「サリドマイド」について、血液がんの治療薬として販売再開を検討してきた厚生労働省の有識者検討会は18日、製造販売承認を申請している藤本製薬から出されていた安全管理策を了承した。
近く開かれる予定の厚労省の薬事・食品衛生審議会の分科会での答申をを経て、早ければ年内にも厚労相が承認する可能性が出てきた。
了承された安全管理策は藤本製薬が提案したもので、薬を使用する医師や患者などを登録制とすることや、国や過去の薬害被害者らも加わった第3者機関が順守状況をチェックすることが柱になっている。検討会では厚労省が、現行では救済制度が設けられていない、薬の副作用で死亡した胎児に対する補償を検討することを明らかにした。
サリドマイドは、日本では「イソミン」の商品名で大日本製薬(当時)が昭和33年に発売。睡眠薬や胃腸薬として、つわりに悩む妊婦などに使われた。その際、薬害によって手足の短い新生児が多数産まれる「サリドマイド事件」を起こした。昭和37年に販売が停止されるまで被害者は300人を超えた。
しかし、近年になって血液がんの一種である「多発性骨髄腫」への効果が認められ、米国など17カ国で承認されている。日本国内でも医師が個人輸入で使うケースが増え、血液がんの患者らが早期承認を求めていた。藤本製薬は平成18年に、他の治療法が見つからない場合の治療薬として承認を申請していた。
厚労省ではすでに8月27日に開かれた薬事・食品衛生審議会の医薬品部会で、安全管理策の実施や、患者への説明と同意などを条件に製造販売を認める結論をまとめている。今回の有識者検討会の承認によって、承認の条件がさらに整うことになる。
(多発性骨髄腫に効果 サリドマイド年内にも承認へ)
多発性骨髄腫(MM)とは、免疫グロブリン産生細胞である形質細胞(Bリンパ球の終末分化段階)の腫瘍性疾患で、主に骨髄において全身性に増殖します。単クローン性の形質細胞の増加により、血清中には単クローン性免疫グロブリン(M蛋白とも呼ばれる)が増加し、尿中にも免疫グロブリンの軽鎖(κあるいはλ鎖)が検出されます(発見者の名にちなんでベンス・ジョーンズ蛋白と呼ばれます)。
M蛋白の型により、IgG、IgA、IgD、IgE(おのおのκ、λ)型、L鎖のみを産生するBJP型、血中・尿中にM蛋白を認めない非産生型や非分泌型に分けられます(M蛋白が存在しない例もあることに注意する必要がある)。
年間死亡率は人口10万人に対して約1.5人であり、60歳以上の高齢者に多いといわれています。全造血器腫瘍の10%を占めています。
骨髄腫細胞は、主に体幹部に近い骨の骨髄に集簇性、もしくはびまん性に増殖します。これにより、造血、特に、赤血球産生が阻害されて貧血を生じます。また、正常の免疫グロブリン産生も抑制されて、免疫能低下をきたしてしまいます。さらに、骨髄腫細胞が産生する破骨細胞活性化因子によって骨融解が起こり、病的骨折や高Ca血症をきたします。髄外腫瘤を形成することもあります。
骨髄腫細胞は同一の免疫グロブリンを産生するため、血中に大量の単クローン性の免疫グロブリン(M蛋白)を認めます。これにより、過粘稠度症候群をきたすこともあります。過粘稠度症候群とは、血液の粘度が高まって引き起こされる血液循環障害による臨床症状であり、全身倦怠感、食欲不振、頭痛、眩暈などの症状がみられます。さらにひどくなると、心不全、痙攣、鼻出血、粘膜出血、血尿、吐血、下血、視力障害などを呈することになります。眼科的には網膜静脈のソーセージ様拡張と蛇行などが有名です。
過剰に産生された免疫グロブリンのL鎖は2量体をつくることもあり、Bence Jones蛋白(BJP)となり、分子量が小さいため、糸球体基底膜を通過して尿細管を障害し、腎障害をきたすことになります。L鎖の組織沈着によりアミロイドーシスを合併することもあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
近く開かれる予定の厚労省の薬事・食品衛生審議会の分科会での答申をを経て、早ければ年内にも厚労相が承認する可能性が出てきた。
了承された安全管理策は藤本製薬が提案したもので、薬を使用する医師や患者などを登録制とすることや、国や過去の薬害被害者らも加わった第3者機関が順守状況をチェックすることが柱になっている。検討会では厚労省が、現行では救済制度が設けられていない、薬の副作用で死亡した胎児に対する補償を検討することを明らかにした。
サリドマイドは、日本では「イソミン」の商品名で大日本製薬(当時)が昭和33年に発売。睡眠薬や胃腸薬として、つわりに悩む妊婦などに使われた。その際、薬害によって手足の短い新生児が多数産まれる「サリドマイド事件」を起こした。昭和37年に販売が停止されるまで被害者は300人を超えた。
しかし、近年になって血液がんの一種である「多発性骨髄腫」への効果が認められ、米国など17カ国で承認されている。日本国内でも医師が個人輸入で使うケースが増え、血液がんの患者らが早期承認を求めていた。藤本製薬は平成18年に、他の治療法が見つからない場合の治療薬として承認を申請していた。
厚労省ではすでに8月27日に開かれた薬事・食品衛生審議会の医薬品部会で、安全管理策の実施や、患者への説明と同意などを条件に製造販売を認める結論をまとめている。今回の有識者検討会の承認によって、承認の条件がさらに整うことになる。
(多発性骨髄腫に効果 サリドマイド年内にも承認へ)
多発性骨髄腫(MM)とは、免疫グロブリン産生細胞である形質細胞(Bリンパ球の終末分化段階)の腫瘍性疾患で、主に骨髄において全身性に増殖します。単クローン性の形質細胞の増加により、血清中には単クローン性免疫グロブリン(M蛋白とも呼ばれる)が増加し、尿中にも免疫グロブリンの軽鎖(κあるいはλ鎖)が検出されます(発見者の名にちなんでベンス・ジョーンズ蛋白と呼ばれます)。
M蛋白の型により、IgG、IgA、IgD、IgE(おのおのκ、λ)型、L鎖のみを産生するBJP型、血中・尿中にM蛋白を認めない非産生型や非分泌型に分けられます(M蛋白が存在しない例もあることに注意する必要がある)。
年間死亡率は人口10万人に対して約1.5人であり、60歳以上の高齢者に多いといわれています。全造血器腫瘍の10%を占めています。
骨髄腫細胞は、主に体幹部に近い骨の骨髄に集簇性、もしくはびまん性に増殖します。これにより、造血、特に、赤血球産生が阻害されて貧血を生じます。また、正常の免疫グロブリン産生も抑制されて、免疫能低下をきたしてしまいます。さらに、骨髄腫細胞が産生する破骨細胞活性化因子によって骨融解が起こり、病的骨折や高Ca血症をきたします。髄外腫瘤を形成することもあります。
骨髄腫細胞は同一の免疫グロブリンを産生するため、血中に大量の単クローン性の免疫グロブリン(M蛋白)を認めます。これにより、過粘稠度症候群をきたすこともあります。過粘稠度症候群とは、血液の粘度が高まって引き起こされる血液循環障害による臨床症状であり、全身倦怠感、食欲不振、頭痛、眩暈などの症状がみられます。さらにひどくなると、心不全、痙攣、鼻出血、粘膜出血、血尿、吐血、下血、視力障害などを呈することになります。眼科的には網膜静脈のソーセージ様拡張と蛇行などが有名です。
過剰に産生された免疫グロブリンのL鎖は2量体をつくることもあり、Bence Jones蛋白(BJP)となり、分子量が小さいため、糸球体基底膜を通過して尿細管を障害し、腎障害をきたすことになります。L鎖の組織沈着によりアミロイドーシスを合併することもあります。
治療としては、以下のようなものがあります。
まず、IMWG(国際骨髄腫作業グループ)による診断基準で、臓器障害を有する症候性骨髄腫
を治療対象とします。MGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)や無症候性骨髄腫は経過観察とし、症状がみられた時点で治療を開始することになります。
初期治療として、65歳未満の患者であれば自家造血幹細胞移植を選択することになります(自家造血幹細胞移植は寛解率、生存率で化学療法より優れているといわれている)。
自家末梢血幹細胞移植は、初期治療としてVAD療法やデキサメタゾン大量療法を行い、次いで末梢血幹細胞を採取し、大量化学療法後に移植します。1回の移植で完全寛解が得られない場合は、3〜4か月以内に2回目の移植を行うことになります(タンデム移植)。
全身状態、合併症などにより移植条件を満たさない症例や65歳以上の高齢者では化学療法を行うことになります。MP療法(melphalan + prednisolone)は、高齢者にも安全で外来で実施可能であるといわれています。アルケラン錠(2mg)を8mg/m2、朝空腹時に(食後に服用すると吸収が低下して効果が減弱するおそれがある)4日間、プレドニン錠(5mg)を40〜60mg/m2で分3、4日間で投与します。これを4〜6週ごとに繰り返します。ほかにも、ROAD療法やVAD療法があります。
放射線治療は、孤立性形質細胞腫や溶骨性病変による骨痛に対して有効であるといわれています。骨病変・骨痛に対して、ビスホスホネート製剤(ゾメタ)が用いられることもあります。
再発・難治性骨髄腫で、サリドマイドが用いられることもあります。「サリドマイド適正使用ガイドライン」に従い、デキサメタゾンとの併用が有効であるとの報告があります。
薬害を引き起こしたという過去もありますが、治療効果をもつということも明らかになっています。多発性骨髄腫の患者さんのためにも、早期の製造・販売が望まれます。
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高脂血症治療薬「スタチン」開発者・遠藤章氏にラスカー賞
・血清Ca>11mg/dLまたは基準値より1mg/dL以上の上昇
・クレアチニン>2mg/dL
・Hb<10g/dLあるいは基準値より2g/dL以上の低下
・骨融解あるいは圧迫骨折を伴う骨粗鬆症など
を治療対象とします。MGUS(monoclonal gammopathy of undetermined significance)や無症候性骨髄腫は経過観察とし、症状がみられた時点で治療を開始することになります。
初期治療として、65歳未満の患者であれば自家造血幹細胞移植を選択することになります(自家造血幹細胞移植は寛解率、生存率で化学療法より優れているといわれている)。
自家末梢血幹細胞移植は、初期治療としてVAD療法やデキサメタゾン大量療法を行い、次いで末梢血幹細胞を採取し、大量化学療法後に移植します。1回の移植で完全寛解が得られない場合は、3〜4か月以内に2回目の移植を行うことになります(タンデム移植)。
全身状態、合併症などにより移植条件を満たさない症例や65歳以上の高齢者では化学療法を行うことになります。MP療法(melphalan + prednisolone)は、高齢者にも安全で外来で実施可能であるといわれています。アルケラン錠(2mg)を8mg/m2、朝空腹時に(食後に服用すると吸収が低下して効果が減弱するおそれがある)4日間、プレドニン錠(5mg)を40〜60mg/m2で分3、4日間で投与します。これを4〜6週ごとに繰り返します。ほかにも、ROAD療法やVAD療法があります。
放射線治療は、孤立性形質細胞腫や溶骨性病変による骨痛に対して有効であるといわれています。骨病変・骨痛に対して、ビスホスホネート製剤(ゾメタ)が用いられることもあります。
再発・難治性骨髄腫で、サリドマイドが用いられることもあります。「サリドマイド適正使用ガイドライン」に従い、デキサメタゾンとの併用が有効であるとの報告があります。
薬害を引き起こしたという過去もありますが、治療効果をもつということも明らかになっています。多発性骨髄腫の患者さんのためにも、早期の製造・販売が望まれます。
【関連記事】
降圧薬や抗生物質などと、注意すべき食品の飲み合わせ
高脂血症治療薬「スタチン」開発者・遠藤章氏にラスカー賞