都市部の働き盛りの男性で、心筋梗塞の発生率が80年代末からの約15年間で、2倍以上に増えたことが、大阪府立健康科学センターの疫学調査で分かった。都市部の女性や農村部の男女に増加傾向はなかった。心筋梗塞はストレスのかかる管理職に多い病気とされるが、都市部で広く中高年男性に増えている実態が浮き彫りになった。性別や居住地に応じた健康対策が求められそうだ。

人口や産業形態などから都市部の代表に大阪府八尾市の一地区、農村部の代表に秋田県井川町を選び、64〜03年の40年間の住民延べ約16万人の健診データを解析した。

その結果、都市部の中高年(40〜69歳)の男性で心筋梗塞を発症したのは、88〜95年の8年間で人口10万人当たり56人だったのに対し、96〜03年の8年間では2.3倍の同127人だったことが分かった。

ほぼこの間に、心筋梗塞の危険因子の喫煙率は地域や性別などに関係なく横ばいまたは減少している。しかし、都市部の中高年男性では、別の危険因子である総コレステロール値や肥満度の目安の体格指数(BMI)が5〜7%悪化し、発症の危険性が高くなっていた。

センターの北村明彦医師(循環器疫学)は「外食を取る機会の多い都市部の中高年男性は食環境の欧米化に伴い、脂肪分や高カロリーの食材を取りやすい。労働環境が厳しくなり、ストレスも高まっている」と話す。
([心筋梗塞]15年で2倍 都市部の中高年男性、ご注意)


心筋梗塞とは、心臓が栄養としている冠動脈の血流量が下がって心筋が虚血状態になり、結果として壊死してしまった状態です。男女比は 4〜5:1 と男性に多く、60歳代に最も多いといわれています。ですが、上記のように生活習慣の変化から40〜50歳代の若年発症も増加傾向にあります。

冠動脈が閉塞する原因としては、冠動脈の粥状動脈硬化による狭窄が基礎にあります。粥状動脈硬化(アテローム硬化)とは、脳や心臓などの太い動脈内にコレステロールなどが沈着し、粥状のかたまりができて血管内が細くなった状態です。

具体的には、冠動脈内膜下に形成された粥腫(血管壁にたまったコレステロールが、血管の内側にこびりついたもの)が破綻し、 血小板が凝集して冠動脈血栓の形成が起こり、結果として冠動脈が完全閉塞して起こると考えられています。

心筋梗塞を引き起こす要因としては、喫煙や高コレステロール血症(特に高LDLコレステロール血症)、糖尿病や高血圧であるといわれています。メタボリック症候群(内臓脂肪症候群)の人はそうでない人に比べて、心筋梗塞など心臓血管系の病気になる危険性が男性で約2.5倍、女性で約1.8倍になるとされています。

心筋梗塞の原因となる動脈硬化のリスクファクターは、以下のようなものがあります。
動脈硬化の最大の危険因子は年齢であり、加齢とともに有病率は増加します。特に、
45歳以上の男性、閉経後の女性は動脈硬化予備軍となります。そのため、年齢を重ねていくにつれて動脈硬化の他の危険因子である
・高コレステロール血症(>220mg/dl)
・高血圧(≧140/≧90mmHg)
・喫煙習慣
・耐糖能異常(日本糖尿病学会基準で境界型、糖尿病型)
・肥満[肥満指数(BMI)≧ 25kg/m^2]
・低HDL血症(<35mg/dl)
・運動不足

これらの項目が問題となります。

特に、高血圧、喫煙などの矯正可能な危険因子をできるだけ除く必要があります。血圧は140/90mmHg未満(心不全、腎機能障害、糖尿病がある場合は 130/85mmHg 未満)とし、血清LDL-コレステロール値は 100mg/dl 未満、血糖正常,HbA1cは 7%未満、BMIは 21〜25kg/m2を目標とします。その他、1回 30分、週 3〜4回の運動が推奨されています。

高脂血症の治療法としては、食事療法、運動療法などによるライフスタイル改善が根幹にあります。カロリー制限・栄養素配分などに加え、1日3食の配分をほぼ均等にし、間食をしないなどの食生活の改善も重要です。

3〜6ヶ月観察しても管理基準に達しない場合には、薬物療法を開始します。ただ、動脈硬化性疾患を生じた症例や、LDL-C値が200mg/dLを超えておりライフスタイル改善のみではコントロール困難な症例では、早期から薬物療法を開始します。

「危険因子である総コレステロール値や肥満度の目安の体格指数(BMI)が5〜7%悪化」ということが上記で指摘されているとおり、やはりまずはライフスタイルの見直しが重要であると思われます。

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