過去に間質性肺炎にかかったC型肝炎患者がインターフェロン製剤「ペガシス」の投与を受けると、副作用の間質性肺炎を起こす例が多いとして、厚生労働省が、こうした患者には投与しない「禁忌」とするよう製薬会社に添付文書改訂を指示したことが26日、わかった。

「ペグイントロン」などほかのインターフェロン製剤7品目についても、間質性肺炎の経験がある患者に対しては「慎重投与」とし、使う際に定期的に胸部エックス線検査をするなど、十分に注意するよう求めた。

推定約4万3000人が使用したペガシスでは、計124人の間質性肺炎が報告されたが、このうち同肺炎の病歴があったのは11人、うち1人が死亡した。
(C型肝炎患者、投与で肺炎再発の恐れ)


いわゆる一般的な肺炎が肺胞、肺胞道などの気腔内への滲出性病変を主徴とするのに対し、間質性肺炎は、肺胞壁や細気管支、細動静脈周囲など間質の病変を主座とする疾患です。

肺において、肺胞腔、気管支腺上皮を実質と呼ぶのに対して、間質とは血管内皮細胞と基底膜に囲まれた部分を指します(狭義では肺胞隔壁、広義では小葉間間質、胸膜近傍などを含む)。簡単に言ってしまえば、肺胞と肺胞の間のスペースのことです。ここには線維芽細胞や免疫系細胞などの間葉系細胞が存在し、結合組織に富んでいます。

線維化は一般に、傷害に対しての治癒(組織修復)過程であると考えられます。肺における傷害とは、多種の原因による上皮細胞の脱落や、血管内皮細胞の傷害による基底膜の損傷であると考えられます。

実際には、機序が明らかでない持続的な傷害が起こって慢性炎症を引き起こし、TGF-β1を中心とする線維化環境下に、正常肺胞構造の不可逆的な再構築がなされます。間質性肺炎においては、こうしたことが起こって、ガス交換機能を大きく損なうことになって発症すると考えられます。

職業性や薬剤など原因の明らかなものや膠原病随伴性に起こる場合と、原因が特定できない場合があります。原因が明らかでない間質性肺炎の総称を、特発性間質性肺炎(idiopathic interstitial pneumonias; IIPs)といいます。

こうした特発性間質性肺炎は、2002年国際的多分野合意による分類では、以下の7疾患に分類されます。
1)特発性肺線維症(idiopathic pulmonary fibrosis:IPF)
2)非特異性間質性肺炎(nonspecific interstitial pneumonia:NSIP)
3)急性間質性肺炎(acute interstitial pneumonia:AIP)
4)特発性器質化肺炎(cryptogenic organizing pneumonia:COP=idiopathic bronchiolitis obliterans organizing pneumonia:特発性BOOPともいう)
5)呼吸細気管支炎関連性間質性肺疾患(respiratory bronchiolitis-associated interstitial lung disease:RB-ILD)
6)剥離性間質性肺炎(desquamative interstitial pneumonia:DIP)
7)リンパ球性間質性肺炎(lymphoid interstitial pneumonia:LIP)


間質性肺炎の症状としては、上記のようにガス交換機能を大きく損なうことになり、臨床的には呼吸困難を自覚することになります。特発性間質性肺炎のように徐々に進行する場合では、自覚症状に先行して胸部X線写真で線維性変化を指摘されていることが多いです。

こうした状態が長く経過した後、乾性せきを自覚したり、周囲が咳に気づくようになります(約50%)。さらに、体動・運動負荷時のせきや、坂道での息切れを自覚するようになります。

呼吸は浅く、頻呼吸気味となります。慢性経過例の冬期感染併発では病態の悪化と発熱、痰を伴うことになります。また、ばち状指を高頻度(程度の差はあるが約30%以上)にみます。この変化は膠原病肺では少なく、喫煙者の特発性間質性肺炎や肺癌合併患者で多いです。低酸素血症の進行に伴い、チアノーゼもみられます。

こうした臨床症状としての息切れ・乾性咳嗽・聴診所見(肺野聴診でパリパリと硬いクラックルcrackleが聴取されます。血圧計マンシェットのマジックバンドをはがす音に近いので、その商品名からVelcroラ音と呼ばれます)、呼吸機能としての拘束性換気障害・拡散障害・低酸素血症などで診断が行われます。

血液検査に特異的な所見はありませんが、間質性肺炎マーカー(血清KL-6、SP-D、SP-A)が上昇します。呼吸機能検査では、拘束性換気障害と拡散能障害を呈します。

画像診断では、両側下肺野・背側・辺縁優位の分布を示す網状・輪状影が重要で、いわゆる蜂巣肺を呈します。病変部位と正常肺とが斑状に分布する特徴をもちます(高分解能CTで明らかな蜂巣肺を認める場合にはIPFの可能性が高い)。診断にはまず原因既知の疾患である膠原病肺、過敏性肺炎、サルコイドーシス、じん肺、薬剤性肺炎などを除外する必要があります。

治療としては、以下のようなものがあります。
現在の所、有効な治療法は確立されていません。炎症の抑制を目的として使われるステロイドや免疫抑制剤が予後や生活の質(QOL)を改善した報告はないといわれています。

症状に進行が認められない安定期の治療としては、鎮咳・去痰薬、抗菌薬を対症的に使用するほか、抗酸化作用をもつN-アセチルシステインの吸入や、線維芽細胞の増殖抑制を目的としたコルヒチンの投与も試みられています。

進行期の治療としては、炎症の度合(活動性)と進行の速さに応じて、10〜60mg/日を初期量としてプレドニゾロンを投与します。病状の改善に応じて漸減し(普通2週間に 2.5〜5mg 減量)、10mg/日程度で維持します。ステロイドが無効の症例には免疫抑制剤の併用を試みます。

また、呼吸不全への対応として適応がある場合、在宅酸素療法(HOT)を行います。さらに、この疾患は肺移植適応疾患であり、肺移植治療も考えられます。

どういった機序で間質性肺炎が再発するのかは、その詳細は不明ですが、副作用が報告されている以上、使用するのは難しいと思われます。C型肝炎の治療を行う上で重要な役割を果たす薬剤であるということもあり、残念なニュースです。

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