以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

今から8年前、銀行の中間管理職として細かい数字が並ぶ書類と格闘する毎日を送っていたN・Nさん(59)。ある日、書類を目で追っているとピントが合わず、小さな文字を見えにくく感じました。

それ以来、たまに見えづらいことはあったものの、昼でもデスクの蛍光灯をつけるなどの工夫でその場をしのいでいたN・Nさん。その後も、様々な異変が現れます。具体的には、以下のような症状が現れてきました。
1)小さな文字が見えにくい
書類に書かれた小さな文字が霞んでしまい、見にくくなりました。ですが眼鏡を外し、もう一度着けて見直すと、問題なく読めたため「老眼かな」と思っていました。こうしたことが繰り返し続くようになりましたが、蛍光灯で明るくすれば見えるので、こうした対処で乗り切っていました。
2)目の前の物に気付かない
食事中、奥さんから醤油のビンを取るように言われ、渡そうとしたときにグラスを床に落としてしまいました。左の外方にあったそのグラスが、N・Nさんには視野に入っていませんでした。
3)よくぶつかるようになる
散歩中、木の枝などにぶつかるようになりましたが、「老化かな」と思っていました。
4)動いている物が見えにくい
友人とテニスを行ったところ、サーブを受けようとしましたが、動いているボールがまるで消えてしまったように感じました。そのボールが、視野の中には入っていたのですが、見えてはいませんでした。

こうした症状を「老眼鏡が合っていないせいだろう」と考えたN・Nさん。眼鏡屋に足を運んだのですが、そこで視力検査などを行ったところ、眼科を受診するように勧められました。眼科を訪れたN・Nさんの病名は、以下のようなものでした。
緑内障とは、眼圧が上昇して視神経が障害され、特徴的な視神経乳頭障害と視野異常などの視機能異常を来す疾患です。

緑内障は、原発開放隅角緑内障、先天緑内障、原発閉塞隅角緑内障、正常眼圧緑内障、続発緑内障に分類されます。その一つである「原発開放隅角緑内障」は、目の圧力が上がる事で視神経が傷つき、徐々に視野が狭くなっていく疾患です。

目は、房水という水分によって、その形を保つために一定の圧力を維持しています。この房水は、線維柱帯と呼ばれる、排出口を通って血管に排出されていきます。ですが、線維柱帯が何らかの原因で目詰まりを起こすと房水は排出されづらくなり、眼の圧力が徐々に上昇してしまいます。この結果、眼圧が上がってしまい、視神経が圧迫され、傷ついてしまいます。そのため、視野が徐々に欠けてしまうわけです。

緑内障をその発生機序で分類すると、
1)開放隅角緑内障
隅角(目の中で作られた水分である房水が、目の外に排出される排出溝のあるところであり、 角膜と虹彩の境目の部分)が広い
2)閉塞隅角緑内障
隅角が狭い、あるいは器質的癒着が存在する。

とに大別されます。

開放隅角緑内障では、隅角鏡観察で異常を認めません(一方、閉塞隅角緑内障では、虹彩周辺部が隅角線維柱帯に接触または癒着し、房水流出を阻害することにより眼圧上昇をきたす)。

原因はほとんどの場合、上記のように房水流出障害によるものであり、その障害部は隅角線維柱帯からシュレム管(隅角線維柱帯を通過した房水が流入する管であり、房水はさらに集合管に入り、眼外へ排出します)、特にその管腔隣接組織にあるとされています。

治療としては、「視機能の悪化が認められないレベルまで眼圧を下降させる」ことに尽きることになります。開放隅角緑内障では、眼圧が25mmHg以下の場合、眼圧のベースラインを確定するため、しばらくの間(1〜2ヶ月)無治療で経過を観察します。ベースラインの眼圧が確定した時点で、まず薬物治療を行います。

眼圧下降効果、全身副作用の少なさから、第1選択薬はプロスタグランジン関連薬の点眼(キサラタン、レスキュラなど)とすることが多いようです。そのほか、β遮断薬やαβ遮断薬、α遮断薬などを用います。

薬物治療で眼圧がコントロールできない場合、手術治療が行われます。病期が初期で、目標眼圧が10mmHg台後半の場合には、レーザー線維柱帯形成術(LTP:laser trabeculoplasty)や線維柱帯切開術(トラベクロトミー)が適応になります。

レーザー線維柱帯形成術(LTP)は、外来通院で点眼麻酔下に施行できますが、眼圧下降効果は弱く、25mmHgを超える症例には向きません。

線維柱帯切開術は、術後の一過性眼圧上昇や前房出血があるものの、重篤な合併症や術後の視力低下は少ないといわれています。また、病期が中等度以上で目標眼圧を10mmHg台前半におく場合には、線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)が適応になります。

2006年に厚生労働省が発表した、日本での失明原因の第1位は緑内障です。中でも、現在急増しているのが、この「原発開放隅角緑内障」となっています。視野が欠ける、ということは、患者さん本人には自覚しにくいものです。N・Nさんのような症状が見られた場合、眼科受診をすることが重要です。

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