以下は、最終警告!たけしの本当は怖い家庭の医学で扱われていた内容です。

Y・S(68)さんは、半年前に夫と死別。もともと生真面目な彼女は、たまに娘が様子を見にきても寂しい素振りも見せず、趣味の生け花に打ち込んでいましたが、ある日、娘婿の名前をど忘れしてしまいました。

それから半月後、今度はそれまであまりなかった肩こりを感じるようになったY・Sさん。その後も、以下のような症状が現れてきました。
1)物忘れ
人の名前を忘れたり、物の名前が出てこなかったりして「もしかして、認知症かな?」と不安に思いました。
2)肩こり
それまであまり無かったのですが、肩こりを感じるようになりました。
3)食欲不振
段々と、食欲が低下するようになりました。
4)不眠
睡眠時間が短くなり、眠りについてもすぐに起きてしまうといった状態になっていました。
5)片付けられない
娘が家を訪れて驚いてしまいました。それまでは、几帳面でチリ一つ無いような家の状態であったにも関わらず、家の中が散らかり放題で、異臭を放っていました。
6)趣味をやめてしまう
趣味であった生け花も止めてしまいました。

こうした異変を、「認知症のために起こったのでは?」と考えた娘は、近くの神経内科に母を連れて受診しました。ところが、頭部MRIを施行したところ、脳の萎縮はみられず、認知症は否定的なのではないか、と言われました。

Y・Sさんが診断された病名は、以下のようなものでした。
Y・Sさんは「老年期うつ病」と診断されました。老年期うつ病とは、その名の通り、高齢者に起きるうつ病のことを指します。「老年期のうつ病は、ほかの世代に生じるうつ病と異なり独立した疾病単位でとらえるべき」といった考え方は、今日では否定的であるといわれています。

ですが、いくつかの特徴があることも確かです。特徴としては、
・身体症状の訴えが強い。
・不安、焦燥感が目立つものが多い。
・意識障害、特にせん妄が現れやすい。
・妄想(微小妄想)傾向を示しやすい。
・うつ病による行動の減少が痴呆と誤られることがある(仮性痴呆)。

といったことがいわれています。
Y・Sさんの場合も、以下のような症状がみられていました。
第1の症状は、物忘れなど認知症によく似た症状(仮性痴呆)が出ていました。うつ病になると、脳で様々な情報をやり取りする神経伝達物質が減少するため、脳の機能が低下してしまいます。結果、物忘れなど認知症によく似た症状が起きてしまいます。

2つ目の症状は、肩こりや食欲不振、さらには不眠といった体の異変が現れていました。脳の機能低下は、自律神経や内分泌系などにも大きな影響を与えるため、内臓など全身の様々な異常を招いてしまいます。

3つ目の症状としては、元々きれい好きなのにズボラになったり、大好きな趣味をやめてしまうといった行動の変化がみられていました。こうした興味があったことをしなくなるといった行動の変化(興味関心の喪失)は、うつ病の重要なサインです。

老年期のうつ病の発症要因としては、ほかの世代のうつ病でいわれる要因(遺伝的、生物学的、性格)に加えて、生活上の出来事の問題や身体疾患、脳の器質的変化などが重要な要因となります。

Y・Sさんの場合、もともと几帳面な正確な上、夫の死による喪失感というライフイベントが原因だったと考えられます。Y・Sさんは、抗うつ剤の投与で病を克服しています。今では元気に趣味の生け花に精を出す毎日だそうです。

自分の性格やストレスの受けやすさを把握し、上記のような症状を見逃さないことが病気の早期発見には重要です。そうした場合、精神科を早めに受診し、早期治療に努めることが必要になります。

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