読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、杏林大病院外科教授である森俊幸先生は、以下のようにお答えになっています。
胆嚢や胆管などの胆道内に固形物(胆石)ができた状態を胆石症と呼び、泥状や砂状の形態のものも含みます。症状の有無にかかわらず胆石があれば胆石症といいます。
胆石はその存在部位によって、肝内結石、胆嚢結石、総胆管結石に分類されます。また、その成分によって、コレステロール胆石(70%)、色素胆石(30%)、稀な胆石(数%)に分類されます。
ちなみに、コレステロール含有量が70%以上の胆石をコレステロール胆石としています。胆嚢結石症は、このコレステロール胆石が70%以上を占めます。
男性よりも女性に多く、加齢とともに頻度は増加します。成人における頻度は約5〜7%といわれていますが、70歳以上では20%を超え、胆嚢結石は女性に多く、胆管結石は高齢男性に多いという傾向にあります。最近では、腹部超音波検査を含めた検診の普及により、無症状の胆石症が診断される頻度も増加しています。
症状が起こった場合、腹痛は疝痛(さしこむ痛み)で、上腹部から右季肋部に差し込むような激痛が起こります。悪心を伴い、痛みは右肩へ放散することがあり、間欠的に起こるのが特徴的です。
痛みは、過労や油ものの過食後に、しかも食事から時間の経った夜間に起こるという特徴があります。心窩部から右季肋部にかけての腹痛がみられます。また、その痛みが右肩から右肩甲骨下方へ放散していれば、より疑われます。
また、胆嚢結石は、胆嚢頸部や胆嚢管に嵌り込み、疝痛発作を起こすとともに、ときに感染を併発し、急性胆嚢炎や閉塞性胆管炎を生じることがあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
無症状胆嚢結石の場合は、脂肪摂取を控えて胆汁酸製剤などで経過観察することもあります。ですが、胆嚢萎縮や巨大結石で胆嚢壁の評価が困難なときは、無症状でも手術を考慮します。
ウルソデオキシコール酸やケノデオキシコール酸を単独あるいは併用します。有効溶解率は20〜40%であり、治療には1〜2年間を要します。
症状がある場合で、さらに径30 mm以下のコレステロール結石の場合、体外衝撃波結石破砕療法(extracorporeal shock-wave lithotripsy; ESWL)などの治療や、腹腔鏡下胆嚢摘出術などを考慮します。
服薬治療による治療が難しい場合や、持続する症状や繰り返す胆石疝痛発作に対しては、胆嚢摘出術を施行します。腹腔鏡による手術や小切開法は術後の疼痛が軽度で、最近5年間の胆嚢摘出症例数は増加しているそうです。
ただ、胆嚢を摘出すると、胆汁酸の腸肝循環をリズミカルに行うポンプ機能を失うことになり、胆汁の胃内逆流や腸管の消化吸収不良、胆汁酸の腸肝循環が相対的に亢進するため腸管粘膜障害を引き起こすこともあります。
手術に際しては、多くの不安がともなうことと思われます。手術を受ける際には、しっかりとリスクや副作用について担当医と話し合うことが重要であると思われます。
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5年前、胆石が見つかりました。1.5cmで経過観察中です。手術は、胆のうを全部摘出するようですが、石だけ取る方法はないですか。胆のうを取ると大腸がんになりやすいと聞きました。(52歳男性)
この相談に対して、杏林大病院外科教授である森俊幸先生は、以下のようにお答えになっています。
胆石は、主成分によりコレステロール結石とビリルビンカルシウム石とに大別されます。ご質問者の結石は1.5cmで1個だけであることから、コレステロール結石と考えられます。コレステロール結石は成分バランスが崩れた胆汁が、胆のうにたまり、濃縮されて固まったものです。
胆石症の約6割は、生涯無症状で、サイレントストーン(沈黙の石)とも呼ばれています。無症状の方は、胆のう壁が厚くなったり、腫瘍マーカーが上昇したりするなど、慢性胆のう炎や胆のうがんの疑いがなければ、治療の必要はありません。
逆に、急激に痛む胆石発作や胆のう炎を一度でも起こしたら、半数以上で1年以内に再発するため、治療が勧められます。
コレステロール結石の治療法には、石を溶かす薬の服用と手術があります。服薬は、効果が低く、効果がある場合もやめると再発する場合が多いです。
胆嚢や胆管などの胆道内に固形物(胆石)ができた状態を胆石症と呼び、泥状や砂状の形態のものも含みます。症状の有無にかかわらず胆石があれば胆石症といいます。
胆石はその存在部位によって、肝内結石、胆嚢結石、総胆管結石に分類されます。また、その成分によって、コレステロール胆石(70%)、色素胆石(30%)、稀な胆石(数%)に分類されます。
ちなみに、コレステロール含有量が70%以上の胆石をコレステロール胆石としています。胆嚢結石症は、このコレステロール胆石が70%以上を占めます。
男性よりも女性に多く、加齢とともに頻度は増加します。成人における頻度は約5〜7%といわれていますが、70歳以上では20%を超え、胆嚢結石は女性に多く、胆管結石は高齢男性に多いという傾向にあります。最近では、腹部超音波検査を含めた検診の普及により、無症状の胆石症が診断される頻度も増加しています。
症状が起こった場合、腹痛は疝痛(さしこむ痛み)で、上腹部から右季肋部に差し込むような激痛が起こります。悪心を伴い、痛みは右肩へ放散することがあり、間欠的に起こるのが特徴的です。
痛みは、過労や油ものの過食後に、しかも食事から時間の経った夜間に起こるという特徴があります。心窩部から右季肋部にかけての腹痛がみられます。また、その痛みが右肩から右肩甲骨下方へ放散していれば、より疑われます。
また、胆嚢結石は、胆嚢頸部や胆嚢管に嵌り込み、疝痛発作を起こすとともに、ときに感染を併発し、急性胆嚢炎や閉塞性胆管炎を生じることがあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
手術は、胆のうを全部摘出する方法が基本です。胆のう内の石だけを除去しても、胆汁の成分バランスは矯正されず、結石が再発することもあるからです。
現在では、おなかに小さな穴を開け、腹腔鏡を入れて胆のうを取る手術法が主流で、手術の90%を占めます。
手術で胆のうを摘出しても、通常の食生活を送ることができます。胆のうを全摘した方に大腸がんの発生が多いという明らかな報告はなく、関連性はないと思います。
無症状胆嚢結石の場合は、脂肪摂取を控えて胆汁酸製剤などで経過観察することもあります。ですが、胆嚢萎縮や巨大結石で胆嚢壁の評価が困難なときは、無症状でも手術を考慮します。
ウルソデオキシコール酸やケノデオキシコール酸を単独あるいは併用します。有効溶解率は20〜40%であり、治療には1〜2年間を要します。
症状がある場合で、さらに径30 mm以下のコレステロール結石の場合、体外衝撃波結石破砕療法(extracorporeal shock-wave lithotripsy; ESWL)などの治療や、腹腔鏡下胆嚢摘出術などを考慮します。
服薬治療による治療が難しい場合や、持続する症状や繰り返す胆石疝痛発作に対しては、胆嚢摘出術を施行します。腹腔鏡による手術や小切開法は術後の疼痛が軽度で、最近5年間の胆嚢摘出症例数は増加しているそうです。
ただ、胆嚢を摘出すると、胆汁酸の腸肝循環をリズミカルに行うポンプ機能を失うことになり、胆汁の胃内逆流や腸管の消化吸収不良、胆汁酸の腸肝循環が相対的に亢進するため腸管粘膜障害を引き起こすこともあります。
手術に際しては、多くの不安がともなうことと思われます。手術を受ける際には、しっかりとリスクや副作用について担当医と話し合うことが重要であると思われます。
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