読売新聞の医療相談室で、以下のような相談がなされていました。
この相談に対して、慶応大病院消化器内科教授である日比紀文先生は、以下のようにお答えになっています。
食道潰瘍とは、食道に粘膜下層に達する組織欠損を起こす状態であり、最も頻度が高いのは、胃液や腸液の食道への逆流によって起こる逆流性食道炎です。
ほかにも、カンジダ感染やサイトメガロウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、ベーチェット病、クローン病、粘膜傷害を起こす薬剤の服用などがあります。薬剤性食道潰瘍は、大型錠剤を水なしで飲んでいる場合が多いです。この部位にカプセルや錠剤が付着停滞し、薬物が流出した結果、その強酸性や浸透圧によって粘膜傷害が発生すると考えられます(抗生物質が多く半数を占める)。
食道潰瘍では、胸やけや胸痛が食後に起こりやすいことが特徴です。また、潰瘍が大きく深い場合には、嚥下時痛が主訴となります。さらに、潰瘍の治癒に伴う瘢痕性収縮のため、上記のように狭窄を起こし嚥下障害が出現することもあります。一方、胸やけや胸痛がはっきりせず、夜間の胃食道逆流のため、慢性咳嗽や耳痛のみが起こる可能性もあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
上記のように、潰瘍瘢痕のために狭窄が起こった場合には、まずバルーンカテーテルを用いた拡張や高周波電流、レーザーなどでの狭窄部の切除などが行われます。
こうした拡張術が無効のとき、狭窄部切除や食道再建術が行われます。バルーンによる拡張は、上記の通り再発する可能性があるため、十分な経過観察が必要となります。
食道ステントとは、食道狭窄を伴う食道疾患や、その周辺臓器疾患に対し経口摂取改善を目的とする姑息的手段の一方法です。ステントの種類としては、自己拡張能を有する筒状に構築された金属ワイヤーを骨格に有し、その周囲をシリコーン、ポリウレタン、ポリエチレンなどの膜で被覆したカバー・ステントや、それ自身拡張能を有さないプラスチック・ステントなどがあります。こうしたステントを食道に置くことで拡張し、狭窄した部分を広げます。
食道狭窄が高度な場合は外科治療の適応として、食道狭窄部の切除が行われることがあります。食道再建については、胃の腐食性変化がない場合などは胃管を挙上してそのまま繋ぐことができますが、胃に炎症が及んでいる場合などでは遊離空腸や結腸が選択されます。
物が飲み込みづらいなど、生活する上でお困りであろうかと思われます。主治医と相談の上で、こうした治療を受けられることを考えられてはいかがでしょうか。
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食道の潰瘍を繰り返し、レミケードという点滴を受けました。その後、食道の一部が狭く、硬くなり、食べ物が通らないときがあります。元に戻せませんか。(30歳女性)
この相談に対して、慶応大病院消化器内科教授である日比紀文先生は、以下のようにお答えになっています。
食道は、のどを通りすぎた飲食物が胃に入る前に最初に通る消化管です。
食道に繰り返し潰瘍ができる病気には、〈1〉食道がん〈2〉逆流性食道炎〈3〉クローン病やベーチェット病などの炎症性疾患――などが考えられます。
レミケードはクローン病やベーチェット病などに用いる炎症を抑える薬ですので、ご質問者は、おそらく〈3〉の可能性が高いかと思います。
ご質問者のように、いったん潰瘍が治ったのに、ひきつれが起こって、結果的に食道が狭くなってしまう場合があります。
食道潰瘍とは、食道に粘膜下層に達する組織欠損を起こす状態であり、最も頻度が高いのは、胃液や腸液の食道への逆流によって起こる逆流性食道炎です。
ほかにも、カンジダ感染やサイトメガロウイルス感染症、ヘルペスウイルス感染症、ベーチェット病、クローン病、粘膜傷害を起こす薬剤の服用などがあります。薬剤性食道潰瘍は、大型錠剤を水なしで飲んでいる場合が多いです。この部位にカプセルや錠剤が付着停滞し、薬物が流出した結果、その強酸性や浸透圧によって粘膜傷害が発生すると考えられます(抗生物質が多く半数を占める)。
食道潰瘍では、胸やけや胸痛が食後に起こりやすいことが特徴です。また、潰瘍が大きく深い場合には、嚥下時痛が主訴となります。さらに、潰瘍の治癒に伴う瘢痕性収縮のため、上記のように狭窄を起こし嚥下障害が出現することもあります。一方、胸やけや胸痛がはっきりせず、夜間の胃食道逆流のため、慢性咳嗽や耳痛のみが起こる可能性もあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
硬く、狭くなった食道を薬で軟らかい元の状態に戻すことは難しく、食べ物の通過に差し障りが出る場合、何らかの方法で通過を良くする必要があります。
まず、内視鏡的バルーン拡張術といって、内視鏡から出した風船で狭くなった部位を広げる方法があります。この治療法は何度も繰り返し行うことが出来ますが、狭くなっている部分が長いと、効果が表れにくい場合もあります。
金属やプラスチックで出来た筒(ステント)を入れて通過を良くする方法もありますが、この方法は主に腫瘍が原因で狭くなった時に行われます。ただ、原因が腫瘍以外でも、治療の選択肢として、検討する価値はあるかもしれません。
硬くなった部分を切除し、その前後をつなぐ手術は、非常に体への負担が大きくなる場合もあるので、経験豊富な専門医に相談されることをお勧めします。
上記のように、潰瘍瘢痕のために狭窄が起こった場合には、まずバルーンカテーテルを用いた拡張や高周波電流、レーザーなどでの狭窄部の切除などが行われます。
こうした拡張術が無効のとき、狭窄部切除や食道再建術が行われます。バルーンによる拡張は、上記の通り再発する可能性があるため、十分な経過観察が必要となります。
食道ステントとは、食道狭窄を伴う食道疾患や、その周辺臓器疾患に対し経口摂取改善を目的とする姑息的手段の一方法です。ステントの種類としては、自己拡張能を有する筒状に構築された金属ワイヤーを骨格に有し、その周囲をシリコーン、ポリウレタン、ポリエチレンなどの膜で被覆したカバー・ステントや、それ自身拡張能を有さないプラスチック・ステントなどがあります。こうしたステントを食道に置くことで拡張し、狭窄した部分を広げます。
食道狭窄が高度な場合は外科治療の適応として、食道狭窄部の切除が行われることがあります。食道再建については、胃の腐食性変化がない場合などは胃管を挙上してそのまま繋ぐことができますが、胃に炎症が及んでいる場合などでは遊離空腸や結腸が選択されます。
物が飲み込みづらいなど、生活する上でお困りであろうかと思われます。主治医と相談の上で、こうした治療を受けられることを考えられてはいかがでしょうか。
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