フジテレビ系「とくダネ!」の芸能デスク兼リポーター、前田忠明さん(67)が25日、心臓の手術を受けるため、都内の病院に入院した。

この日の生放送で「大動脈瘤がちょっと膨らんできまして、切除します。それを人工血管に変えると同時に、心臓の血管が詰まりやすいということで、バイパスを作る手術をすることになりました」と自ら説明。3週間ほど番組を降板することも発表した。

前田さんは平成2年に突発性心疾患で倒れ、手術している。ただ、フジテレビによると、今回の手術は急なものではなく、当初から予定されていたという。
(とくダネ!の前田忠明さん心臓手術で入院)


大動脈瘤とは、何らかの原因により大動脈壁が脆弱化し、限局的に動脈内腔が拡張した状態を指します。大動脈瘤の部位により、上行大動脈瘤、弓部・胸部下行大動脈瘤、腎上部腹部大動脈瘤、腎動脈分岐部以下の腹部大動脈瘤(腎下部腹部大動脈瘤)、胸腹部大動脈瘤に分類されます。

また、動脈瘤壁の構造により
真性動脈瘤:動脈瘤壁が内膜、外膜、残存中膜など動脈壁の構造を有するもの
仮性動脈瘤:動脈瘤壁が固有の壁構造を欠き,新たに形成された結合組織または動脈壁の外膜のみを有するもの
解離性大動脈瘤:中膜内に血液が流入し、大動脈壁が内層と外層に剥離された状態

に分類されます。

原因として、最も多いのは動脈硬化性によるものです。これは、粥腫の形成・崩壊、潰瘍形成、出血の繰り返しから中膜弾性線維の破壊をきたして、壁厚像を脆弱化させる過程が推定されています。

このほかに、遺伝的素因により中膜弾性線維の破壊が起こりやすいもの(Marfan症候群で起こる嚢胞性中膜壊死)、炎症による中膜弾性線維断裂や平滑筋の破壊が起こるもの(Behcet病、大動脈炎症候群、梅毒など)、あるいは外傷性のものが挙げられます。

症状としては、発生する部位によっても異なります。
胸部大動脈瘤の場合、左反回神経麻痺による嗄声、気管・気管支や横隔膜神経の刺激による咳漱、交感神経圧迫によるHorner症候群、食道圧迫による嚥下困難、上大静脈圧迫による頸部静脈の腫脹などが挙げられます。これらは、破裂の危険が大きい症状です。また、動脈瘤による胸骨・椎骨の圧迫による前胸部痛、または背痛が起こることもあります。

腹部大動脈瘤の場合は、後腹膜腔に位置するために周囲組織への影響は少なく、無症状で経過することも多いです(腹部の拍動性腫瘤を自覚するのみのことが多い)。したがって、腹痛や腰痛の出現は破裂が近いことを示すサインであるということを認識する必要があります。

治療としては、以下のようなものがあります。
血圧を十分にコントロールしながら注意深く大動脈瘤の大きさを監視し、ある一定以上の大きさになったら手術を選択するのが基本となります。

腹部大動脈瘤、特に最も頻度の多い腎下部の場合、手術成績はきわめて良好であるため、一般に最大径が5 cmを超えたら破裂のリスクが高くなると考えられるので、手術適応となります。胸部大動脈瘤の場合には一般に6 cmが1つの目安となっていますが、径が小さい場合でも、拡大傾向のあるもの、嚢状、非特異的疼痛があるもの、Marfan症候群、炎症性ではそれ以下でも破裂する可能性が高いことから注意が必要となります。

手術では、限局性の上行大動脈瘤の場合には完全体外循環下に人工血管置換となりますが、弓部を含む大動脈瘤の場合には脳保護のための選択的脳灌流法、超低体温下循環停止を用いた完全(または準完全)弓部大動脈人工血管置換という侵襲の大きな手術となります。

現在では、腹部大動脈瘤などに対する治療として、「ステントグラフト手術」が行われることもあります。この方法は、ステントグラフトと呼ばれる人工血管を、腹部を切開せずに体内に入れる血管内手術です。そのため、局所麻酔下で手術を行うことができ、なおかつ低侵襲で行うことが出来る(血管を露出するための傷だけで行える)という利点があります。

方法としては、まず、足の付け根を通る2ヶ所の動脈から、道しるべとなるワイヤー(ガイドワイヤー)を入れます。次に、そのワイヤーを利用して、ステントグラフトが入ったチューブを血管に差し入れます。そして動脈瘤に到達したところでチューブだけ外すと、形状を記憶したステントグラフトが広がるという仕組みです。

ステントグラフトは細かく折りたたまれ、鉛筆ほどの太さのカテーテルに装填されています(折りたたみ傘のように)。このカテーテルを経皮的あるいは外科的に露出した大腿動脈からレントゲン透視下に挿入し、所定の位置でステントを広げることにより人工血管を大動脈に固定します。

利点としては、手術のほとんどは局所麻酔か硬膜外麻酔で行えるため、侵襲が小さいので術後3日以内に大半の患者が退院できます。ただ、欠点としては2次的処置の必要性が外科手術より高かったり、高い技術(一度ステントを広げると、再処置が難しいなど)を要する点が挙げられます。また、現在は保険適応は開腹手術のしづらいハイリスク症例(高齢、心肺合併症、開腹手術の既往、肥満など)に限られています。

無事手術が成功し、また元気な姿をテレビで拝見できることを期待しております。

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