺は、男性の膀胱の近くにある臓器。がんの治療で摘出すると、前立腺に隣接する尿道括約筋が傷つくことがある。尿道括約筋は尿道を締めて尿漏れを防ぐ筋肉で、傷つくと尿が漏れる。
漏れる尿量が1日に100mlを超える重い尿失禁は、年間約2万件行われている前立腺の摘出手術の1%で起きているとみられる。東北大病院副院長(泌尿器科)の荒井陽一さんは「重い尿失禁には、人工括約筋の埋め込み手術しか、有効な治療法はない」と説明する。
人工括約筋は合成樹脂製で、尿道を締めたり緩めたりするカフと呼ばれる小さなリングや、直径約3・5センチの球などで構成され、腹部に埋め込む。
リングの締め付けを調節するポンプ(長さ約2センチ)を陰のう内に埋め込み、水の入ったチューブでリングと結ぶ。
リングは通常、尿漏れを防ぐために尿道を締めている。排尿時は、ポンプのスイッチを皮膚の上から押すと、リングに入っていた水が球へ排出されて締め付けが緩み、尿が放出される仕組みだ。スイッチを押すのをやめると、緩んだリングは水圧で、2〜3分かけて元の尿道を締める状態に戻る。
埋め込み手術にかかるのは約2時間だが、実際に人工括約筋を使えるのは、手術の傷が癒えた1か月半ほど後からという。
国内では1994年から約100件の手術が行われ、9割以上の患者が「日常生活に困らない程度まで尿漏れが軽くなった」としている。
ただ、課題もある。米国では年間4500件も行われている一般的な手術だが、国内では手術に熟練した医師が少ない。また、埋め込み手術の際に菌などに感染する合併症が約20%に発生、人工括約筋が作動しない例も5%起きている。
人工括約筋のメーカーが器具を改良したことから、国の認可が改めて必要となった。このため、各病院は現在、手術を一時中断し、今後の手術希望や治療の相談のみを受け付けている。
治療が再開された場合、一部保険がきく先進医療に指定されている病院もあるが、多くの病院では保険がきかず、全額自己負担で約150万円かかる。
荒井さんは「重い尿失禁で、おむつ代など経済的にも精神的にもつらい人は多いはず。器具に対する国の認可が早くおりて保険適用され、治療を普及させたい」と話す。
(人工尿道括約筋)
前立腺癌は、主に前立腺外腺(peripheral zone)より発生する腺癌です。臨床癌は50歳以上の男性に多く、高齢になるほど発生率が高いです。日本人の罹患率は、欧米諸国およびアメリカの日系移民より低いといわれています。同じ日本人でも、米国在住者の頻度は高く、食生活の関与が考えられます。
罹患率は、1975年以降増加していますが、その理由の1つとして前立腺特異抗原であるProstate Specific Antigen (PSA)という腫瘍マーカーによる診断方法の普及によると考えられます。
症状としては、発生部位が周辺部なので早期癌だけでは排尿障害などの症状はありません。ただし、肥大症と合併することが多く、排尿障害があることもあります。骨転移による症状も起こることがあり、骨の痛み、病的骨折、進行例では造血機能障害、発熱などがみられることもあります。
診断としては、直腸指診で大きさ、硬さ、被膜周囲の状態をみます。経直腸的超音波断層法(transrectal ultrasonography;TRUS)でも、同様に経直腸的に前立腺の大きさ、エコーレベル、被膜の状態がわかります。
前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)は、前立腺肥大症(BPH)でも上昇しますが、前立腺癌ではさらに上昇します。75〜95%の前立腺癌患者では異常高値(>4ng/ml)を示し、病勢,癌細胞の量をよく反映し、治療が奏功すると低下、前立腺全摘除術後は測定限界以下となります。
骨盤CT、MRIでは、前立腺の形態と骨盤内リンパ節の腫大を判定できます。骨シンチグラフィーでは、いずれかの骨に異常積像を認めれば転移が考えられます。
前立腺針生検では、確定診断ができ、経直腸超音波断層法ガイド下6ヶ所の生検を行います。血清PSA >10ng/mlでは癌発見率40%、血清PSA 4〜10ng/ml(グレーゾーン)では癌発見率10%であるといわれています。
手術については、以下のようなことが言えます。
漏れる尿量が1日に100mlを超える重い尿失禁は、年間約2万件行われている前立腺の摘出手術の1%で起きているとみられる。東北大病院副院長(泌尿器科)の荒井陽一さんは「重い尿失禁には、人工括約筋の埋め込み手術しか、有効な治療法はない」と説明する。
人工括約筋は合成樹脂製で、尿道を締めたり緩めたりするカフと呼ばれる小さなリングや、直径約3・5センチの球などで構成され、腹部に埋め込む。
リングの締め付けを調節するポンプ(長さ約2センチ)を陰のう内に埋め込み、水の入ったチューブでリングと結ぶ。
リングは通常、尿漏れを防ぐために尿道を締めている。排尿時は、ポンプのスイッチを皮膚の上から押すと、リングに入っていた水が球へ排出されて締め付けが緩み、尿が放出される仕組みだ。スイッチを押すのをやめると、緩んだリングは水圧で、2〜3分かけて元の尿道を締める状態に戻る。
埋め込み手術にかかるのは約2時間だが、実際に人工括約筋を使えるのは、手術の傷が癒えた1か月半ほど後からという。
国内では1994年から約100件の手術が行われ、9割以上の患者が「日常生活に困らない程度まで尿漏れが軽くなった」としている。
ただ、課題もある。米国では年間4500件も行われている一般的な手術だが、国内では手術に熟練した医師が少ない。また、埋め込み手術の際に菌などに感染する合併症が約20%に発生、人工括約筋が作動しない例も5%起きている。
人工括約筋のメーカーが器具を改良したことから、国の認可が改めて必要となった。このため、各病院は現在、手術を一時中断し、今後の手術希望や治療の相談のみを受け付けている。
治療が再開された場合、一部保険がきく先進医療に指定されている病院もあるが、多くの病院では保険がきかず、全額自己負担で約150万円かかる。
荒井さんは「重い尿失禁で、おむつ代など経済的にも精神的にもつらい人は多いはず。器具に対する国の認可が早くおりて保険適用され、治療を普及させたい」と話す。
(人工尿道括約筋)
前立腺癌は、主に前立腺外腺(peripheral zone)より発生する腺癌です。臨床癌は50歳以上の男性に多く、高齢になるほど発生率が高いです。日本人の罹患率は、欧米諸国およびアメリカの日系移民より低いといわれています。同じ日本人でも、米国在住者の頻度は高く、食生活の関与が考えられます。
罹患率は、1975年以降増加していますが、その理由の1つとして前立腺特異抗原であるProstate Specific Antigen (PSA)という腫瘍マーカーによる診断方法の普及によると考えられます。
症状としては、発生部位が周辺部なので早期癌だけでは排尿障害などの症状はありません。ただし、肥大症と合併することが多く、排尿障害があることもあります。骨転移による症状も起こることがあり、骨の痛み、病的骨折、進行例では造血機能障害、発熱などがみられることもあります。
診断としては、直腸指診で大きさ、硬さ、被膜周囲の状態をみます。経直腸的超音波断層法(transrectal ultrasonography;TRUS)でも、同様に経直腸的に前立腺の大きさ、エコーレベル、被膜の状態がわかります。
前立腺特異抗原(prostate specific antigen;PSA)は、前立腺肥大症(BPH)でも上昇しますが、前立腺癌ではさらに上昇します。75〜95%の前立腺癌患者では異常高値(>4ng/ml)を示し、病勢,癌細胞の量をよく反映し、治療が奏功すると低下、前立腺全摘除術後は測定限界以下となります。
骨盤CT、MRIでは、前立腺の形態と骨盤内リンパ節の腫大を判定できます。骨シンチグラフィーでは、いずれかの骨に異常積像を認めれば転移が考えられます。
前立腺針生検では、確定診断ができ、経直腸超音波断層法ガイド下6ヶ所の生検を行います。血清PSA >10ng/mlでは癌発見率40%、血清PSA 4〜10ng/ml(グレーゾーン)では癌発見率10%であるといわれています。
手術については、以下のようなことが言えます。
前立腺がんの治療法には、手術療法、放射線治療、内分泌療法、さらには特別な治療を実施せず、当面経過観察する待機療法があります。限局した腫瘍には根治的前立腺全摘術や放射線療法が、進行した場合には抗男性ホルモン療法が一般的に行われます。
手術療法は、適応は限局性癌、すなわちstage A、Bです。最近、局所浸潤度に対しネオアジュバントとしての内分泌療法を行い、縮小をはかった後、手術する方法もとられています。手術方法は所属リンパ節も含め、前立腺、精嚢を一塊として摘出します。
手術の方法には下腹部を切開して前立腺を摘出する場合(恥骨後式前立腺全摘除術)と腹腔鏡とよばれる内視鏡下に切除する方法、あるいは肛門の上を切開して前立腺を摘出する方法(会陰式前立腺全摘除術)があります。
副作用として、尿失禁と性機能障害があります。尿失禁に関しては、上記のように1%程度の手術で起こっているようです。ただし、この手術では性機能障害は精管が切断されるため術後、射精することができません。ですが、勃起神経を残す神経保存術も行われています。
生活を送る上で大きな問題となる尿失禁が、改善するとなれば非常に患者さんにとって有意義な治療であると思われます。保険適応や実施施設が今後も増えていくことが望まれます。
【関連記事】
腫瘍にまつわるニュースまとめ
より負担を軽くした胃癌手術法?トロッカー併用小開腹手術
手術療法は、適応は限局性癌、すなわちstage A、Bです。最近、局所浸潤度に対しネオアジュバントとしての内分泌療法を行い、縮小をはかった後、手術する方法もとられています。手術方法は所属リンパ節も含め、前立腺、精嚢を一塊として摘出します。
手術の方法には下腹部を切開して前立腺を摘出する場合(恥骨後式前立腺全摘除術)と腹腔鏡とよばれる内視鏡下に切除する方法、あるいは肛門の上を切開して前立腺を摘出する方法(会陰式前立腺全摘除術)があります。
副作用として、尿失禁と性機能障害があります。尿失禁に関しては、上記のように1%程度の手術で起こっているようです。ただし、この手術では性機能障害は精管が切断されるため術後、射精することができません。ですが、勃起神経を残す神経保存術も行われています。
生活を送る上で大きな問題となる尿失禁が、改善するとなれば非常に患者さんにとって有意義な治療であると思われます。保険適応や実施施設が今後も増えていくことが望まれます。
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