楽しいときや面白い時、人は自然と笑うものなのですが、その笑うことが苦痛な病気にかかっている女性がいるようです。今回紹介するのはケイ･アンダーソンさん(20歳)が直面している症状。15歳の時に発症したようで、現在も明確な治療法が無く、苦しんでいるようです。では、一体どのような症状なのか見てみましょう。

カタプレクシー(情動脱力発作)という｢笑い･喜び･感動･驚き･怒り･恥･恐怖｣といった、感情の高ぶりによってさまざまな症状が出ています。彼女の場合は筋肉の脱力現象がおき、文字通り崩れ落ちてしまうようです。

感情が高ぶると数分間マヒ状態になり身動きがとれない状態になるとのこと。ただし聴覚は正常に機能しており、周りで何が起こっているかは聞き取れるそうです。彼女は1日に40回以上はカタプレクシーの症状が出ており、非常に苦しい生活をしているようです。ケイさんは極端な例で、笑うことによって症状が発症するのも珍しいようです。

まだ正確な原因と治療法が無く回復は困難ですが、ケイさんは、レスター総合病院で睡眠障害中の専門家を訪ねており、新薬が彼女に通常の生活を与えることができることを今、望んでいます。
(笑うたびに体が崩れ落ちてしまう女性)

笑いなどの情動に伴って起こる姿勢筋緊張の突然の低下を、情動脱力発作(カタプレクシーcataplexy)といいます。笑ったときや、びっくりしたときに起こりやすく、急激に膝の力が抜け床に膝をついたり、顎や頸の力が抜けたりします。この発作は短く数秒間しか持続しません。

こうした症状は、ナルコレプシーという疾患の一症状として有名です。
ナルコレプシーとは、睡眠障害の一つで、短時間の過剰な眠気(睡眠発作)あるいは情動脱力発作を生じ、日中反復する居眠りがほとんど毎日少なくとも3ヵ月以上にわたりみられるものを指します。

YossとDalyの診断基準によれば、睡眠発作が主要症状であり、それに以下の三つの副症状が挙げられています。
・カタプレキシー(情動脱力発作)
・睡眠麻痺(典型的には疲労しやすい場面で10〜20分眠り、さわやかに目覚めるが、また2〜3時間たつと再び眠気を催すというパターンを繰り返す)
・入眠時幻覚(入眠時にみる幻覚で、視覚性か非常にまれに聴覚性のもので、入眠時および覚醒直前に色彩に富んだ鮮明な現実感をもった幻覚として訴えられることが多い)

これらの4主徴がすべてそろうことは少ないですが、睡眠発作は必ず全例でみられ、睡眠発作とカタプレキシーは70％に、睡眠麻痺は50％に、就眠幻覚は25％にみられ、4主徴が揃うのは10％とされています。

詳しいデータはありませんが、10万人に30〜40人との報告があり、最近の研究により本症患者の多くがHLA-DR2抗原を持っていることが判明しており、遺伝学的感受性が高いと考えられています。

必要な検査や治療法としては、以下のようなものがあります。
睡眠発作があり、補助症状としてカタプレキシー、睡眠麻痺、入眠時幻覚のどれかがあれば診断は容易です。

神経学的には異常所見はみられません。覚醒および連続した睡眠脳波を頤筋、頸筋の表面筋電図を含めたポリグラフ記録を行うこともあります。正常ではみられない覚醒から直ちにREM睡眠に入るパターンがみられ、いわゆる入眠時REM睡眠の認められることが特徴とされます。

睡眠発作には覚醒アミンが有効であり、塩酸メチルフェニデート30〜60mg/日が有効です。他の症状、上記の女性のようなカタプレキシーには、イミプラミン(トフラニール)50〜200mg/日が最も有効であるといわれています。

別名「居眠り病」などといわれ、周囲に理解されないというケースもあるようです。新薬がどのような物なのかは不明ですが、是非ともナルコレプシーの患者さんの症状改善などができれば、と期待されます。

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