イギリスのHertfordshireという地域に住むルースさん(38歳)は、自分の3歳の息子が笑うたびにひやひやしている。彼女の息子は、笑うことでてんかんを発症する、という非常に珍しい病気を患っているためだ。

ルースさんによれば、彼女の息子は生まれて18ヶ月の時、手を空に向かって伸ばして大笑いし始めた。まるで、自分には見えないものが息子には見えているような感じだったという。その後彼女は、息子が両手を空に向かって伸ばしていたのは痙攣の発作だったということを知る。しかし当時、それがどういうことなのかまったくわからなかったとのことだ。

息子の病気は次第に重くなっていったとルースさんは話す。彼女の息子は、おかしな笑い声を日に10回以上もあげるとのことだ。

ある神経科医の診察により、彼女の息子の病気の原因は脳内の腫瘍にあることがわかった。医師はルースさんに、「いずれは手術して腫瘍を取り除かないと病気はどんどん重くなり、いつか笑い死んでしまうかもしれない」と警告したとのことだ。
(「このままではいつか笑い死ぬ」医師が警告)


てんかんは、「種々の原因によってもたらされる慢性の脳疾患で、大脳ニューロンの過剰な放電に由来する反復性のてんかん発作を主徴とし、それに変異に富んだ臨床ならびに検査所見が伴う」とWHOでは定義しています。簡単に言ってしまえば、てんかん発作の反復を主症状とする慢性の大脳の疾患、と言えるかも知れません

有病率は、3〜8/1,000人と一般的に考えられており、人口1,000人に約5人の患者さんがいるということになっています。

簡単な分類としては、発作焦点の局在の有無により部分発作(発作起始の臨床症状と脳波所見が、一側半球の限局した部位のニューロン系に端を発する徴候を示す)と全般発作(両側半球の初期賦活徴候を示す)に、また、その原因により症候性か特発性かに分類されます。

部分発作には、意識障害を伴わない単純部分発作(ジャクソン発作、視覚発作、記憶障害発作、恐怖・愉快・笑い・抑うつなどが起こる感情発作など)、意識障害を伴う複雑部分発作(たとえば、一点を凝視したまま動作が停止し、さらに口部自動症・身ぶり自動症が出現するなど)、これらの部分発作の二次性全般化発作があります。

また、上記のように、脳腫瘍、脳炎などの病因が特定されるのが症候性てんかんです。診断としては、以下のように行います。
発作の目撃情報を含む病歴、診察・脳波所見からてんかん発作型を診断します。次に発作型と脳画像などの検査を総合して、てんかん症候群診断を行います。

具体的には、意識障害や転倒時の受傷、尿便失禁などがあったり、四肢の律動的痙攣や発作後の一過性麻痺はてんかんを疑わせます。運動麻痺、不随意運動、失調、筋緊張異常などの有無、全身の皮膚所見(神経・皮膚症候群)なども重要となります。

脳波検査で、てんかん波の有無を判読したり、脳腫瘍の診断には頭部MRIやCTが必要になります。血液・尿検査(Ca、Mg、電解質、血糖など)、心電図も鑑別の上では非常に重要となります。

てんかん患者にみられる脳波変化としては、
1)棘波spikes(持続が80msec以下)
2)鋭波sharp waves(持続が80〜200msec)
3)棘徐波結合spike & wave complex
4)鋭徐波結合sharp & wave complex
5)高電位徐波群発θ & δ bursts
6)ヒプスアリズミアhypsarrhythmia

などがあります。

上記のように、症候性てんかんの場合、脳腫瘍などの病因となる疾患の治療を行うことが先決となります。ただ、腫瘍の部位などでは手術も難しいことも考えられます。手術を受けさせるかどうか、ご両親も悩まれるのではないかと思われます。

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