読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
夏休みは、息子の野球に付き添う日が多くなります。どうしても日焼けが避けられないのですが、紫外線は、そんなに害があるものですか?(東京都38歳女性)

この相談に対して、以下のようなアドバイスがなされていました。
ひところまで日光浴は健康によいと思われてきました。ところが近年は、紫外線の害がクローズアップされてきています。それは有害な紫外線を吸収したり、量を調節しているオゾン層の破壊が進み、地球に降り注ぐ紫外線量が格段に増えているからです。

紫外線が人体によい影響しか与えないのなら量が増えても問題になりませんが、実際はまったく逆。紫外線はシミ、シワ、たるみなど皮膚の老化をもたらし、皮膚がんの原因にもなることが明らかになっています。また、目に入り込むと白内障などの発症を促し、角膜や結膜を傷つける要因にもなります。

4月から10月はとくに紫外線量が多いので要注意。ご質問の方のように真夏の日中に屋外で過ごす場合は、万全の対策が必要です。まず、強めの日焼け止めをまんべんなく塗ること。紫外線は地面や水面などから照り返すので、顔だけでなく、あごの下から首にかけて、手足の内側なども忘れずに。小まめに塗り直すと効果がぐんと上がります。UVカット加工のしてある衣服で肌の露出を少なくするのもよい方法です。さらに忘れがちなのが頭皮や髪、そして目。日傘や帽子を使い、目の保護にはサングラスをかけましょう。

また、お子さんにもぜひ、日焼け対策を。人間は一生分の紫外線量の50%を18歳くらいまでに浴びてしまうと言われています。外で活動するときは、低刺激性タイプや、子ども用の日焼け止めを塗るとよいでしょう。

太陽光線中の紫外線のうち、波長の短いものはオゾン層で吸収され、UVB(290〜320nm)の一部とUVA(320〜400nm)が地表に到達します。波長が短いほど生物学的作用は強くなります。

紫外線は化学作用が著しく、細胞を変性壊死させる作用があります。UVBはDNAに吸収されてDNA損傷を起こし、日焼けや光老化、光発癌に強く関与します。一方、UVAの生物学的作用はUVBの千分の一程度であるといわれています。ですが、細胞に酸化的損傷を与え、UVBの作用を増強してしまいます。

障害を起こす可能性のある臓器としては、眼と皮膚が重要です。眼では主に角膜と結膜で吸収され、炎症を起こします。スキー場などで起こる雪眼炎などや、長波長のものは水晶体まで達し白内障の原因にもなります。

皮膚では日焼けの結果、紅斑、浮腫、水疱などを発生させます。光線過敏症や皮膚癌の原因ともなり、やはり気をつけることが重要であると思われます。

対策としては、以下のようなものがあります。
夏以外は紫外線対策をしない方が多いようです。紫外線は1年中降り注ぐので、年間を通して対策は必要です。また、一部の紫外線は雲を通過し、窓ガラス越しにも侵入してくるため、天気が曇っているから、家や車の中にいるからといって安心はできません。

とくに顔は体のなかで紫外線を浴びる機会が多いので、朝の洗顔後に必ず日焼け止めを塗ることを習慣づけてください。洗濯物を干したりゴミ出ししたりという短時間の作業でも、繰り返すと相当量の紫外線を浴びることになります。紫外線に関する情報は、環境省や気象庁などがホームページで発信しているので、参考にするとよいでしょう。

日焼け止めを選ぶ際は、日焼け止め指数のSPF、PAを目安に。防御効果が高いタイプは肌に負担をか)けることがあるので、紫外線量に応じて使い分けてください。

日焼けして皮膚がほてったりピリピリ痛むときは、水で冷やした後、冷水で浸したタオルを繰り返し湿布して炎症を抑えます。回復してきたら保湿を心がけ、ビタミンC、E、β-カロテン、ポリフェノール、カテキンなど抗酸化作用のある栄養素をたっぷり取りましょう。皮膚の新陳代謝を高めるために睡眠を十分とることも大切です。

紫外線対策としては、やはり日焼け止めをしっかりと塗ることが重要です。SPFとは、sun protection factor(光防御因子)のことで、サンスクリーンの中波長紫外線(UVB)に対する防御能力を表す指標です。

UVBによる最少紅斑量(MED)を測定し、サンスクリーンを外用した場合、MEDが何倍になるかによって計算します。非常に高い値のものも販売されていますが、日常生活ではSPF20程度で十分であるといわれています。

一方、長波長紫外線に対する指標はPA(protection grade of UVA)を用います。UVA防御指数のことを指し、UVA波に対する防止効果を表す指標です。PAは+〜+++の3段階に分類されており、+が多いほど効果が強いとされています。

ちなみに、日本語の「日焼け」は紅斑反応の"サンバーン"と色素沈着の"サンタン"の両者を含む言葉です。特にサンバーン後10日後くらいは、生体の免疫反応が低下し、感染症にも罹患しやすいことがあり、注意が必要です。

軽い場合(紅斑)では副腎皮質ホルモンの外用とNSAIDs(非ステロイド系消炎鎮痛剤)の内服などを行います。水疱を伴う場合や背部、四肢などに20%以上の浮腫を伴う強いサンバーンでは、副腎皮質ホルモン剤の内服(プレドニン 20mg/日)と同剤の外用、および痛みを鎮めるため局所を冷やすなどの対処が必要となることもあります。

「たかが日焼け」などと侮らず、しっかりと対策することをお勧めしたいと思います。

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