酔っぱらった状態で妊婦に硬膜外麻酔を行ったとして1人の医師が解雇され、医師免許を更新する権利も剥奪された。

マサチューセッツ州公衆衛生局によると、解雇処分となったのはロバート・ドラン(39)。昨年11月、カリタス聖エリザベス・メディカルセンターから診察の依頼を受けた際、バーボンのボトルを職場に持ち込み飲酒した状態で治療を行ったとされている。

ドランは麻酔専門医で、当時その補助を行った職員が飲酒していることに気がついた。報告を受けた患者の主治医が警備員に通報し、数日後にドランは解雇された。

ドランの医師免許は今年1月に失効しているが、18ヶ月間の禁酒に成功しなければ更新は許されない。また、飲酒して治療を行ったことをドランは認めているという。
(“飲酒治療”の医師、クビにされる)


硬膜外麻酔は局所麻酔法の一種であり、脊柱管内の硬膜外腔に局所麻酔薬を注入し、脊髄神経を分節的に麻酔する方法を指します。注入部位によって、頸部・胸部・腰部・仙骨硬膜外麻酔に分けられます。

脊髄くも膜下麻酔は麻酔薬をくも膜下腔に注入しますが、これに対し、硬膜外麻酔は麻酔薬を硬膜外腔に注入します。そのため、脊髄くも膜下麻酔に比べて合併症が少なく、持続時間も長くできるので、技術さえ修得していれば脊髄くも膜下麻酔より安全で便利な麻酔方法と言えると思われます。

硬膜外麻酔は、分節麻酔(必要な脊髄分節のみを麻酔する方法)ができるのも特徴です。麻酔の強さは麻酔薬の濃度に、麻酔される脊髄神経の範囲は麻酔薬の注入部位と注入量に依存します。

適応となるのは、脊髄くも膜下麻酔の適応症例や、脊髄くも膜下麻酔でできない頸部、胸部、上腹部の手術などでもちいられます。上記のように、無痛分娩、手術後鎮痛、ペインクリニックなどに広く用いられます。

具体的には、以下のような方法で行います。
まず、穿刺部位に1%キシロカインで浸潤麻酔を行います。硬膜下腔に向かって硬膜外穿刺針(Touhy針)を進めます。黄靱帯の抵抗を感じたとき、マンドリンを抜き、1〜2mlの空気もしくは生理食塩液を入れた5mlの注射器を接続するか、穿刺針の接続部に生理食塩液の水滴をつけます。

硬膜外腔は陰圧になっているため、注射器の場合は右手で軽く内筒を押しながら左手で穿刺針を進めると、急に抵抗がなくなります。ここの部分が硬膜外腔となります。水滴の場合は、硬膜外腔に針先が刺入されると、水滴が針内に吸引されます。

ここで麻酔薬を注入しますが、通常は硬膜外腔にカテーテルを留置した持続硬膜外麻酔法が行われます。硬膜外麻酔用のカテーテルを穿刺針を通して挿入し、カテーテルを通じて必要麻酔薬を注入し、カテーテルを固定します。

いくら慣れた手技であったとしても、やはり酔った場合は判断力や集中力の低下がみられ、万が一といったときに対応が難しいのではないか、と考えられます。しかもその場で飲酒を行っているなど、言語道断であると思われます。再発防止策を含め、しっかりと安全管理を考え直していただきたいと思われます。

【関連記事】
美容整形手術において相次ぐ麻酔事故

帝王切開後に亡くなった24歳女性