足もとがふらつく、よくつまずく、歩幅が狭くなった…こうした症状を「年をとれば仕方ない」と放置する人は多い。だが、2年前に「運動器不安定症」として保険適用され、「骨折などの危険度を高める病気」と考えられるようになった。日本整形外科学会では「適切な対応で寝たきりを防ぎ、健康寿命を延ばせる」と、症状を自覚したら早めの受診を呼びかけている。
「運動器」とは、骨や関節、筋肉、末梢神経など、体を支え、動かす役割をする身体の器官のこと。運動器不安定症は、これら運動器の機能が損なわれた状態のことで、閉じこもりや転倒・骨折の危険度が高まり、寝たきりなど要介護になりやすい病態のことをさす。
こうした症状は「年をとれば誰にでも起こる」として、従来は病気とみなされることはなかった。それが、急速な高齢化による要介護者の増加などを背景に、これらの症状を早期発見・予防することで転倒や骨折を防げば、寝たきりなどの要介護者を減らせると考えられるようになった。
日本整形外科学会の中村耕三理事長は「高齢化による要介護者の増加は、医療費高騰だけでなく患者のQOL(生活の質)の面からも大きな問題になっている。寝たきりなどの要介護状態に至る原因の第1位は脳卒中だが、次いで多いのが骨や関節など運動器の疾患。平均寿命だけでなく健康寿命を延ばすためにも、運動器を健康に保つことの大切さについて多くの人に知ってほしい」と話す。
運動器は、消化器や循環器など他の器官と異なり、自分の意思で動かせるのが特徴だ。半面、使わずにいると退化して脆弱化する。ただ、骨や筋肉の量が減っても自覚することはないため、知らないうちに症状が進んでいる人が少なくない。中でも骨粗鬆症は、転倒・骨折の危険度が高く、運動器不安定症をまねく最大要因と考えられている。
新潟大大学院医歯学総合研究科の遠藤直人教授は「骨粗鬆症から骨折に至る過程のどこかを断ち切れば、寝たきりになるのを防ぐことができる」と指摘する。骨粗鬆症は、骨密度と骨質が低下して骨折危険度が高まった状態で、日本では1000万人以上の患者がいるとみられている。ところが、治療を受けているのは一部にすぎず、骨折して初めて自分が骨粗鬆症と気付く人は少なくない。とくに
こうした人は、寝たきりにつながる大腿骨頸部骨折を起こす危険度が高いので、あてはまる人は骨粗鬆症かどうか調べてもらった方がよさそうだ。
骨粗鬆症を予防・治療し、運動器を健康に保つのに、歩行や水泳などの有酸素運動が推奨されている。軽い散歩などの歩行でも、足の骨に負荷をかけ、足の筋力を高めるとともに、姿勢を正し背筋を強化するので、骨折予防に効果がある。高齢者でも歩行に問題のない人ならば、1日7000〜8000歩を週5日程度行うといい。
外を歩くのが難しい虚弱高齢者でも、立つことのできる人ならば、片足立ち訓練を行うことで、転倒・骨折の予防になるという。右足と左足をそれぞれ1分で1回とし、1日3回、計6分間行うだけで、53分間歩くのと同じ運動負荷がかかるとされ、習慣的に続けると骨密度や筋力が高まるという。ただし、普通に歩ける人は、片足立ち訓練だけでは必要な運動負荷がかかるとはいえないので、歩ける人は歩くことが大切だ。
(「運動器不安定症」 早期発見、予防すれば…健康寿命は延びる)
運動器不安定症とは、「加齢によりバランス能力や歩く力が低下し、転倒する危険が高まった状態」を指します。著しい運動能力の低下に加え、膝や腰などの関節や骨に何らかの異常があると、この病と診断されます。高齢化に伴い、高齢者の転倒を予防するため2006年に提唱された新しい概念です。
診断としては、「下記の運動機能低下をきたす疾患の既往があるか、または罹患している者で、日常生活自立度あるいは運動機能が以下に示す機能評価基準1.又は2.に該当する者」とされています。
運動機能低下をきたす疾患としては、以下のようなものがあります。
機能評価基準としては、以下のようなものがあります。
こうした診断基準に当てはまる場合、運動器不安定症と診断されるわけです。
運動器不安定症の大きな原因は、運動不足にあります。上記にもありますが、加齢とともに運動機能は衰えると言っても、運動をすることでその低下の度合いを減らすことができると考えられます。
症状としては、上記のようにふらつきや、つまずきなどがみられます。日常におけるチェック項目としては、立ったまま靴下が履けないといったことや、階段を上るのに必ず手すりが必要になるといったことがあると、要注意と思われます。こうしたことは筋力の低下、そして背景にある運動不足が原因として起こってくると考えられます。こうしたふらつきや、つまづきなどが原因となり、転倒が起こる可能性が高まります。
高齢者においては、骨粗鬆症などが問題となり軽い転倒であっても骨折の可能性があります。特に、大腿骨頚部内側骨折が問題となります。大腿骨頚部内側骨折とは、以下のようなものを指します。
「運動器」とは、骨や関節、筋肉、末梢神経など、体を支え、動かす役割をする身体の器官のこと。運動器不安定症は、これら運動器の機能が損なわれた状態のことで、閉じこもりや転倒・骨折の危険度が高まり、寝たきりなど要介護になりやすい病態のことをさす。
こうした症状は「年をとれば誰にでも起こる」として、従来は病気とみなされることはなかった。それが、急速な高齢化による要介護者の増加などを背景に、これらの症状を早期発見・予防することで転倒や骨折を防げば、寝たきりなどの要介護者を減らせると考えられるようになった。
日本整形外科学会の中村耕三理事長は「高齢化による要介護者の増加は、医療費高騰だけでなく患者のQOL(生活の質)の面からも大きな問題になっている。寝たきりなどの要介護状態に至る原因の第1位は脳卒中だが、次いで多いのが骨や関節など運動器の疾患。平均寿命だけでなく健康寿命を延ばすためにも、運動器を健康に保つことの大切さについて多くの人に知ってほしい」と話す。
運動器は、消化器や循環器など他の器官と異なり、自分の意思で動かせるのが特徴だ。半面、使わずにいると退化して脆弱化する。ただ、骨や筋肉の量が減っても自覚することはないため、知らないうちに症状が進んでいる人が少なくない。中でも骨粗鬆症は、転倒・骨折の危険度が高く、運動器不安定症をまねく最大要因と考えられている。
新潟大大学院医歯学総合研究科の遠藤直人教授は「骨粗鬆症から骨折に至る過程のどこかを断ち切れば、寝たきりになるのを防ぐことができる」と指摘する。骨粗鬆症は、骨密度と骨質が低下して骨折危険度が高まった状態で、日本では1000万人以上の患者がいるとみられている。ところが、治療を受けているのは一部にすぎず、骨折して初めて自分が骨粗鬆症と気付く人は少なくない。とくに
・70歳以上
・身長が若いときより3cm以上縮んだ。
・親に骨折歴がある。
・喫煙・多量飲酒(1日に日本酒2合以上)
こうした人は、寝たきりにつながる大腿骨頸部骨折を起こす危険度が高いので、あてはまる人は骨粗鬆症かどうか調べてもらった方がよさそうだ。
骨粗鬆症を予防・治療し、運動器を健康に保つのに、歩行や水泳などの有酸素運動が推奨されている。軽い散歩などの歩行でも、足の骨に負荷をかけ、足の筋力を高めるとともに、姿勢を正し背筋を強化するので、骨折予防に効果がある。高齢者でも歩行に問題のない人ならば、1日7000〜8000歩を週5日程度行うといい。
外を歩くのが難しい虚弱高齢者でも、立つことのできる人ならば、片足立ち訓練を行うことで、転倒・骨折の予防になるという。右足と左足をそれぞれ1分で1回とし、1日3回、計6分間行うだけで、53分間歩くのと同じ運動負荷がかかるとされ、習慣的に続けると骨密度や筋力が高まるという。ただし、普通に歩ける人は、片足立ち訓練だけでは必要な運動負荷がかかるとはいえないので、歩ける人は歩くことが大切だ。
(「運動器不安定症」 早期発見、予防すれば…健康寿命は延びる)
運動器不安定症とは、「加齢によりバランス能力や歩く力が低下し、転倒する危険が高まった状態」を指します。著しい運動能力の低下に加え、膝や腰などの関節や骨に何らかの異常があると、この病と診断されます。高齢化に伴い、高齢者の転倒を予防するため2006年に提唱された新しい概念です。
診断としては、「下記の運動機能低下をきたす疾患の既往があるか、または罹患している者で、日常生活自立度あるいは運動機能が以下に示す機能評価基準1.又は2.に該当する者」とされています。
運動機能低下をきたす疾患としては、以下のようなものがあります。
・脊椎圧迫骨折および各種脊椎変形(亀背、高度腰椎後彎・側彎など)
・下肢骨折(大腿骨頚部骨折など)
・骨粗鬆症 ・変形性関節症(股関節、膝関節など)
・腰椎脊柱管狭窄症 ・脊髄障害(頚部脊髄症、脊髄損傷)
・神経・筋疾患
・関節リウマチ及び各種関節炎
・下肢切断 ・長期臥床後の運動器廃用
・高頻度転倒者
機能評価基準としては、以下のようなものがあります。
1.日常生活自立度:ランクJ またはA(要支援+要介護1、2)
2.運動機能1)または2)
1)開眼片足起立時間 15秒未満
2)3m Timed up and go test 11秒以上
[注]
ランクJ(生活自立):何らかの障害等を有するが、日常生活はほぼ自立しており独力で外出する。
ランクA(準ねたきり):屋内での生活はおおむね自立しているが、介助なしには外出しない。
こうした診断基準に当てはまる場合、運動器不安定症と診断されるわけです。
運動器不安定症の大きな原因は、運動不足にあります。上記にもありますが、加齢とともに運動機能は衰えると言っても、運動をすることでその低下の度合いを減らすことができると考えられます。
症状としては、上記のようにふらつきや、つまずきなどがみられます。日常におけるチェック項目としては、立ったまま靴下が履けないといったことや、階段を上るのに必ず手すりが必要になるといったことがあると、要注意と思われます。こうしたことは筋力の低下、そして背景にある運動不足が原因として起こってくると考えられます。こうしたふらつきや、つまづきなどが原因となり、転倒が起こる可能性が高まります。
高齢者においては、骨粗鬆症などが問題となり軽い転倒であっても骨折の可能性があります。特に、大腿骨頚部内側骨折が問題となります。大腿骨頚部内側骨折とは、以下のようなものを指します。
大腿の上部は、大きく分けて大腿骨頭・大腿骨頸部、転子部と呼ばれる部位で構成されています。大腿骨頭は、大腿骨大腿骨の上端にある球形のふくらみの部分を指し、股関節でジョイントになる部分です。大腿骨頸部は、この大腿骨頭と大転子の間の、細くなった部分を指します(ちょうど、頭と首のような関係性にあります)。
大腿骨頚部骨折は、内側骨折と外側骨折に分かれますが、内側骨折とは、関節包の内側という意味です。高齢者、特に女性の骨粗鬆症有病者に多く発生し、原因は転倒によるものがほとんどです。
大腿骨頚部内側骨折の問題点としては、骨癒合しなくて治りにくいことや(骨膜がなく、骨折線も斜めであるため剪断力が加わり偽関節を生じやすい)、骨頭への血流が途絶えて大腿骨頭壊死を生じることがあることがあります。
そのため、高齢者に多く、なおかつ運動機能(歩行など)を低下させてしまうため、高齢者の寝たきりの原因となってしまうため、注意が必要です。たとえ一時的な療養であっても、そこには廃用症候群が問題となります。
普段、我々は何気ない生活を送っているだけでも、骨や関節、靱帯、筋肉などには、絶えず重力、加重、運動などの負荷が掛かり、その機能を保っています。それが、麻痺やギプス固定により運動が行えなかったり、寝たきりで加重が掛からなかったりすると、骨には萎縮(ズデック骨萎縮といいます)や骨粗鬆化(廃用性骨粗鬆症)が、軟部には萎縮や拘縮が起こってきます。
歩行などに関連する下半身の筋肉は、ベッドなどで安静にしていると急激に低下します。その低下率は、1週間の安静で20%、2週間で40%、3週間では60%も低下するといわれています。結果、寝たきりとなってしまう可能性も高いわけです。
日頃の運動は、ふらつきによる転倒を防ぎ、そして結果的には骨折や寝たきりを予防することができると考えられます。意識的に運動することを心がけることが、重要であるというわけですね。
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本当は怖い口の開けづらさ−咀嚼筋腱・腱膜過形成症
大腿骨頚部骨折は、内側骨折と外側骨折に分かれますが、内側骨折とは、関節包の内側という意味です。高齢者、特に女性の骨粗鬆症有病者に多く発生し、原因は転倒によるものがほとんどです。
大腿骨頚部内側骨折の問題点としては、骨癒合しなくて治りにくいことや(骨膜がなく、骨折線も斜めであるため剪断力が加わり偽関節を生じやすい)、骨頭への血流が途絶えて大腿骨頭壊死を生じることがあることがあります。
そのため、高齢者に多く、なおかつ運動機能(歩行など)を低下させてしまうため、高齢者の寝たきりの原因となってしまうため、注意が必要です。たとえ一時的な療養であっても、そこには廃用症候群が問題となります。
普段、我々は何気ない生活を送っているだけでも、骨や関節、靱帯、筋肉などには、絶えず重力、加重、運動などの負荷が掛かり、その機能を保っています。それが、麻痺やギプス固定により運動が行えなかったり、寝たきりで加重が掛からなかったりすると、骨には萎縮(ズデック骨萎縮といいます)や骨粗鬆化(廃用性骨粗鬆症)が、軟部には萎縮や拘縮が起こってきます。
歩行などに関連する下半身の筋肉は、ベッドなどで安静にしていると急激に低下します。その低下率は、1週間の安静で20%、2週間で40%、3週間では60%も低下するといわれています。結果、寝たきりとなってしまう可能性も高いわけです。
日頃の運動は、ふらつきによる転倒を防ぎ、そして結果的には骨折や寝たきりを予防することができると考えられます。意識的に運動することを心がけることが、重要であるというわけですね。
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