酸分泌抑制薬であるプロトンポンプ阻害薬(PPI)を長期にわたり使用すると、骨粗鬆症による骨折リスクが増大することがカナダの研究で明らかにされ、カナダ医師会誌「Canadian Medical Association Journal」8月12日号に掲載された。この研究は、PPI使用者に骨折リスク増大がみられることを示した大規模研究としては3件目になる。
米ニューヨークプレスビテリアン病院/ワイルコーネルメディカルセンターNew York Presbyterian Weill Cornell Medical CenterのFelice Schnoll-Sussman博士は「胃腸病学専門医や内科医は、PPIの使用について無頓着になってきている」と述べ、これを機にすべての患者についてPPIの使用を続ける必要があるか、用量や頻度は適切かなどを見直す必要があるとしている。PPIを中止できない患者については、骨粗鬆症治療薬を追加するという選択もあると別の専門家は述べる。PPIを使用する患者が飲酒や喫煙、プレドニゾンのような薬剤を使用すると骨によくないことも知っておく必要があるという。
PPIは消化性潰瘍、胃食道逆流性疾患(GERD)などに処方される強力な酸分泌抑制薬薬で、商品名はAciphex(ラベプラゾール、商品名パリエット)、Nexium(エソメプラゾール、日本国内未承認)、Prevacid(ランソプラゾール、商品名タケプロン)、Prilosec(オメプラゾール、商品名オメプラゾンほか)、Protonix(パントプラゾール、日本国内未承認)など。これらの薬剤は期間を定めずに使用されることも多い。
塩酸の分泌を阻害する作用があり、小腸でのカルシウム吸収に影響を及ぼす可能性がある。長期の使用により骨折リスクが増大する機序は明らかにされていないが、酸抑制作用により骨からのミネラル損失が加速される可能性が高いと考えられている。
カナダ、マニトバ大学(ウィニペグ)による今回の研究では、50歳以上で骨粗鬆症関連の股関節部、椎骨または手関節の骨折経験のある患者1万5,792人のデータを検討し、約5万人の対照群と比較した。その結果、7年以上PPIを使用していた患者では骨折リスクが2倍になることが判明。5年以上PPIを使用すると股関節部骨折リスクが62%増大し、7年以上では4倍以上になることもわかった。
この最新の研究によれば、PPIを安全に使用できる期間は7年と他の研究よりも長く、消化性潰瘍が改善するには十分な期間だと専門家は述べている。無期限にPPIを使用する必要のある患者もいるが、食事や生活習慣で改善できる例もあるという。PPIさえ服用すれば何を食べてもよいと考えてしまう患者もいる点をSchnoll-Sussman氏は指摘している。
米医学誌「Archives of Internal Medicine(内科学)」8月11/25日号に掲載された別の研究では、低用量アスピリン(上部消化管出血のリスクをもたらす)を長期間使用する65歳以上の動脈血栓症患者に、PPIの市販薬を追加すると費用効果が得られるとの結論を示しており、この効果は50歳の患者でもみられるという。
(プロトンポンプ阻害薬の長期使用が骨折リスクを高める)
プロトンポンプ阻害薬は、胃粘膜壁細胞の酸生成部位へ移行後、酸による転移反応を経て活性体へと構造変換されます。この酸転移生成物が酸生成部位に局在してプロトンポンプとしての役割を担っている(H++K+)-ATPase(プロトン-カリウムATPアーゼ)のSH基と結合し、酵素活性を抑制することで、酸分泌を抑制すると考えられています。
そのため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などに適応となります。また、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助として用いられます。
プロトン-カリウムATPアーゼの寿命は80時間なので、いったん結合すると次に新たに産生されるまでその酵素活性は阻害されます。従って、1日1回投与で十分な効果が期待できるという特徴があります。また、胃酸分泌抑制効果と治療効果は、H2受容体拮抗薬(ガスターなど)に優るといわれています。
副作用としては、ショックや血液障害、視力障害、肝機能異常、消化器症状などがいわれていますが、重篤な副作用の発現頻度は低く、また本薬に特異的なものは知られていないといわれています。
ですが、上記の研究ではプロトンポンプ阻害薬を長期間(7年以上)に渡って飲み続けている人は、骨粗鬆症のリスクを考える必要があると示されているようです。その機序としては、酸の分泌を阻害する作用により、小腸でのカルシウム吸収に影響が起こる可能性があるため、ということのようです。
骨粗鬆症による影響には、以下のようなものがあります。
米ニューヨークプレスビテリアン病院/ワイルコーネルメディカルセンターNew York Presbyterian Weill Cornell Medical CenterのFelice Schnoll-Sussman博士は「胃腸病学専門医や内科医は、PPIの使用について無頓着になってきている」と述べ、これを機にすべての患者についてPPIの使用を続ける必要があるか、用量や頻度は適切かなどを見直す必要があるとしている。PPIを中止できない患者については、骨粗鬆症治療薬を追加するという選択もあると別の専門家は述べる。PPIを使用する患者が飲酒や喫煙、プレドニゾンのような薬剤を使用すると骨によくないことも知っておく必要があるという。
PPIは消化性潰瘍、胃食道逆流性疾患(GERD)などに処方される強力な酸分泌抑制薬薬で、商品名はAciphex(ラベプラゾール、商品名パリエット)、Nexium(エソメプラゾール、日本国内未承認)、Prevacid(ランソプラゾール、商品名タケプロン)、Prilosec(オメプラゾール、商品名オメプラゾンほか)、Protonix(パントプラゾール、日本国内未承認)など。これらの薬剤は期間を定めずに使用されることも多い。
塩酸の分泌を阻害する作用があり、小腸でのカルシウム吸収に影響を及ぼす可能性がある。長期の使用により骨折リスクが増大する機序は明らかにされていないが、酸抑制作用により骨からのミネラル損失が加速される可能性が高いと考えられている。
カナダ、マニトバ大学(ウィニペグ)による今回の研究では、50歳以上で骨粗鬆症関連の股関節部、椎骨または手関節の骨折経験のある患者1万5,792人のデータを検討し、約5万人の対照群と比較した。その結果、7年以上PPIを使用していた患者では骨折リスクが2倍になることが判明。5年以上PPIを使用すると股関節部骨折リスクが62%増大し、7年以上では4倍以上になることもわかった。
この最新の研究によれば、PPIを安全に使用できる期間は7年と他の研究よりも長く、消化性潰瘍が改善するには十分な期間だと専門家は述べている。無期限にPPIを使用する必要のある患者もいるが、食事や生活習慣で改善できる例もあるという。PPIさえ服用すれば何を食べてもよいと考えてしまう患者もいる点をSchnoll-Sussman氏は指摘している。
米医学誌「Archives of Internal Medicine(内科学)」8月11/25日号に掲載された別の研究では、低用量アスピリン(上部消化管出血のリスクをもたらす)を長期間使用する65歳以上の動脈血栓症患者に、PPIの市販薬を追加すると費用効果が得られるとの結論を示しており、この効果は50歳の患者でもみられるという。
(プロトンポンプ阻害薬の長期使用が骨折リスクを高める)
プロトンポンプ阻害薬は、胃粘膜壁細胞の酸生成部位へ移行後、酸による転移反応を経て活性体へと構造変換されます。この酸転移生成物が酸生成部位に局在してプロトンポンプとしての役割を担っている(H++K+)-ATPase(プロトン-カリウムATPアーゼ)のSH基と結合し、酵素活性を抑制することで、酸分泌を抑制すると考えられています。
そのため、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、逆流性食道炎などに適応となります。また、胃潰瘍又は十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリの除菌の補助として用いられます。
プロトン-カリウムATPアーゼの寿命は80時間なので、いったん結合すると次に新たに産生されるまでその酵素活性は阻害されます。従って、1日1回投与で十分な効果が期待できるという特徴があります。また、胃酸分泌抑制効果と治療効果は、H2受容体拮抗薬(ガスターなど)に優るといわれています。
副作用としては、ショックや血液障害、視力障害、肝機能異常、消化器症状などがいわれていますが、重篤な副作用の発現頻度は低く、また本薬に特異的なものは知られていないといわれています。
ですが、上記の研究ではプロトンポンプ阻害薬を長期間(7年以上)に渡って飲み続けている人は、骨粗鬆症のリスクを考える必要があると示されているようです。その機序としては、酸の分泌を阻害する作用により、小腸でのカルシウム吸収に影響が起こる可能性があるため、ということのようです。
骨粗鬆症による影響には、以下のようなものがあります。
骨粗鬆症とは、骨量が減少し、骨微細構造の劣化により骨強度が低下して、骨折をきたしやすくなった全身性の疾患です。骨が形成される速度よりも、骨が吸収される速度が高くなり、骨に小さな穴が多発する(結果、脆くなる)症状をいいます。
女性の有病率は男性の2倍以上であるといわれ、閉経後の数年間の血中エストロゲン濃度の低下に伴う急速な骨量減少が原因で起こることが多いようです。
閉経後骨粗鬆症では、骨吸収および骨形成がともに亢進した骨代謝高回転型を示すことが知られています。一方、老人性骨粗鬆症は骨代謝低回転型が多く、骨形成能の低下が主因と考えられています。
骨粗鬆症においては、日常生活程度の負荷によって骨折を引き起こします。骨折による痛みや障害はもちろん、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、生活の質 (QOL) を著しく低くすることになってしまいます。
自覚症状がある場合には、腰・背痛の頻度が高いといわれています。椎体変形を認めなくとも、微細骨折や脊椎周辺の筋過緊張によって腰痛が起こります。椎体変形があると、身長が低くなったりします。
上記のように、プロトンポンプ阻害薬を服用されている方は骨粗鬆症に気を付けて食生活を見直すといったことが必要になるのかもしれませんね。
【関連記事】
生活の中の医学
口蓋裂や舌癌の手術後、骨粗鬆症による骨折に−人工骨移植
女性の有病率は男性の2倍以上であるといわれ、閉経後の数年間の血中エストロゲン濃度の低下に伴う急速な骨量減少が原因で起こることが多いようです。
閉経後骨粗鬆症では、骨吸収および骨形成がともに亢進した骨代謝高回転型を示すことが知られています。一方、老人性骨粗鬆症は骨代謝低回転型が多く、骨形成能の低下が主因と考えられています。
骨粗鬆症においては、日常生活程度の負荷によって骨折を引き起こします。骨折による痛みや障害はもちろん、大腿骨や股関節の骨折はいわゆる高齢者の寝たきりにつながり、生活の質 (QOL) を著しく低くすることになってしまいます。
自覚症状がある場合には、腰・背痛の頻度が高いといわれています。椎体変形を認めなくとも、微細骨折や脊椎周辺の筋過緊張によって腰痛が起こります。椎体変形があると、身長が低くなったりします。
上記のように、プロトンポンプ阻害薬を服用されている方は骨粗鬆症に気を付けて食生活を見直すといったことが必要になるのかもしれませんね。
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