昨年12月に紹介され、世界中の人が我が目を疑った、“ツリーマン”と呼ばれるインドネシアの男性ディーディさん(37)。体じゅうにカビ色のイボが発生し、両手指はまるで木のよう。その彼が今、米国の医師らの手術によって少しずつ人間らしい手指を取り戻しているという。
初めて自分の不思議なイボに気がついたのは、10代の頃、ヒザを切った跡に発生したものだったというディーディさんは、その後、職場で避けられ、妻にもぞんざいにされ、近所からも白い目で見られて生きてきたという。
そしてとうとう、昨年12月、イボに由来する肺炎を起こし、ハサン・サディキン病院のお世話になり、瞬く間にその症状は世界中の医師らの目に留まった。高い検査料や治療費を負担できないディーディさんであったが、遺伝子の研究を目的にサンプリングへ協力してくれるのであれば、と申し出る米国メリーランド大学のアンソニー・ギャスパリ医師らとの交渉が成立、同医師らの治療を受けることになった。その病院での9回目の手術により、彼のイボの95%が取り除かれた。
「彼の病気は、100%治療ということは残念ですが無理でしょう。でも、生活のクオリティは上がったはずです。自分で食べものを口に運び、字を書いたり、携帯電話も使えるようになるでしょう。ただし、10月になったら、もう少し手のイボの除去手術が必要ですが」とのことである。
彼の親族の誰にも発生していない、奇病と言わざるを得ないこの症状についてギャスパリ医師は、たいていは皮膚に小さなイボを作って終わる程度の、ありふれたウィルスであるヒト・パピローマ・ウィルスが、彼にとっては大問題となってしまうと説明する。
彼の遺伝子には非常にまれな欠陥が認められ、それが自己免疫システムを狂わせ、皮膚細胞に侵入したウィルスに対し、その奇妙な物質を細胞内に作り上げろといった誤った指令を出していると考えられるとのことで、命に別状はないものの、何回でも発生する可能性もあるとのことだ。イボ発生と手術との繰り返しとなるのであろうが、今後の彼の健康を祈り、治療が進みいつかすっかりきれいになった手指をまた披露して頂きたいと思う。
(“ツリー・マン”と呼ばれた奇病の男性、手術に成功)
疣贅状表皮発育異常症(レヴァンドフスキー-ルッツ症候群とも呼ばれます)は、ヒトイボウイルス感染により、小児期から顔面・体幹に癜風(細かい鱗屑とよばれる、皮膚の角質が白くフケのようになったものが付着する淡褐色斑あるいは脱色素斑がみられる)や扁平疣贅(いわゆるイボ)様の皮疹が多発し、徐々に全身に拡大する疾患です。
HPV(ヒトパピローマウィルス)5/8型など、EV型と呼ばれる特異型が検出されます。稀な常染色体劣性の遺伝性疾患で、高発癌性であるといわれています。主に露光部に発癌をみます(30歳を過ぎる頃から、日光裸露部の疣贅から皮膚癌を生じることが多い)。
診断は多くの場合、臨床像から容易であると考えられますが、確定診断や他疾患との鑑別を要する場合は、病理組織検査を行います。必要に応じて、ウィルス抗原の検索やPCR法やSouthern法を用いてHPVの型決定を行うことも行われます。
根治するための治療法は今のところ存在していませんが、紫外線防御に努め、悪性腫瘍は外科的に切除するといったことが基本方針となっています。露光部において悪化するため、サンスクリーン外用などが予防的に行われます。
また、レチノイドの内服(疣贅に対する腫瘍免疫機序の惹起を目的に)が行われることもあります。レチノイドとはビタミンAとその類縁化合物で、細胞内レセプター、次いで核内レセプターに結合し、遺伝子転写活性の制御を介して種々の生理活性を発現します。
ただ、レチノイドはビタミンA効果過剰状態に保持して、症状をよいほうに修飾しているのみであり、根本的治療をしているわけではありません。通常0.5mg/kg/日を分2〜3で投与し、3〜4週間で効果があるといわれていますが、減量に伴い再燃する可能性もあります。
また、その他の治療としては、以下のようなものがあります。
初めて自分の不思議なイボに気がついたのは、10代の頃、ヒザを切った跡に発生したものだったというディーディさんは、その後、職場で避けられ、妻にもぞんざいにされ、近所からも白い目で見られて生きてきたという。
そしてとうとう、昨年12月、イボに由来する肺炎を起こし、ハサン・サディキン病院のお世話になり、瞬く間にその症状は世界中の医師らの目に留まった。高い検査料や治療費を負担できないディーディさんであったが、遺伝子の研究を目的にサンプリングへ協力してくれるのであれば、と申し出る米国メリーランド大学のアンソニー・ギャスパリ医師らとの交渉が成立、同医師らの治療を受けることになった。その病院での9回目の手術により、彼のイボの95%が取り除かれた。
「彼の病気は、100%治療ということは残念ですが無理でしょう。でも、生活のクオリティは上がったはずです。自分で食べものを口に運び、字を書いたり、携帯電話も使えるようになるでしょう。ただし、10月になったら、もう少し手のイボの除去手術が必要ですが」とのことである。
彼の親族の誰にも発生していない、奇病と言わざるを得ないこの症状についてギャスパリ医師は、たいていは皮膚に小さなイボを作って終わる程度の、ありふれたウィルスであるヒト・パピローマ・ウィルスが、彼にとっては大問題となってしまうと説明する。
彼の遺伝子には非常にまれな欠陥が認められ、それが自己免疫システムを狂わせ、皮膚細胞に侵入したウィルスに対し、その奇妙な物質を細胞内に作り上げろといった誤った指令を出していると考えられるとのことで、命に別状はないものの、何回でも発生する可能性もあるとのことだ。イボ発生と手術との繰り返しとなるのであろうが、今後の彼の健康を祈り、治療が進みいつかすっかりきれいになった手指をまた披露して頂きたいと思う。
(“ツリー・マン”と呼ばれた奇病の男性、手術に成功)
疣贅状表皮発育異常症(レヴァンドフスキー-ルッツ症候群とも呼ばれます)は、ヒトイボウイルス感染により、小児期から顔面・体幹に癜風(細かい鱗屑とよばれる、皮膚の角質が白くフケのようになったものが付着する淡褐色斑あるいは脱色素斑がみられる)や扁平疣贅(いわゆるイボ)様の皮疹が多発し、徐々に全身に拡大する疾患です。
HPV(ヒトパピローマウィルス)5/8型など、EV型と呼ばれる特異型が検出されます。稀な常染色体劣性の遺伝性疾患で、高発癌性であるといわれています。主に露光部に発癌をみます(30歳を過ぎる頃から、日光裸露部の疣贅から皮膚癌を生じることが多い)。
診断は多くの場合、臨床像から容易であると考えられますが、確定診断や他疾患との鑑別を要する場合は、病理組織検査を行います。必要に応じて、ウィルス抗原の検索やPCR法やSouthern法を用いてHPVの型決定を行うことも行われます。
根治するための治療法は今のところ存在していませんが、紫外線防御に努め、悪性腫瘍は外科的に切除するといったことが基本方針となっています。露光部において悪化するため、サンスクリーン外用などが予防的に行われます。
また、レチノイドの内服(疣贅に対する腫瘍免疫機序の惹起を目的に)が行われることもあります。レチノイドとはビタミンAとその類縁化合物で、細胞内レセプター、次いで核内レセプターに結合し、遺伝子転写活性の制御を介して種々の生理活性を発現します。
ただ、レチノイドはビタミンA効果過剰状態に保持して、症状をよいほうに修飾しているのみであり、根本的治療をしているわけではありません。通常0.5mg/kg/日を分2〜3で投与し、3〜4週間で効果があるといわれていますが、減量に伴い再燃する可能性もあります。
また、その他の治療としては、以下のようなものがあります。
H2受容体拮抗薬であるタガメット(10〜15mg/kg/日を分2〜3で投与)は、疣贅状表皮発育異常症で発癌抑制例があると報告されています(ただ、腎機能障害者には用いません)。2〜3ヶ月を有効性判断の目安とすしますが、半年以上投与することもあります。
一般的に、疣贅の除去術としては以下のようなものがあります。
ほかにも、5-FUやブレオマイシンなどの抗癌剤含有軟膏の外用や、DPCPやSADBEを用いた局所免疫療法などがあります。
上記のケースでは、疣贅除去を目的とした手術が行われたようです。恐らく、疣贅の周囲に真皮を傷つけないようにメスを入れ、剥ぎ取っていくようなことが行われたのではないか、と考えられます。9回にもおよぶ手術であり、非常に根気が要るものであると考えられます。
生活面だけでなく、外表面の問題でもあり精神的なサポートが必要であると考えられます。社会復帰に向け、リハビリなど頑張っていただきたいと思われます。
【関連記事】
仰天ニュース系の症例集
頭にツノが生えている102歳老人
一般的に、疣贅の除去術としては以下のようなものがあります。
・20%グルタルアルデヒド塗布法
まず1日1〜2回綿棒を用いて塗布し、褐色になるのを目安に1回適量を覚える。以後は、適量をなるべく頻回に塗布し、乾固した表面は削りとる。
・アルコール湿布法
大きさに合わせて切った酒精綿を疣贅に当て、油紙やサランラップで密封し、1日1回取り替える。
・液体窒素凍結療法
液体窒素を含ませた綿棒で凍結と融解を5〜6回繰り返す。3〜7日後再診し水疱形成があれば剪除し、変化がなければ凍結を追加する。顔面の疣贅では、色素沈着を残すので通常行わない。
・電気焼灼法やCO2エレーザー焼灼法
まず局所麻酔下に軽めに焼灼し、焼痂を除去した後、必要に応じて焼灼を軽く追加する。
ほかにも、5-FUやブレオマイシンなどの抗癌剤含有軟膏の外用や、DPCPやSADBEを用いた局所免疫療法などがあります。
上記のケースでは、疣贅除去を目的とした手術が行われたようです。恐らく、疣贅の周囲に真皮を傷つけないようにメスを入れ、剥ぎ取っていくようなことが行われたのではないか、と考えられます。9回にもおよぶ手術であり、非常に根気が要るものであると考えられます。
生活面だけでなく、外表面の問題でもあり精神的なサポートが必要であると考えられます。社会復帰に向け、リハビリなど頑張っていただきたいと思われます。
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頭にツノが生えている102歳老人