ダニエル・ラドクリフが「エクウス」のブロードウェイ公演のインタビューの中で、ディスプラクシア(統合運動障害)であることを明かした。

ダニエルが明かしたディスプラクシアは、日本で統合運動障害、協調運動障害などの名前で知られる行動遂行能力の障害で、学習面での発達を妨げることもある。ダニエルは、「学校では全部だめ。うまくできることが何もなくて、つらかった」と話す。

活躍できる場を、学校の外に求めたダニエルが、希望を見出したのが俳優業だった。5歳から俳優にあこがれていたというダニエルに、最初は反対していた母親も、9歳の時には、BBCのドラマ「デヴィッド・コパフィールド」のオーディションを受けることをついに認める。子供時代のデヴィッド役でデビューを飾ったダニエルは、その2年後には大役ハリー・ポッターを射止めることになる。

ダニエルのスポークスマンも「ええ、ラドクリフはディスプラクシアです。今まで、それを隠したこともありません。幸いにも軽いもので、あらわれているのは靴ひもが結べないことと、きれいな字が書けないことくらいです」と認めている。

ディスプラクシアは原因がまだ究明されていない障害で、重い場合には、作業療法などによって、スムーズな生活が送れるように訓練する治療が施される。ディスプラクシアの権威であるニューヨーク大学のデヴィッド・ヤンガー博士は「ラドクリフは同じ障害を持つ人の良いお手本となるだろう」と語っている。
(「ハリポタ」ダニエル・ラドクリフ、運動障害で靴ひもが結べないと衝撃告白)


発達性協調運動障害Developmental dyspraxiaとは、行動の開始、統合、実行に影響を及ぼす発育障害を指します。多発性硬化症またはパーキンソン病などのような運動・感覚の障害がある場合や、特定の意図的な運動や動作を、調整して実行する能力の部分的な損失を伴う場合を除外して診断されます。

ダニエル・ラドクリフの場合、特に「発達性失行」がみられているようです(発達性協調運動障害Developmental dyspraxiaには、ほかにも読み書きといった言語障害なども含まれる)。これは、養育環境に問題がなく、かつ知的水準もほぼ正常でありながら不器用さが目立ち、運動面のぎごちなさや、手先、足先の巧緻性の欠如がみられます。背景には、軽微な脳機能の偏位が推定されています。また、学習障害(LD)、注意欠陥多動障害(ADHD)に重複してみられることが多いといわれています。

具体的には、幼児期前半では歩き方がぎごちない、転びやすい、幼児期後半では箸、はさみが使えない、鉛筆が上手に握れない、ボタンはめができないといったことがみられます。学童期ではひも結びやビーズ通しができない、ボール投げや受け取りが不得意、縄跳びができないなどの特徴がみられます。

診断や治療に関して、以下のようなことがいえると思われます。
3歳児検診などにおいては、発達神経学的診察が行われています。3歳児くらいになると、巧緻運動機能を評価できます。

たとえば、まねをして○が描けたり、箸を使っての食事が可能になったり、利き手が決まり始めます。バランス運動では2〜3秒間の片足立ちが可能になります。もちろん、発達の程度は人によって異なりますが、できない場合は発達性協調運動障害を疑うことになります。

発達障害が疑われる場合は、圏域で実施される発達専門医による二次健診への受診などが勧められます。その後、年齢と認知の発達段階を考慮して治療計画を立て、多職種間の連携のもとに治療を行うことになります。

学童期以降では、生活技能訓練がよい効果を上げることもあります。また、達成感を得られるようにその特異的困難に合わせてスモールステップで働きかけることも重要です。

ダニエル・ラドクリフさんの場合は、俳優業という道をみつけられ、そこで成功なさっています。障害を乗り越え、その姿を見せることは、同様の障害をもつ方にとって励みになるのではないか、と思われます。

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